31 / 31
31.勇者様、野宿!
しおりを挟む
「ええ!?」
有り得ない単語に俺は目を丸くする。そ、そんな。魔物なんて来たらどうすれば……。ていうか商品の本達が滅茶苦茶にされる!!まだ読んでない本も沢山あるし家にあるお金も、沢山のジェイミー様のグッズも!!
「やばい!今すぐ取りに行かないと!」
「はあ!?お前はどうせ何も出来ないんだからさっさと逃げな!ここは僕が相手にする」
「クレイが!?駄目だよ、クレイだって魔物を退治なんて出来ないでしょ。大丈夫、俺は一回本で撃退したことあるから」
「そんな馬鹿げたこと誰がまたやらせると思ってんの!?」
クレイと口論しながらも俺達は一緒に家に向かって走る。そして衝撃の光景に唖然と口を開いたまま固まる。
魔物が二匹も家を襲っていたのだ。炎を吐き出しながら荒らされる様子を見て呆然とする。すると、魔物がこちらに気付き牙を向いて迫ってきた。
あ。や、やばい。逃げないと。でもなんでだろう。前は直ぐに戦う気になれたけど、なんか体が固まって動かない。何とか動いた足で後退ると、急に目の前の魔物に黒い何かが飛び散った。その液体が付着した直後、鱗が剥がれるように皮膚が剥がれていった。
魔物はその場に倒れて苦しみもがく。一体何が起きているのか分からない俺を余所に、クレイは二匹の魔物に向かって手を翳した。
「ミル、離れて」
言われた通りに後ろの方へ離れると、クレイの手から黒い液体が溢れる。地面に徐々に広がり魔物の足から顔まで液が伝い、瞬く間に体が見えなくなる。
「切壊」
呟いた瞬間、魔物が大きな音を立て崩れていく。そこに騎士が騒ぎを聞きつけたのか救助に現れた。魔物の残骸に皆ざわめいているが、俺は真っ先にクレイに駆け寄った。
「く、クレイ!」
振り向いたクレイに俺は飛び付く。クレイはよろけるがしっかりと俺を抱きとめた。
「ありがとう!!すっっごく格好良かった!」
初めてまともにクレイの魔法を見たが、あっという間に魔物を倒せて驚いた。ジェイミー様のような倒し方も良いが、やはり魔法はロマン。魔物が一瞬で粉々になるのは爽快感があった。あんなに直ぐに退治できるなんて格好良い。
クレイは頬を赤く染めて俺を見詰めていて口を開いた。だけども、周りの騎士の声に掻き消された。
「クレイ様でしたか」
「流石、ルッツ様の弟子だ」
「この度は魔物駆除に協力頂きありがとうございます」
おお、そういえばクレイって結構凄い人なんだっけ。ここ最近ずっと一緒にいたから忘れていた。
クレイが大勢に囲まれている間、背後から背中を優しく触られる。ビクッと肩を上げて振り向くとオリヴァーさんが目に涙を溜めて立っていた。
「ど、どうしよぉ、ミルくん……」
「お、オリヴァーさん!何かあったんですか」
「ううううちが壊れて、修理は国が負担してくれるけど、魔法使っても一週間くらいかかっちゃうみたいで、その間どこかで住まないといけないんだってぇぇ……」
「そうなんですね。でも一週間で直るなら良かった」
「でも、でもぉぉ、他の家も被害受けたみたいで宿がどこも埋まってるんだよぉ。最近は魔物の被害も多くて遠くからも冒険者が来てるみたいでさぁ……。僕たち、このままじゃ野宿だよぉ!!」
の、野宿!!一週間も生きれるのか。でもオリヴァーさんの洗浄魔法があればなんとか清潔感はあるかもしれない。ただ場所はどうしよう……。
思わず二人同時で溜息を零すと、クレイが話しかけてきた。
「住む場所ないわけ?」
「あ、うん。クレイ、あの騎士さん達はもう大丈夫?」
「あんな魔物を相手にするのが本業のくせに何も出来ない脳筋達と話す時間なんて勿体ないから。それで、住む場所ないならうち来れば」
相変わらずクレイ節が効いてるぜ、と考えている時に思わぬ提案が出てきた。
「ババアもまた来いって言ってたし、お前とそこのおっさん位なら入れる部屋もあるし」
「おおおおっさん……で、でも良いの?僕何も返せないけどぉ……」
「別に最初から見返りなんて期待してないし、僕は世話するつもりないから。まああのゴリラ女二人なら、今回の騒ぎを聞いたら喜んで部屋に招き入れるんじゃない?」
クレイの言葉を聞きながらオリヴァーさんと顔を見合わせる。そして、大きく頷いた。
「お願いします!!」
有り得ない単語に俺は目を丸くする。そ、そんな。魔物なんて来たらどうすれば……。ていうか商品の本達が滅茶苦茶にされる!!まだ読んでない本も沢山あるし家にあるお金も、沢山のジェイミー様のグッズも!!
