290 / 319
第4章
龍神様との交信
しおりを挟む
東の地へはファクター公爵と国から立ち入りの許可を得て、僕達だけで向かった。
というのも、まだ新たに立法された法律への対処にアーナンダ国を始めとした各国が右往左往しているので僕達につけられる人員が一人もいなかったのだ。
元々案内は必要としていなかったので僕達としては問題ないどころか、寧ろ気楽に移動できる分良かった。
東に建てられた神殿についてはホルス様が場所を知っていたので迷うことなく辿り着くことができた。
「ふむ…龍神はルナイスとじっくりと話をしたいらしい。我等は一度神殿を出るぞ。」
神殿に入ってしばらく、全員でとりあえず挨拶をしたところで目を閉じしばらくじっと止まっていたホルス様はそう言うとさっさと神殿から出て行ってしまった。
龍神が望んでいるとあらば逆らうのは良くないのでノヴァもヨハネスも渋々後に続いて出ていく。
どうしたらいいんだろうっと思いながらとりあえず目を閉じて神殿の中央で跪いてみる。
『ルナイス、聞こえるな。』
『はい。』
これでいいのだろうかっと思っていると不意に頭に龍神様の声が響いた。
何度聞いても不思議な感覚だが、不快感はない。
『なかなか訪れぬので覗いてみれば、何やらやっているようで我との約束なぞ忘れておるのではないかと心配しておったが…覚えていたようで安心したぞ。』
龍神様の言葉にへへっと笑ってごまかす。
ちょっと忘れていたことは秘密だ。
『して、我がルナイスに神殿に出向くように言った理由であるが…まず壱に神殿を通じた方が交信が安定する。弐に主等に迷惑をかけた馬鹿のことだが、最高神の厳重な監視下にあるので今の所は害はないであろう。参に我の加護について説明をしておこうと思ってな。』
龍神様が教えてくれたことにうんうんっと頷きながら聞いていたら、ずっと不明瞭であった加護について教えてもらえるっということで背筋が伸びるし聴覚も敏感になる。
頭に直接響いているから聴覚敏感にしても意味ないのだけど…
『大体は分かっているようだが、まずドラゴンや竜に好かれ庇護されそして対話ができるようになる。お主は前の世界から魂を我が引っ張ってきた為、我との交信ができるがそれは特殊なことだ。ドラゴンの中にはノワールのように稀に我と交信を取れるものがおり、その者を通じて我がこの世にほんの少しばかり関与することができておる。』
『ノワール…ですか?』
『おぉ…そうか。お主は確かぁ…ホルスという名で呼んでおったな。』
聞き慣れないドラゴン名に首を傾げれば、まさかのホルス様のお名前だった。
そういえば以前ホルス様の正式なお名前を聞いたことがあったけれど、すっかり忘れてしまっていた。
尊いホルス様の名を忘れるなど…一生の恥じである!
『ほんにお主はノワールの容姿を好いておるのぉ。まぁ、それは良い。加護には今述べたもの以外の力もある。それは自己再生能力が高いこと、そしてドラゴンしか使えぬ力を使えるということだ。しかし人の身であるお主には負担が大きい。命の危機に瀕した時のみ使用することを勧める。』
自己再生能力が高いという事はホルス様から聞いていたけれど…ドラゴンしか使えない力とは?
