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第4章

絡まれたら舞台の役者になってました

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食に満足した体をほぐしがてら闇市を歩いていると、他の土地では見なかった種族が沢山居てアーナンダ国の中でも多種多様な種族が集まる場所であると分かった。

種族間の差別は比較的少ないアーナンダ国だけど、やっぱり根っこの部分にはまだまだ自分と違う見た目や特徴を持った種を受け入れ切れていないところがある。


此処はアーナンダ国が目指す多種多様な種族が共存する国という理想が実現している土地と言える。




「此処のご飯が中央に普及されてない理由って何だろう?とーさま達のような上層部だって一度は来たことがあるとは思うんだけど…食べなかったのかな?」


「見た目が見た目だからな。それに南の地へはあまり王族は足を運ばない。悪魔族の中には王へ礼を取るなどという知恵やルールが理解できない者も多いと聞くし、訪れて国民を不敬罪で処罰するという事態を防ぐ為と聞いたことがあるが…悪魔族の特性を嫌う貴族が多いことも理由のひとつだろう」



「そうなんだ…とーさまに上層部で見学に行かれてはどうですかって言ってみようかな」


「あぁ。公爵様なら上手い事宰相様達に言って誘導して下さるだろう」




そんな話をしながら歩いていると不意に大柄な男の人がよろけて僕にぶつかってきた。





「あぁ?何だこのチビ助はぁ?いってーなぁ!この野郎!!」

自分からぶつかってきておいて、謝罪どころか難癖つけてきたおじさんに周りがさっと離れて舞台が出来上がる。

あまりにも手慣れた周りの動きに、闇市ここでは見慣れた光景なのだろうと予測する。



「そちらがぶつかってきたんだ。謝罪どころか怒鳴るとはどういうつもりだ」

僕がぼけぇっとしている間にノヴァが僕にぶつかってきたおじさんに凄く怒っていた。




「やんのかぁ~?」

「汚い唾を散らすな」

「あぁ!?てめぇ調子にのるなよ!!」

「今のやり取りのどこで調子にのれるところがあった?」



おじさんのノヴァのやり取りに思わずぶふっと吹き出してしまった。

だって、ノヴァが真剣な表情で本当に分かんないって感じで無意識に相手を煽っているんだもの。



吹き出した僕の方へ視線を向けたおじさんが「何笑ってやがる!」と僕の胸元へと腕を伸ばしてくるが、その腕は僕の服を掴む前にすぱっと肘から先が消えてしまった。



「ぇ?…ぁ…あぁぁああああ!!??な、何でだ!?何したんだ!?」


おじさんは突然消えた自分の腕を唖然とし、腕がないことを理解した途端わーわーと騒ぎ出した。

先程までの威勢の良い態度が嘘のように、おじさんは涙目で先を失った肘を押さえて暴れていてその姿はわざと物事を大きく騒いで場を盛り上げる道化師のよう。







「腕を返して欲しくば今すぐ謝罪をし、二度と目の前に現れるな」


そんなおじさんを冷たい目で見下ろしているノヴァがそう告げるとおじさんはひーひー言いながら地面に伏して涙を流しながら僕達に謝罪をし、腕が戻ってくると慌ててこの場から立ち去って行った。

周りで遠巻きに見物していた者達は興味を失ったように去って行ったり、楽しそうに笑っていたりと様々で、まるで僕達が一芝居でもしたかのよう。



これはとーさま達みたいな高位の貴族は来ないなっと納得。

治安は少し悪いようだけど、巡回部隊は居るようで誰かからの知らせを受けて急いできてくれた(もう終わってるけど)ので、問題のない範囲だと感じる。


王都でもああいう困った人って一定数居たし。






ちなみにおじさんの腕を奪ったのはノヴァ。

魔法で幻覚を見せたのだ。


つまり本当に腕を取り上げたわけじゃないってこと。

おじさんが強い悪魔族だったら通じなかった手だから、おじさんが雑魚で良かったってノヴァが笑ってた。









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