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桜の木の下の恋人。
しおりを挟む綺麗な人。
それが彼を初めて見た感想だった。
金色の髪に桜の花びらが舞ってまるで桜とワルツを踊っているかのように見えた。
この年まで男の人にこんな思いを抱いた事など無かった。
あたしは一瞬でこの彼の虜になってしまった。
何分ぐらいその彼を見ていただろう。
気づくと彼と目が合っていた。
「どうかしましたか?」
彼があたしに問い掛けてきた。
あたしは慌てて「桜の中のあなたが綺麗で見とれてしまってました。」
と思わず言ってしまった。
彼は照れくさそうに「あっありがとう。」と答えた。
あたしはとっさに「お名前きいてもいいですか?」
すると彼はニコリと笑って「玲音」「君は?」
あたしも「莉子です。」
と答えた。
それから二人でいろんな話をした。
玲音は絵の勉強してるとかあたしもあたしで仕事で行き詰まってる事とか田舎から上京した時の話とか、話は尽きなかった。
気が付くと辺りが暗くなってたのもありその日は次の約束も無いままそのまま別れた。
それから何回か桜の木の下で逢って話をした。
でも、玲音が絵の勉強している以外分からなかった。
その理由を知ったのは偶然親友から聞かされた。
「実はこの木の下で待ち合わせしてた男の子が事故で亡くなったんだって。」と…
名前を聞くと「レオン」っと…
信じられなかった。
だってあたしの知ってる玲音は触れるし何より話だってしてるんだもの。
それに、あたしは玲音の事が、もう離れたくないぐらい大好きになってる。
そんな玲音にどう言う風に聞こうかすごくすごく悩んで、覚悟を決めて聞いてみる事にした。
「玲音…玲音って幽霊なの?」
玲音は重い口を開いて「うん…そうみたい。今まで言えなくてもごめんな。」
あたしは、何か言わなきゃと思いながら泣きじゃくるしか出来なかった。
そんなあたしを見て玲音はぎゅっと抱きしめてくれた。
そしてあたしは玲音に玲音はあたしにお互いの気持ちを言い合った。
お互いの思いが同じなのを確認し終わったと思ったその時、玲音の体が光だしたかと思った次の瞬間、玲音は人に戻ってた。
それはつかの間の神様がくれたプレゼントだったのかもしれない。
それでもあたしは嬉しかった。
この後に待つ試練を知らないままに…
それからあたしたちは、恋人同士となった。
あたし達は色んな所に行った。
春には、お花見。夏には、海やプール。秋には、もみじを見に行った。冬にはスノボ。
楽しいレジャーには2人で行きまくった。
そうして、4年が過ぎた頃、玲音は置き手紙を残して…いきなり居なくなった。
手紙には、
梨子へ
こんな形で居なくなる僕を許して下さい。
4年前に、莉子に思いを告げた時に、神に頼んだんだ。
もう少しだけこの世で、この子と過させて欲しい。と…
そして、その思いは叶った。
僕はこのままずっと莉子と一緒に居れると思っていたけど、そうも行かないみたい。
もうこの世に存在出来なくなった。
だから、もう莉子を抱きしめてあげられない。
もう少し早く言えば良かったのかも知れない。
でも、梨子に言うと泣いちゃうから、莉子の泣き顔より笑顔の方が大好きだから、僕が居なくなっても笑ってて欲しい
梨子に見えなくても僕は近くに居るから。
お願いだから笑ってて梨子。
手紙を読み終わったあたしは泣いた。
大好きな玲音が居なくなっても笑って居られるように今だけはと泣いた。
それからのあたしは玲音との約束通り笑顔で過ごすようにした。
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