文献で読んだこともないし、ホルス様から聞いたこともなければ見たこともない。
『龍神様。ドラゴンしか使えない力とはどんなものですか?』
『うむ。そうさな…国一つ亡ぼすことのできる終焉の吐息と呼ばれる力だ。神力の混じった炎と光、闇の煙のようなものだな。ルナイスが想像しやすいので言えば…ドラゴンが大きな火球を口から吐きだす力があるであろう?あのようなものだ。』
聞いてみたらとんでもない力だった。
唖然として何も言えない僕に構うことなく龍神様はどんどん話を進めていってしまう。
『まぁ、力が強すぎて生態系を壊してしまうでな…ドラゴン達も滅多にこの力は使わん。』
正直そんな人が持つには強力すぎる力なんて要らない。
要らないんだけど、龍神様は楽しそうに笑っているから要らないですって言えない。
それに…使う事が無くても使えて困ることはない。
使えることが他者に知られると困るけど…
というのも、まだ新たに立法された法律への対処にアーナンダ国を始めとした各国が右往左往しているので僕達につけられる人員が一人もいなかったのだ。
元々案内は必要としていなかったので僕達としては問題ないどころか、寧ろ気楽に移動できる分良かった。
東に建てられた神殿についてはホルス様が場所を知っていたので迷うことなく辿り着くことができた。
「ふむ…龍神はルナイスとじっくりと話をしたいらしい。我等は一度神殿を出るぞ。」
神殿に入ってしばらく、全員でとりあえず挨拶をしたところで目を閉じしばらくじっと止まっていたホルス様はそう言うとさっさと神殿から出て行ってしまった。
龍神が望んでいるとあらば逆らうのは良くないのでノヴァもヨハネスも渋々後に続いて出ていく。
どうしたらいいんだろうっと思いながらとりあえず目を閉じて神殿の中央で跪いてみる。
『ルナイス、聞こえるな。』
『はい。』
これでいいのだろうかっと思っていると不意に頭に龍神様の声が響いた。
何度聞いても不思議な感覚だが、不快感はない。
『なかなか訪れぬので覗いてみれば、何やらやっているようで我との約束なぞ忘れておるのではないかと心配しておったが…覚えていたようで安心したぞ。』
龍神様の言葉にへへっと笑ってごまかす。
ちょっと忘れていたことは秘密だ。
『して、我がルナイスに神殿に出向くように言った理由であるが…まず壱に神殿を通じた方が交信が安定する。弐に主等に迷惑をかけた馬鹿のことだが、最高神の厳重な監視下にあるので今の所は害はないであろう。参に我の加護について説明をしておこうと思ってな。』
龍神様が教えてくれたことにうんうんっと頷きながら聞いていたら、ずっと不明瞭であった加護について教えてもらえるっということで背筋が伸びるし聴覚も敏感になる。
頭に直接響いているから聴覚敏感にしても意味ないのだけど…
『大体は分かっているようだが、まずドラゴンや竜に好かれ庇護されそして対話ができるようになる。お主は前の世界から魂を我が引っ張ってきた為、我との交信ができるがそれは特殊なことだ。ドラゴンの中にはノワールのように稀に我と交信を取れるものがおり、その者を通じて我がこの世にほんの少しばかり関与することができておる。』
『ノワール…ですか?』
『おぉ…そうか。お主は確かぁ…ホルスという名で呼んでおったな。』
聞き慣れないドラゴン名に首を傾げれば、まさかのホルス様のお名前だった。
そういえば以前ホルス様の正式なお名前を聞いたことがあったけれど、すっかり忘れてしまっていた。
尊いホルス様の名を忘れるなど…一生の恥じである!
『ほんにお主はノワールの容姿を好いておるのぉ。まぁ、それは良い。加護には今述べたもの以外の力もある。それは自己再生能力が高いこと、そしてドラゴンしか使えぬ力を使えるということだ。しかし人の身であるお主には負担が大きい。命の危機に瀕した時のみ使用することを勧める。』
自己再生能力が高いという事はホルス様から聞いていたけれど…ドラゴンしか使えない力とは?
文献で読んだこともないし、ホルス様から聞いたこともなければ見たこともない。
『龍神様。ドラゴンしか使えない力とはどんなものですか?』
『うむ。そうさな…国一つ亡ぼすことのできる終焉の吐息と呼ばれる力だ。神力の混じった炎と光、闇の煙のようなものだな。ルナイスが想像しやすいので言えば…ドラゴンが大きな火球を口から吐きだす力があるであろう?あのようなものだ。』
聞いてみたらとんでもない力だった。
唖然として何も言えない僕に構うことなく龍神様はどんどん話を進めていってしまう。
『まぁ、力が強すぎて生態系を壊してしまうでな…ドラゴン達も滅多にこの力は使わん。』
正直そんな人が持つには強力すぎる力なんて要らない。
要らないんだけど、龍神様は楽しそうに笑っているから要らないですって言えない。
それに…使う事が無くても使えて困ることはない。
使えることが他者に知られると困るけど…
285
お気に入りに追加
3,071
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
僕は悪役令息に転生した。……はず。
華抹茶
BL
「セシル・オートリッド!お前との婚約を破棄する!もう2度と私とオスカーの前に姿を見せるな!」
「そ…そんなっ!お待ちください!ウィル様!僕はっ…」
僕は見た夢で悪役令息のセシルに転生してしまった事を知る。今はまだゲームが始まる少し前。今ならまだ間に合う!こんな若さで死にたくない!!
と思っていたのにどうしてこうなった?
⚫︎エロはありません。
⚫︎気分転換に勢いで書いたショートストーリーです。
⚫︎設定ふんわりゆるゆるです。
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?
左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。
それが僕。
この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。
だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。
僕は断罪される側だ。
まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。
途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。
神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?
※ ※ ※ ※ ※ ※
ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。
男性妊娠の描写があります。
誤字脱字等があればお知らせください。
必要なタグがあれば付け足して行きます。
総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。
婚約破棄と言われても・・・
相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」
と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。
しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・
よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
***********************************************
誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる