王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第4章

許せないなって思ってた

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じっと待つこと数時間。


いい加減魔力を放出し続けるのにも疲れ始めた頃に、ノヴァが返って来た。




「ルナイス、結界を張る。」


ノヴァは直ぐに僕が魔力を放出して警戒態勢でいることに気が付き、結界を展開してくれたので僕は魔力放出を止めた。

魔力量は全く問題ないのだけど、出て行っていた魔力の流れをぶった切るのでお腹がグルグルして気持ち悪い。







「おいでルナイス。」


お腹を擦る僕をベッドの上に胡坐をかいたノヴァが呼ぶので近寄れば、ひょいっと抱えられて胡坐の中にノヴァに背を向けるかたちで収められた。

後ろから回されたノヴァの手が優しく僕のお腹を撫でてくれて魔力の流れを整えてくれる。





ノヴァの温かい魔力にほっと息を吐き出し、この体制のままノヴァに話を促す。







「敵は闇魔法に適正を持つ者の集団だそうだ。アーナンダ国の者もいるが多くは他国出身の者が多い。推測だが…闇魔法適合者に対する排他的な思想の被害者が集まった末にできた集団だと思う。」


「なるほどね。アーナンダ国でも闇魔法適合者に対する扱いの悪さはまだ完全にはなくなっていないし、他国では適合者と分かったら即刻死刑なんて所もあるって聞くし生きていくために除け者同士群れてたら憎悪も膨れ上がってって感じかな。儀式っぽいのに関しては?」



僕はまだアーナンダ国で公爵家の息子として生まれたから露骨な扱いをする輩は少なかったけど、それでもいなかったわけじゃない。

今は亡きお爺様達しかり、暗殺者の雇い主の中には公爵家に闇魔法の適合者が居ることに嫌悪感を抱いていた者だっていた。



国が全属性に対する迫害を厳しく罰しているのにだ。






他国ではそもそも国が闇属性の適応者を認めないと公言している国があると聞いている。

そんな所で生まれていたら僕だってここまで生きていられなかっただろうし、生きれたとしてもそれは生き地獄であったと思う。


そんな中で生きてきたのなら、自分を害する者達を害される前に殺してやるって思うと思う。






もしかしたら彼等は闇属性に適応する者だけの国を造ろうと企んでいるのかもしれない。


それはそれで僕としては少し興味があるのだけど…




「儀式については奴はよく把握していないらしい。只…闇属性適合者が誰にも害されることなく生きられる世界にするには一度全てを壊す必要があるという思想を共通して持っているらしい。」


「へぇ。」




うん。

やっぱり僕は彼らの思想がよく分かってしまうな。



でもそれを許すわけにはいかない。

他国でのことなら面白いなって終わってたと思うけど、彼等が壊そうとしているこの場所には僕の大切にしているものたちが沢山ある。






「ここら辺がいい節目かもね。」


「ルナイス?」



「ノヴァ…人を殺せる力を持っているのはなにも闇魔法に限ったことじゃないよね。それなのに闇魔法だけが嫌悪される。アーナンダ国では今でこそそういった偏見や差別が少なくなったけど完全になくなったわけじゃない。」



「あぁ。そうだな。」



「他国では生まれて闇属性の適合者って分かった瞬間に首を落とされる子もいる。生きたまま火あぶりにされたり、拘束されて切りつけられたり殴られて長時間苦しめられた末に殺されたり…」



「あぁ。」




「僕ね常々思ってたの。って。だからこの事件を期にちょっと革命に挑戦してみようと思うんだ。」




この事があるよりずっと前、1歳の生誕祭くらいから…僕はずっと思ってたんだ。

僕より弱いくせに闇属性の適合者だからって暗殺者を仕掛けてきたり、見下したりする輩や無残に刈り取られる命の存在を知って僕の心にはずっと黒いモヤモヤが蓄積されていってた。



そしてある時ふっと思ったんだ。


こんなに気に入らないのなら壊しちゃえって。





もちろん今相手にしている奴等みたいに無関係の人達まで巻き込んで派手に破壊するつもりはない。







「手伝ってくれる?」


「もちろんだ。」




詳しい説明なんてしていないのに、僕に手を貸すと躊躇うことなく頷くノヴァが愛おしい。

僕の傍にはこうして絶対に味方でいてくれる存在が居たけれど、きっと今事件を起こしている彼等にはそういった存在が居なかった。



少しくらい救いがないと、彼等が生まれてきた意味が分からなくなってしまう。



彼等も


僕も






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