261 / 317
第4章
真剣な会議
しおりを挟む
状況の深刻さを把握するために僕達は一度ノルデン邸へと戻って来た。
ヒュー様達も一緒で治療を受けた後、ノルデン子爵も伴ってファクター公爵家へ転移陣を使い移動した。
ファクター公爵はまだ公務の途中だったのだけど、国から重要案件が発生したと呼び戻されたらしく急いで仕事を切り上げて帰還したようで、表情からは少しばかり疲労が感じられる。
ファクター公爵家に集まったのは僕達だけでなく、とーさまとヒル侯爵様とオルフェウス伯爵様とグリシャム子爵と東寄りの領地の当主が集まっている。
この面子が集まった場の空気はピンっと張り詰めていて、お茶の給仕をする使用人達も緊張からか壁にピシっと直立不動で、何名かは顔が白に近いくらい真っ青で汗がたらたらと流れている。
「急な招集であったが、集まってくれたことに感謝する。集まった理由である件については既にご存じかと思われるので省略させていただこう。まずはヒュー・ヒル殿から対応した現場の詳しい状況について説明を。」
「っは!現場の近くでの公務があったのですが、領地の東にて多数の魔獣の群れを発見したとの報告が冒険者より上がり直ぐに動ける者を連れ出立しました。近くの村の住人達は冒険者によって避難が済んでおりましたので近隣への被害は確認されておりません。現場には報告通り多数の魔獣がおりましたがどの個体もどこかへ向かって動いている様子はなく、しかし何処からか突如現れ個体数を増やしておりました。近くに現れた我等に気が付いた魔獣達はすぐに攻撃を仕掛けてきたので正しく状況を把握する暇がありませんでした。多くの魔獣を一定の場で殺すのは危険を伴うと理解しておりましたが、我等では捌くのに精一杯で対処できませんでした。が、ノヴァ・ウォードの尽力もあり不浄の地にならずに終えることができましたという状況です。」
ファクター公爵に指名されたヒュー様はとても真剣な表情でハキハキと報告をする。
その姿を見て、僕はほーっと呆けた。
だって今までに見たことがないほど強い人って感じがしてヒュー様なのに知らない人みたい。
あんな表情するんだーっとじっと見ていた僕はたぶんこの場で一番緊張感がない。
「ご苦労であった。ノヴァ・ウォード殿もよくやってくれた。」
「もったいないお言葉です。」
ファクター公爵がノヴァにも言葉をかけたけれど、ノヴァが思ったよりもスマートに言葉を返すので今度は隣のノヴァに視線を向けて呆けてしまう。
え?いつの間にそんなスマートに人と会話できるようになったの?って顔で見ていたらノヴァからチラっと視線を向けられたけど、なんでかすぐ視線を逸らされてしまった。
「魔物の数は?」
「きちんと数えることはできませんでしたが…1万程ではないかと。」
ヒル侯爵の言葉に返したヒュー様の言葉に全員が顔を顰めた。
通常ではそれだけの数が群れをなすということはまずない。
しかもあの場には多種の魔獣がいた。
同種であるならまだしも、多種で群れる何て何か仕掛けななければあり得ない話なんだ。
しかもそんなことが出来る相手となれば、アーナンダ国にとって脅威以外の何物でもない。
「ルナイス・アーバスノイヤー殿はヒュー・ヒル殿に会いに行く途中、ノルデン領にて魔獣に襲われたと聞いたが。」
「はい。しかし私達を襲撃した魔獣は100程。護衛の者で対応が可能でしたので詳しいことはヨハネスに説明を。部屋に居れても良いでしょうか?」
「許可しよう。」
ファクター公爵が今度は僕の方に話を振ってきたので、すぐさまヨハネスを召喚した。
場の真剣な空気にヨハネスは元々ピシっとしている背筋を更にピシっと伸ばして入室。
「ヨハネス・アーチが報告いたします。襲ってきた魔獣はおおよそ100体程。ヒュー・ヒル様の現場ほど魔獣に群れている様子はなく動きに統一性はありませんでした。現場には魔法陣が描かれた紙数枚と血の付いた骨が数本。骨の中には人間の者らしきものがありました。更にこちらを監視する目的のものであろう魔法付与札が張られたスライムを何体か発見しております。現場一体は念入りに探し捕獲した以上はおりませんでしたが、何体かは取り逃がした可能性があります。」
「…目的が分からんな。」
ヨハネスの報告に段々と皆眉間を揉み始め、ついに耐えきれなくなったらしいヒル侯爵様が声をあげる。
「ルナイス様よりすぐに魔力の残滓を探すように命を受けましたが、ノヴァ様をもっても当てはまる人物は特定できておりません。」
「しかし微かではありますが、現場の者や魔獣のものでない魔力は感知しましたので会うことがあれば分かるかと。」
ヨハネスの言葉にすぐさまノヴァが補足する。
うん。僕の旦那様優秀。
ヒュー様達も一緒で治療を受けた後、ノルデン子爵も伴ってファクター公爵家へ転移陣を使い移動した。
ファクター公爵はまだ公務の途中だったのだけど、国から重要案件が発生したと呼び戻されたらしく急いで仕事を切り上げて帰還したようで、表情からは少しばかり疲労が感じられる。
ファクター公爵家に集まったのは僕達だけでなく、とーさまとヒル侯爵様とオルフェウス伯爵様とグリシャム子爵と東寄りの領地の当主が集まっている。
この面子が集まった場の空気はピンっと張り詰めていて、お茶の給仕をする使用人達も緊張からか壁にピシっと直立不動で、何名かは顔が白に近いくらい真っ青で汗がたらたらと流れている。
「急な招集であったが、集まってくれたことに感謝する。集まった理由である件については既にご存じかと思われるので省略させていただこう。まずはヒュー・ヒル殿から対応した現場の詳しい状況について説明を。」
「っは!現場の近くでの公務があったのですが、領地の東にて多数の魔獣の群れを発見したとの報告が冒険者より上がり直ぐに動ける者を連れ出立しました。近くの村の住人達は冒険者によって避難が済んでおりましたので近隣への被害は確認されておりません。現場には報告通り多数の魔獣がおりましたがどの個体もどこかへ向かって動いている様子はなく、しかし何処からか突如現れ個体数を増やしておりました。近くに現れた我等に気が付いた魔獣達はすぐに攻撃を仕掛けてきたので正しく状況を把握する暇がありませんでした。多くの魔獣を一定の場で殺すのは危険を伴うと理解しておりましたが、我等では捌くのに精一杯で対処できませんでした。が、ノヴァ・ウォードの尽力もあり不浄の地にならずに終えることができましたという状況です。」
ファクター公爵に指名されたヒュー様はとても真剣な表情でハキハキと報告をする。
その姿を見て、僕はほーっと呆けた。
だって今までに見たことがないほど強い人って感じがしてヒュー様なのに知らない人みたい。
あんな表情するんだーっとじっと見ていた僕はたぶんこの場で一番緊張感がない。
「ご苦労であった。ノヴァ・ウォード殿もよくやってくれた。」
「もったいないお言葉です。」
ファクター公爵がノヴァにも言葉をかけたけれど、ノヴァが思ったよりもスマートに言葉を返すので今度は隣のノヴァに視線を向けて呆けてしまう。
え?いつの間にそんなスマートに人と会話できるようになったの?って顔で見ていたらノヴァからチラっと視線を向けられたけど、なんでかすぐ視線を逸らされてしまった。
「魔物の数は?」
「きちんと数えることはできませんでしたが…1万程ではないかと。」
ヒル侯爵の言葉に返したヒュー様の言葉に全員が顔を顰めた。
通常ではそれだけの数が群れをなすということはまずない。
しかもあの場には多種の魔獣がいた。
同種であるならまだしも、多種で群れる何て何か仕掛けななければあり得ない話なんだ。
しかもそんなことが出来る相手となれば、アーナンダ国にとって脅威以外の何物でもない。
「ルナイス・アーバスノイヤー殿はヒュー・ヒル殿に会いに行く途中、ノルデン領にて魔獣に襲われたと聞いたが。」
「はい。しかし私達を襲撃した魔獣は100程。護衛の者で対応が可能でしたので詳しいことはヨハネスに説明を。部屋に居れても良いでしょうか?」
「許可しよう。」
ファクター公爵が今度は僕の方に話を振ってきたので、すぐさまヨハネスを召喚した。
場の真剣な空気にヨハネスは元々ピシっとしている背筋を更にピシっと伸ばして入室。
「ヨハネス・アーチが報告いたします。襲ってきた魔獣はおおよそ100体程。ヒュー・ヒル様の現場ほど魔獣に群れている様子はなく動きに統一性はありませんでした。現場には魔法陣が描かれた紙数枚と血の付いた骨が数本。骨の中には人間の者らしきものがありました。更にこちらを監視する目的のものであろう魔法付与札が張られたスライムを何体か発見しております。現場一体は念入りに探し捕獲した以上はおりませんでしたが、何体かは取り逃がした可能性があります。」
「…目的が分からんな。」
ヨハネスの報告に段々と皆眉間を揉み始め、ついに耐えきれなくなったらしいヒル侯爵様が声をあげる。
「ルナイス様よりすぐに魔力の残滓を探すように命を受けましたが、ノヴァ様をもっても当てはまる人物は特定できておりません。」
「しかし微かではありますが、現場の者や魔獣のものでない魔力は感知しましたので会うことがあれば分かるかと。」
ヨハネスの言葉にすぐさまノヴァが補足する。
うん。僕の旦那様優秀。
371
お気に入りに追加
3,064
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた。
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエルがなんだかんだあって、兄達や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑でハチャメチャな毎日に奮闘するノエル・クーレルの物語です。
若干のR表現の際には※をつけさせて頂きます。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、改稿が終わり次第、完結までの展開を書き始める可能性があります。長い目で見ていただけると幸いです。
2024/11/12
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。
花かつお
BL
気づけば男しかいない国の高位貴族に転生した僕は、成長すると、その国の王妃となり、この世界では人間の体に魔力が存在しており、その魔力により男でも子供が授かるのだが、僕と夫となる王とは物凄く魔力相性が良くなく中々、子供が出来ない。それでも諦めず努力したら、ついに妊娠したその時に何と!?まさか前世で読んだBl小説『シークレット・ガーデン~カッコウの庭~』の恋人に捨てられた儚げ不憫受け主人公を助けるヒーローが自分の夫であると気づいた。そして主人公の元クズ恋人の前で主人公が自分の子供を身ごもったと宣言してる所に遭遇。あの小説の通りなら、自分は当て馬悪役王妃として断罪されてしまう話だったと思い出した僕は、小説の話から逃げる為に地方貴族に下賜される事を望み王宮から脱出をするのだった。
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる