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第4章
面倒な証拠物
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嫌な事に気が付いてしまった僕はすぐにヨハネスを召喚して辺りに人為的な怪しい物がないか探すように指示を出した。
これで怪しい物が見つかれば僕の予想が当たりということになる。
そしてその物が見つかる可能性は98%
2%は面倒なことに巻き込まれたくないという僕の希望だ。
「ルナイス様。これが。」
「…」
しばらくしてヨハネスが持ってきた物に思わず下唇を突き出す。
ヨハネスが持ってきたのは魔法陣が書かれたいくつもの紙と血の付いた骨数本。
「ルナイス様。」
どういうことか教えろっと目で訴えてくるヨハネスと、僕が気づいてしまった事を口にしたくない僕でしばらく沈黙が続いたけれど、どっちにしても僕はこのことを口にしなくてはいけない。
「呪術だ。怪しい奴は?」
「近くに気配はありません。」
「見張りが必ずいるはず。居ないのなら何かしらこの場を見れる道具があるはずだ。魔力の残滓も探るように。」
「は!」
はぁっと重たい溜息を吐いてノヴァを呼び戻すようにコルダへ告げる。
コルダへ頼んで数秒でノヴァは戻ってきた。
どうやら転移を使ったようで、コルダから呪術については耳にしているようで難しい顔をしている。
「どうしてこう問題ばかり…」
「ヒル領の方も同じ理由で魔獣討伐が行われたのかもしれない。」
ノヴァの言葉に確かにここはまだノルデン領だけれどヒル領と近いし、ヒュー様が居る場所も此処からさほど遠くない。
次期領主となる人物が領地の端まで魔獣討伐に駆り出されるのは改めて考えれば通常ではないことだ。
「ノヴァ…とーさま禿げないかな?」
「…禿げは細胞の老化と聞く。対策魔法を研究しよう。」
新たな問題へと巻き込まれる予感につい弱気にノヴァに尋ねれば、励ましになるのかどうか微妙な言葉が返ってきた。
二人でとーさまが何時禿げてしまってもいいように研究しようね、なんて変な方向に決意を固めている所で馬車の扉が叩かれた。
「ルナイス様。残念ながら魔力の残滓については我々では分かりませんでしたが、こちらを発見致しました。」
扉を叩いたのはヨハネスで、ヨハネスの掌には目玉らしき模様が書かれた魔法付与札が貼り付けられたスライムが乗っている。
「魔物の魔力を使って自身の魔力を分かりにくくしているな。」
スライムを見てノヴァが言う。
少しばかり関心している様子のノヴァを見るに、この呪術を仕込んだ輩は魔術あるいは魔法に優れた者であると分かる。
目的も分からないし、単独犯なのか組織なのかも分からないけれど油断ならぬ相手であることだけは理解した。
「ノヴァは魔力の残滓は感じる?」
「あぁ。付与札から微かにスライムではない魔力を感じるが…思い当たる人物が居ないから誰かは分からない。」
ということは、僕達が関わったことがない者。
つまり茶会や社交界で会ったことのある自国の貴族達が関わっている可能性は限りなく低い。
他国の侵入者の可能性もあり得る。
「取り合えず数名は此処に残って調査と警戒を。僕達はヒュー様と合流。コルダはこのことをオスカル君とノルデン子爵様にご報告して。」
「「「「は!!」」」」
これ以上僕達が此処で立ち止まっていても良いことにならないと判断した僕はこの場に残す人員とノルデン領の出来事なのでその当主への報告をコルダに指示した。
魔法送書でお知らせしてもいいのだけど、重要なことなので万が一に備えてコルダをノルデン領に送った方がいいという判断で報告した後はノルデン家に従うようにも指示した。
コルダほど優秀な護衛は他にいないけれど、ヨハネスも他の護衛も十分に強い。
ノルデン家の護衛達も強いことは知っている。
ノルデン領の住民は基本的に好戦的な人が多いし、戦闘能力も高い。
だけど僕の心の安寧のためにコルダを傍に置いておいてほしいのだ。
それにコルダもノルデン家の戦闘に心惹かれているみたいで、僕はこっそりとしれっとノルデン家の警備隊の訓練に変装して混じっているコルダを見た。
今も嬉々として一人ノルデン家の方へ向かっていったし…まぁなんの問題もないだろう。
さて、僕達は早い事ヒュー様にこの問題を投げ付けて平穏な新婚旅行に戻ろう。
これで怪しい物が見つかれば僕の予想が当たりということになる。
そしてその物が見つかる可能性は98%
2%は面倒なことに巻き込まれたくないという僕の希望だ。
「ルナイス様。これが。」
「…」
しばらくしてヨハネスが持ってきた物に思わず下唇を突き出す。
ヨハネスが持ってきたのは魔法陣が書かれたいくつもの紙と血の付いた骨数本。
「ルナイス様。」
どういうことか教えろっと目で訴えてくるヨハネスと、僕が気づいてしまった事を口にしたくない僕でしばらく沈黙が続いたけれど、どっちにしても僕はこのことを口にしなくてはいけない。
「呪術だ。怪しい奴は?」
「近くに気配はありません。」
「見張りが必ずいるはず。居ないのなら何かしらこの場を見れる道具があるはずだ。魔力の残滓も探るように。」
「は!」
はぁっと重たい溜息を吐いてノヴァを呼び戻すようにコルダへ告げる。
コルダへ頼んで数秒でノヴァは戻ってきた。
どうやら転移を使ったようで、コルダから呪術については耳にしているようで難しい顔をしている。
「どうしてこう問題ばかり…」
「ヒル領の方も同じ理由で魔獣討伐が行われたのかもしれない。」
ノヴァの言葉に確かにここはまだノルデン領だけれどヒル領と近いし、ヒュー様が居る場所も此処からさほど遠くない。
次期領主となる人物が領地の端まで魔獣討伐に駆り出されるのは改めて考えれば通常ではないことだ。
「ノヴァ…とーさま禿げないかな?」
「…禿げは細胞の老化と聞く。対策魔法を研究しよう。」
新たな問題へと巻き込まれる予感につい弱気にノヴァに尋ねれば、励ましになるのかどうか微妙な言葉が返ってきた。
二人でとーさまが何時禿げてしまってもいいように研究しようね、なんて変な方向に決意を固めている所で馬車の扉が叩かれた。
「ルナイス様。残念ながら魔力の残滓については我々では分かりませんでしたが、こちらを発見致しました。」
扉を叩いたのはヨハネスで、ヨハネスの掌には目玉らしき模様が書かれた魔法付与札が貼り付けられたスライムが乗っている。
「魔物の魔力を使って自身の魔力を分かりにくくしているな。」
スライムを見てノヴァが言う。
少しばかり関心している様子のノヴァを見るに、この呪術を仕込んだ輩は魔術あるいは魔法に優れた者であると分かる。
目的も分からないし、単独犯なのか組織なのかも分からないけれど油断ならぬ相手であることだけは理解した。
「ノヴァは魔力の残滓は感じる?」
「あぁ。付与札から微かにスライムではない魔力を感じるが…思い当たる人物が居ないから誰かは分からない。」
ということは、僕達が関わったことがない者。
つまり茶会や社交界で会ったことのある自国の貴族達が関わっている可能性は限りなく低い。
他国の侵入者の可能性もあり得る。
「取り合えず数名は此処に残って調査と警戒を。僕達はヒュー様と合流。コルダはこのことをオスカル君とノルデン子爵様にご報告して。」
「「「「は!!」」」」
これ以上僕達が此処で立ち止まっていても良いことにならないと判断した僕はこの場に残す人員とノルデン領の出来事なのでその当主への報告をコルダに指示した。
魔法送書でお知らせしてもいいのだけど、重要なことなので万が一に備えてコルダをノルデン領に送った方がいいという判断で報告した後はノルデン家に従うようにも指示した。
コルダほど優秀な護衛は他にいないけれど、ヨハネスも他の護衛も十分に強い。
ノルデン家の護衛達も強いことは知っている。
ノルデン領の住民は基本的に好戦的な人が多いし、戦闘能力も高い。
だけど僕の心の安寧のためにコルダを傍に置いておいてほしいのだ。
それにコルダもノルデン家の戦闘に心惹かれているみたいで、僕はこっそりとしれっとノルデン家の警備隊の訓練に変装して混じっているコルダを見た。
今も嬉々として一人ノルデン家の方へ向かっていったし…まぁなんの問題もないだろう。
さて、僕達は早い事ヒュー様にこの問題を投げ付けて平穏な新婚旅行に戻ろう。
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