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第4章

会議②sideアドルファス

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次に国王様はクロック伯爵様に意見を聞いた。



「はい。私は国王陛下の案に賛成いたします。しかし鎖を繋いで拘束するのではなく至急結界により外に出られない施設を造りそこに軟禁することを提案いたします。これは双方の安全を考えての案でございます。闇属性適合者の中に繋がっているものがいるかもしれない、そして闇属性適合者への不信感から罪なき者を害する者が出て来るやもしれないそんな危険を事前に予防するにはこれが最善ではないかと存じます。」


「ふむ。ではマーフィー伯爵はいかがだろうか。十分に分かっていると思うが貴殿の甥にあたるルナイス・ウォードへの情だけの意見は不要だ。」



「はい。もちろん承知しております。私は闇属性適合者を一旦集め聞き取り調査を行い、害のある者、ない者をしっかりと見極めるべきだと考えます。我が国は多種多様な種族が共存する国。闇属性適合者は人族だけではありませんわ。反乱など起きようものならば最悪国は滅びます。」





クロック伯爵様の意見に今までで一番深く頷いた国王様は次にマーフィー伯爵…伯母上に声をかけた。

伯母上は力強い眼差しで国王様と他貴族を見据え意見を言った。
女当主はこの場では伯母上だけで、中にはそんな伯母上を見下している様子の者もいる。


過去に女当主が挙げた功績を知らないのかっと言いたくなるが、馬鹿に何を言っても分からないことを知っている。






「なるほどな。ではヒル侯爵はどう考える。」


「はい。私は正直そんな暇はないと考えます。適合者を1人1人捕まえる時間も、丁寧に聞き取りをする時間も、皆殺しにする時間も、それによる反乱に対処している時間もありません。なぜ本来調査を行う必要のない若者が今現在調査を行っているのか…それは現場の状況を見た当人達がそのような猶予はないと考えたからでしょう。ファクター公爵をはじめ、東側の当主達がこの場に出席していない意味を今一度よくお考え願いたい。」



「なっ!我等の考えが足りぬとでも申すのか!!」



「足りぬな。ただ闇属性の適合者を断罪しろと騒ぐことしかしないお主等のどこが考えが足りているように見えるというのだ。」




「無礼者!!国王様!こやつは国王様をも考えが足りないと申しております!厳しい処罰を!」



「ふむ。ヒル侯爵が一体いつ我も考えが足りぬと申したのだ。ヒル侯爵は今一度考え直せと申しておるだけと我は理解したが違うか?それとも我の考えが足りぬというのはお前の意見か?」




「そ!そんな!私はそのようなこと少しも思ったことございません!!」






ヒル侯爵様の辛辣な言葉に声を上げる者がおり、国王様を自身の味方につけようとして失敗し悔しそうにヒル侯爵を睨みながら着席した。

先程から本当に落ち着きのない人だ。
ルナイスの方が百倍落ち着いている。


いや…あんなのと比べるのはルナイスに失礼だ。







「まぁよい。それでアーバスノイヤー公爵…の前にアドルファス・アーバスノイヤー、君はどう考える?」


父上に向けられた視線が不意に自身へ向けられ思わず身構える。

まさか父上の背後に控えている俺に意見を聞いてくるとは思ってもみなかった。


そんな俺をニヤリと笑って楽しむ国王様に父上が顔を顰めているのが分かる。





「…はい。私は闇属性の適合者である弟の苦しむ姿を見てまいりました。闇属性適合者はその適正属性故に精神への負荷が大きいということを知り、そして世間での闇属性への嫌悪を近くで感じてきました。不幸にも身内に闇属性への偏見の強い者がおり、我が弟は何度も命を狙われ、屋敷の外に出るのにも父上からの許可と多くの目が必要でした。他種族が共存し闇属性への偏見の比較的少ないアーナンダ国でさえこの現状です。他国では闇属性適合者というだけで惨い殺され方をする者がいると聞きます。今回の件は許されるものではありませんが、彼等を犯罪者にしてしまったのは未だ迫害があると知りながら放置していた国の責任だと私は思います。これを機に国の在り方を見直すべきだと考えます。」




「うむ。それはこの事件への解決策や対策ではないな。しかし、この件が終わった時、属性への迫害についての対策について考える必要があるだろう。その際には再び貴殿の意見を聞こう。…では、アーバスノイヤー公爵君の意見を聞かせてもらおう。」





俺の意見を国王様は意外にも受け止めてくれた。

確かに突然のことで対策案というより、本当に意見っという感じになってしまったことは反省すべきであるが、ずっと密かに思っていたことをこの場でこの人達に言えたことに爽快な気持ちになっている。





「まずは我が息子の意見を受け止めてくださったことに感謝を申し上げます。…さて、私の意見ですが…東の地に戦力を全て向けるのは悪手です。敵が闇属性の団体とは限りません。彼らの感情を揺さぶって裏で操っている者がいる可能性もあります。国が東の地に目を向けている間に此処が、あるいは別の地が襲撃される可能性も十分にございます。」



「で、ではどうしろというのだ!?そんな話をしては話がひとつも前に進まんではないか!!」



「先程から貴殿は誰かが何か発言をするたびに噛みついているが…ただ自身の意見を通したいだけか、或いは我等の意見を通しては不都合があるのか。」





「な、なにを!私は貴殿等の愚かな意見に異を唱えておるだけだ!」





「お主が叫ぶたびに話が止まっておる。これ以上騒ぎ立てるならば退場するしかないがいかがか?」





「なっ!国王陛下はいつも彼等を贔屓して我等の意見を一つも聞かぬではありませんか!不公平です!!」





「ほう…我に何も考えずお主の言葉に首を縦に振っておけと命ずるか。我の決定では国が良くならんと言う事か。いい度胸だ。お主が何故領地も持たぬ伯爵であるか分かるか?お主が我に忠誠心を欠片も持っておらんからだ。領民を少しも顧みることもしない人間だからお主に領地を与えておらぬのだ。情けでこの場に集まる権利を与えておったが不要なようだな。つまみだせ。」




「そっ!そんな!陛下!陛下ぁぁぁあああ!!!」






父上の意見に噛みついてきたのは、先ほどから特に声を荒げていた伯爵の一人。

王を味方につけ、父上を失脚させたかったのだろうが愚かにも国王陛下に怒鳴りつけ自ら処刑されに向かった馬鹿は最後まで騒々しく兵に引きずられ退室された。



奴が強制退場させられてからは、奴と同じように声を上げていた輩も顔を青くして大人しくなり、会議室は一気に静かで厳粛な雰囲気へと変わった。







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