勇者様、推しです!〜溺愛されるのは解釈違いです〜

ぽぽ

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5.勇者様、尊い!

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 え、え、え、本物?昨日倒れたせいで頭が壊れたのか?それとも魔物に幻覚が見える呪いをかけられているとか?
 彼は周辺を見渡し俺に目を留めると脇目も振らずに此方へ近づいた。

「昨日、これを落としたのは君か?」

 そして渡されたのは俺が凶器として使った本。こんなただの平凡な俺の為に足を運んで下さったなんて、やはり神か?この本は今日から家宝だ。

 心の中で拝みながら震えた声でお礼を言った。彼は頷き、そして立ち止まったまま。何かあったのか聞きたいが緊張と興奮で声が出せず互いに黙ったまま立ち尽くしていると彼の方から低い美声で話しかけてきた。

「昨日は助かった。感謝する」
「え、いえ、俺は何もしてません!俺なんて勝手に来て倒れてしまったし……むむむ寧ろジェイミー様こそ街を助けて下さりありがとうございます!」

 頭を地に打ち付ける勢いで下げる。しかし、ジェイミー様からの返事は返ってこない。
 元々話すのが苦手だと新聞にも載っていた。クールで格好良いと思っていたが実際に会話をするとなるとどうすれば良いか分からない。俺から話しても良いのだろうか?機嫌を伺うように見上げると目が合う。ジェイミー様の貴重なお時間をこれ以上無駄にさせないように俺から伝えよう、と口を開いたがそれを遮るように彼が声を出した。

「もし良ければだが、今度食事へ行かないか」
「うぇ」
 
 彼からの予期せぬ誘いに腑抜けた声が漏れた。 

「空いている日はあるか」
「そんな責任を持たれなくても大丈夫ですよ!?俺ピンピンしてますしジェイミー様はお気にせず!」
「私が君と行きたいんだ」

 ジェイミー様の美しい唇から有り得ない言葉が出てきた。
 え、夢?夢を見てるの?餌を前にした鯉の如くパクパクと口を開閉させる俺を見て彼はきょとんと首を傾げた。可愛い。写真を撮らせて欲しい。

 どどどうしよう。凄く魅惑的な誘いだがそんな事をしたらバチが当たりそうだ。神様と一緒に食べるだなんて。ていうか神って何を食べるの?昨日はあの魔物を倒す為に仕方なく俺のような庶民の行く店に居たのだと思うが普段は何処へ行くのだろうか。
 高級店へ行く金が俺には無いことに気付き、恥ずかしさで顔が熱くなった。それがジェイミー様に知られないように俯いた。

「あ、あの俺、余り持ち合わせが無くて……」
「私が払う。そのつもりで誘った」
「そんな!お金は大切にしないと駄目ですよ!ジェイミー様が働いて稼いだものですから!」
「私が稼いだ物を何に使うかは私の自由だろう」

 そうですね!ジェイミー様の仰る通りです!
 そしてジェイミー信者の俺は力強く頷き、それを見て彼は「また来る」とだけ残して店を出た。
 それを見たオリヴァーさんが直ぐに俺に駆けつけ大声を出した。
 
「ミルくん!!あれ、騎士のジェイミー様だよね!?何でミルくんと一緒に、というかどうしてこんな寂れた店に」
「俺も何が起こったかさっぱり……ハッ、分かりました。ジェイミー様はきっと俺みたいな庶民を助ける事が体に染み付いて、だからあんな事を言っていたんだ。なんてお労しい」
「多分違うよぉ、ミルくん」

 オリヴァーさんが眉を下げてツッこむ。
 だがこの俺の仮説は正しいと思う。ジェイミー様は本当にお優しく心が美しいから人を助ける事が義務になってしまっているんだ。ジェイミー様、なんて尊い人なんだ……というか人なのか?やっぱり神の使徒では?


 そして俺はジェイミー様のことを考えながら仕事を続けた。勿論頭が全く働かず結局今日休んでいたとしても変わらない仕事量であった。オリヴァーさんも困った顔をしていた為、やはり部屋で大人しくしていることにした。

 布団の中に入りジェイミー様の姿を思い浮かべる。
格好良かったなぁ……。雑誌でもそうだったが実際に間近で見ても無駄毛の一本も生えてなかった。それに、噂で聞いた通り笑顔も見せずクールで清廉な方だった。
そこが魅力の一つだがジェイミー様が笑ったらきっと薔薇の蕾が全て満開になる程の威力があるだろうなぁ。見てみたいが今までクレアと見せ合った雑誌の切り抜きにも一つも無い。あわよくば、死ぬまでに一度は拝みたい。そんな想いを胸に抱きながら眠りに落ちた。
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