上 下
323 / 336
第4章

とーさま達の影に怯える料理人

しおりを挟む


「「「お帰りなさいませ」」」




家に帰ると留守番組の従者達が門前で出迎えてくれた。

僕達はただいまっと言うのだけれど、此処でもタシターニさんは緊張気味。




「後で料理人の講師を紹介したいから立食の用意を。君達の分もね」


「かしこまりました。ルナイス様、アーバスノイヤー家より公爵様方が来訪されるとのことですが、いかがなさいますか?」



「あー…やっぱり来てくれるよねぇ。とーさま達の用意も一緒に。どうせ紹介する予定だったし」




使用人の一人からとーさま達が来ることを聞いて、やっぱりねっと苦笑い。

にぃ様とは何度か手紙のやり取りはあったけれど、直接顔を合わせてはいない。



新婚旅行中は色々あって心配をかけた自覚があるし…特ににぃ様は必ず帰還日に会いに来てくれると思っていたので事前に使用人達には食料を多めに用意しておくよう伝えていたので問題はない。







ただ一つ問題があるとすれば…


タシターニさんである。





彼の貴族としては無礼と取れる行動等を心配はしていない。
そんなものを気にする家ではないから。


問題はそこではなく…



とーさま達に会ったタシターニさんが緊張でぶっ倒れないかが心配なのだ。






事前に伝えるべきか…黙っておくべきか…


取り合えず使用人達にタシターニさんを部屋に案内させて、僕達は部屋でタシターニさんにアーバスノイヤー家の面々が訪れることを伝えるか伝えないかを決める会議を開いた。












「どうするノヴァ。言わなかったらタシターニさん気絶しちゃうんじゃない?」


「あぁ。俺もそう思う。事前に伝えた瞬間気絶してしまう可能性もあるが…そこは無理矢理起こせばどうにかなるだろうし、やはり事前に伝えておこう」



念の為ヨハネス達とも話し合って、やはり皆が事前に伝えておいた方が良いという判断だったので意を決してタシターニさんの部屋へと乗り込んだ。













「……」

「……」

「…もしかしてこれ…目を開いたまま気絶してる?」

「…かもな」



タシターニさんの部屋に突撃し、とーさま達が来ることを伝えた後のタシターニさんは驚きに目を見開いたまま動かなくなってしまった。


数秒待ってみたけれどタシターニさんはその後ピクリとも動かず(瞬きすらしてない)固まってしまった。





つんつんっと突いてみても無反応。





「タシターニさん」


名前を呼んでぺしぺしと頬を軽く叩くこと数回…


はっと意識を取り戻したタシターニさんは直ぐ近くにいる僕を視界に捉え、そして目をうるうると潤ませ始めた。




屈強な漢のうるうるお目目は特に可愛くもないし庇護欲も湧かないが、可哀想には思う。





「大丈夫です。とーさま達は自分達の敵以外には優しい人達ですから仲良くなれますよ」


「な…仲良く、なるなんて……うぐぅ」


一生懸命宥めてみるのだけれど、タシターニさんは奇妙な呻き声を上げ、頭を抱えてしまう。




「タシターニ、安心しろ。ルナイス気に入りの料理人と伝えればアーバスノイヤー家が君を害することはない。公爵様方には最初に伝えよう」


「お…お願い、します」



見かねたノヴァがタシターニさんの肩を叩きそう言うと、タシターニさんはノヴァに深く腰を折って切実に頼み込み始めた。


僕の実家…そんなに怖い所だったっけ?








しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~

狼蝶
BL
――『恥を知れ!』 婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。 小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。 おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。 「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい! そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

【BL】水属性しか持たない俺を手放した王国のその後。

梅花
BL
水属性しか持たない俺が砂漠の異世界にトリップしたら、王子に溺愛されたけれどそれは水属性だからですか?のスピンオフ。 読む際はそちらから先にどうぞ! 水の都でテトが居なくなった後の話。 使い勝手の良かった王子という認識しかなかった第4王子のザマァ。 本編が執筆中のため、進み具合を合わせてのゆっくり発行になります。

処理中です...