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第5章

それでは触れ合ってみましょう

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「では、触れ合ってみてください。彼等には此処にいる者達を絶対に傷つけないよう伝えてあります。もし害することがあればクラージュ殿下が責任を取りますんで」


「ルナイス!聞いてないぞ!」



広場に影の中から出てきてもらったのは先程のキメラ魔獣、坊と比較的まだ小さいアイスドラゴン、パン。

坊は僕の言う事を忠実に守ってくれるし、パンは人懐っこく好奇心旺盛なのでドラゴンに慣れていない人が接するには丁度いいと思いククちゃんにもお願いして協力してもらうことにした。


この二体をこの会議の場に連れてくることは国王やクラージュ殿下には伝えていないが、とーさまや宰相さんにはきちんと事前に伝えている。



国王様たちに報告がいっていないのは彼らがその必要がないと判断したからだ。




そう思うと…アーナンダ国の国王の扱いめっちゃ雑。






「クラージュ殿下大丈夫です。愚かな者が此処にいなければ彼等は誰も傷つけません」


「そういう問題ではない!こういうことは事前に知らせておいてもらわねば責任の取り様もないだろう!」


「えぇ…でもとーさまと宰相さんには伝えてます」


「っあいつら!!」



クラージュ殿下ご乱心。

国王様はもう諦めた目をして、そっとパンに触れている。



そう言えば現国王様って本来は破天荒で好奇心旺盛な人だって聞いたことある。

色々言いながらもドラゴンっていう種族に興味あったんだな。






パンは触れて来る数名の国王達を伏せた姿勢で迎える。

尻尾が細かくフリフリと揺れているのは、初めて会う人間達に興味津々だから。
ただ思いのままにパンが動くと周りの物が壊れる可能性があるし、意図せず他者を傷つけてしまう可能性があるから頑張って我慢してねっと伝えてあったので、細かく尻尾を動かすだけに何とか留まっている状況だ。



坊に恐る恐る近づく国王達を見て、坊はキュッキュと可愛い声を出している。
怖くないよアピールなのだろうけど、魔獣の中には可愛らしい鳴き声で獲物を油断させる種もいるから、たぶんその本能的な部分もあると思う。


絶対口にしないけど。






アマ国の国王が坊に掌を差し出すと、坊はポンっと短い前足をアマ国王の掌にのせる。


キュキュ



「…」



タシ、タシとアマ国王の掌の上で前足をバウンドさせる坊をアマ国王はじっと食い入るように見ていて…たぶん本当に無害なのかを確かめているふりをして坊の可愛さにやられていると見た。






「では、一時的に皆様とドラゴンが会話できるようにする魔導具を使用したいと思います。この魔導具はまだ研究の途中でありますので使い切りの道具でありますので、完成し次第同盟国には一台ずつ友好の証にお贈りする予定でございます。お互いの伝言を頼んだり、ドラゴン等についての情報を共有する目的もあります」


これもまだアーナンダ国王様には伝えていないですけど。


しかし、こう言えば大体の国はアーナンダ国がドラゴンを使って攻め入る心配っていうのは少しは薄くなると思うし、実際に僕の言葉を聞いた国王何名かは満足そうに頷いている。



まぁ…頷いている国王達はそもそも納得していた側の国王達だけれど。





アマ国王はどうかなっとチラっと視線を向けると未だ坊をじっと見つめていた。






ノヴァとオリヴァー作の魔導具を起動させて、まずはアーナンダ国王にパンに話をかけてもらうよう勧める。





「…アーナンダ国現国王のホヌ・アルジュナ・アーナンダです」


『僕はパン!アガパンサスっていう名前でルナイスが名付けてくれたの!いい名前でしょ?国王様の名前も良い名前だねー!』



国王の自己紹介を大人しく聞いたパンはチラっと僕に視線を向けてきて、僕が頷いたのを見て楽しそうに国王に向かって話しかける。

しっかりとパンの言葉が聞き取れた様子の国王様達はびっくりしていて、皆固まっている。


坊に夢中だったアマ国王も目を見開いてパンを見ている。





『あのね、僕と母様は戦争には参加しないよ?ルナイスが傷つけられたら許さないけど、僕痛いの嫌だもん!レッドドラゴンは気性が荒いけど、僕達アイスドラゴンは比較的穏やか!たまーに凍らせてしまうこともあるけど解凍できるから大丈夫!』


パンの言葉に呆気にとられる国王達の様子が面白い。

パンはめちゃくちゃ喋るドラゴンだから相手が黙っていてもおかまいなしで喋るから余計に頭が混乱するんだよね。


可愛いと思うけど、偶に本当に黙っててって思う時あるもん。








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