「やばい!今すぐ取りに行かないと!」
「はあ!?お前はどうせ何も出来ないんだからさっさと逃げな!ここは僕が相手にする」
「クレイが!?駄目だよ、クレイだって魔物を退治なんて出来ないでしょ。大丈夫、俺は一回本で撃退したことあるから」
「そんな馬鹿げたこと誰がまたやらせると思ってんの!?」
クレイと口論しながらも俺達は一緒に家に向かって走る。そして衝撃の光景に唖然と口を開いたまま固まる。
魔物が二匹も家を襲っていたのだ。炎を吐き出しながら荒らされる様子を見て呆然とする。すると、魔物がこちらに気付き牙を向いて迫ってきた。
あ。や、やばい。逃げないと。でもなんでだろう。前は直ぐに戦う気になれたけど、なんか体が固まって動かない。何とか動いた足で後退ると、急に目の前の魔物に黒い何かが飛び散った。その液体が付着した直後、鱗が剥がれるように皮膚が剥がれていった。
魔物はその場に倒れて苦しみもがく。一体何が起きているのか分からない俺を余所に、クレイは二匹の魔物に向かって手を翳した。
「ミル、離れて」
言われた通りに後ろの方へ離れると、クレイの手から黒い液体が溢れる。地面に徐々に広がり魔物の足から顔まで液が伝い、瞬く間に体が見えなくなる。
「切壊」
呟いた瞬間、魔物が大きな音を立て崩れていく。そこに騎士が騒ぎを聞きつけたのか救助に現れた。魔物の残骸に皆ざわめいているが、俺は真っ先にクレイに駆け寄った。
「く、クレイ!」
振り向いたクレイに俺は飛び付く。クレイはよろけるがしっかりと俺を抱きとめた。
「ありがとう!!すっっごく格好良かった!」
初めてまともにクレイの魔法を見たが、あっという間に魔物を倒せて驚いた。ジェイミー様のような倒し方も良いが、やはり魔法はロマン。魔物が一瞬で粉々になるのは爽快感があった。あんなに直ぐに退治できるなんて格好良い。
クレイは頬を赤く染めて俺を見詰めていて口を開いた。だけども、周りの騎士の声に掻き消された。
「クレイ様でしたか」
「流石、ルッツ様の弟子だ」
「この度は魔物駆除に協力頂きありがとうございます」
おお、そういえばクレイって結構凄い人なんだっけ。ここ最近ずっと一緒にいたから忘れていた。
クレイが大勢に囲まれている間、背後から背中を優しく触られる。ビクッと肩を上げて振り向くとオリヴァーさんが目に涙を溜めて立っていた。
「ど、どうしよぉ、ミルくん……」
「お、オリヴァーさん!何かあったんですか」
「ううううちが壊れて、修理は国が負担してくれるけど、魔法使っても一週間くらいかかっちゃうみたいで、その間どこかで住まないといけないんだってぇぇ……」
「そうなんですね。でも一週間で直るなら良かった」
「でも、でもぉぉ、他の家も被害受けたみたいで宿がどこも埋まってるんだよぉ。最近は魔物の被害も多くて遠くからも冒険者が来てるみたいでさぁ……。僕たち、このままじゃ野宿だよぉ!!」
の、野宿!!一週間も生きれるのか。でもオリヴァーさんの洗浄魔法があればなんとか清潔感はあるかもしれない。ただ場所はどうしよう……。
思わず二人同時で溜息を零すと、クレイが話しかけてきた。
「住む場所ないわけ?」
「あ、うん。クレイ、あの騎士さん達はもう大丈夫?」
「あんな魔物を相手にするのが本業のくせに何も出来ない脳筋達と話す時間なんて勿体ないから。それで、住む場所ないならうち来れば」
相変わらずクレイ節が効いてるぜ、と考えている時に思わぬ提案が出てきた。
「ババアもまた来いって言ってたし、お前とそこのおっさん位なら入れる部屋もあるし」
「おおおおっさん……で、でも良いの?僕何も返せないけどぉ……」
「別に最初から見返りなんて期待してないし、僕は世話するつもりないから。まああのゴリラ女二人なら、今回の騒ぎを聞いたら喜んで部屋に招き入れるんじゃない?」
クレイの言葉を聞きながらオリヴァーさんと顔を見合わせる。そして、大きく頷いた。
「お願いします!!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(17件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
更新ありがとうござきます。
続きが気になっていたのでうれしいです。
こちらこそ読んで頂きありがとうございます😆
更新が遅くて申し訳ないです。続きを少しでも早く書けるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします!
久しぶりですね!
更新される時を楽しみにしてました!
私は結構最近色々あって
疲れましたが主さんが久しぶりに
更新していて嬉しくて疲れが吹っ飛び
ましたよ!これからも気長に更新される時を待ってます!
お久しぶりです!そして返信も更新も遅くなり申し訳ないです💦
私生活お疲れ様です!久しぶりにマルル様からご感想を頂けて私も疲れが吹っ飛びました!本当にありがとうございます🙇♀️
これからも更新かなりゆっくりかと思いますが気長に待っていただけたら嬉しいです☺️
サンバを踊る姿なんて想像つかないなぁ、と思ってましたが、まさかのマツケンサンバで爆笑してます笑
いつか踊ってみて欲しいです😂