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第5章
平和的に黙らせてみせます
しおりを挟む「よく来てくれた」
案内された部屋には以前お見掛けした時よりも疲れた顔をした国王様が座っておられて、国王様の奥に同じように疲れた顔をしたクラージュ殿下が立っておられていた。
座るよう促されて、とーさまと横並びに座ったのだけれど何とか立っているみたいな状態のクラージュ殿下が気になって気になって…
「あの…無礼を承知で申し上げます。クラージュ殿下もこちらに掛けてください」
僕の横の少し空いたスペースをぽんっと叩きクラージュ殿下に座るよう促した。
国王に許されていないのに話し出したことも、王族に向かって隣の席を促すこともあり得ないくらい無礼な行為ってことは理解しているのだけれど、このままではクラージュ殿下が倒れないか心配で話が頭に入ってこない自信がある。
「…よい。お前も座りなさい」
国王様からの許可が出たけれどクラージュ殿下は渋い顔をしてなかなか来ないので、僕が迎えに行って強制的に隣に座らせる。
すっとさりげなく脈を測り、熱を確かめたけれど、ほんのり体温が高くなっているかなぁくらいで大丈夫そう。
「早速本題に入るが、今この国にドラゴンが多く住み更には戦闘にドラゴンが加わっていることについて不安視する国への説明を続ける中で7割の国の理解は得られたがそれもまだ完全な信用には至っていない。そして残り3割の国は同盟国であるならば我等にもドラゴンの恩恵を分けるべきだと主張していて話は進んでおらん。その後も幾度と話し合いの場を設けてきたが理解は得られず、納得したはずの国の中からも不安視する声が上がり始めた」
迎えが来た時から他国への説得に関することだろうとは思っていたし、説得が潤滑にはいかないことも予想していたので国王様から聞かされる現状に驚くことはない。
こうして国王様が真剣に国の事について僕にも話してくれるのは、僕の王家の影としての働きを見てそこそこの信頼を得ているからだろう。
以外と用心深くて疑い深い人だと僕は思っているから、そうじゃなかったら現国王様はたぶん僕にこの話はしなかったと思う。
「明後日、再び国際会議を開く。その場にはルナイス・ウォード、君にも参加してもらい相手国がアーナンダ国のドラゴンは自分達の国の敵ではないことを証明してもらいたい」
「御意」
「…できるのだな?」
「はい。必ず平和的に黙らせてみせます」
僕、そういの得意なのでっと心の中で呟き国王様にはニコっと笑って見せる。
僕は今のアーナンダ国の状況を一刻も早く鎮静化させたいのだ。
じゃないと僕の大切な人達が傷つくことになるから。
なので
「厚かましくドラゴンの力を我が物にしようと企むだけでなく我が国を下に見る蛮国などに気を遣う必要はないかと思いますが…余計な戦争の火種を生まないように最大限努力いたします」
「…クラージュ、当日はルナイス・ウォードの横に控えておくのだぞ」
「御意」
話が進まずごねられ、ドラゴンを寄越せなどと馬鹿なことを口にするという事はアーナンダ国が相手にもならぬほどの弱国だと侮られているわけだ。
そのような国にまで配慮する意味は分からないが、まぁ…今以上に余計な戦争を起こしたくないから国王様達も困っておいでなのだろうし、僕個人的にはそんな国何て滅んでしまえばいいんじゃない?と思うけれど、我慢しますとも。
「心配はいりません陛下。万が一に備えてアーバスノイヤー家も準備をしておきます故、安心してルナイスに任せてください」
隣のとーさまだけがうんうんと満足そうに頷いて、万が一に備えておくとも言ってくれた。
やっぱりとーさまは一番頼りになる大人だ。
「クラージュ、どうにかアドルファスを呼び戻せんか」
「アドルファスを呼び戻したところで彼は加勢するだけですよ」
こそこそと国王様とクラージュ殿下がなにやら話しておられるけれど、こそこそ話している内容に耳を立てるわけにはいきませんからね。
僕は何も聞いていません。
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