上 下
259 / 328
第4章

面倒な証拠物

しおりを挟む
嫌な事に気が付いてしまった僕はすぐにヨハネスを召喚して辺りに人為的な怪しい物がないか探すように指示を出した。



これで怪しい物が見つかれば僕の予想が当たりということになる。

そしてその物が見つかる可能性は98%

2%は面倒なことに巻き込まれたくないという僕の希望だ。









「ルナイス様。これが。」


「…」



しばらくしてヨハネスが持ってきた物に思わず下唇を突き出す。



ヨハネスが持ってきたのは魔法陣が書かれたいくつもの紙と血の付いた骨数本。





「ルナイス様。」


どういうことか教えろっと目で訴えてくるヨハネスと、僕が気づいてしまった事を口にしたくない僕でしばらく沈黙が続いたけれど、どっちにしても僕はこのことを口にしなくてはいけない。








「呪術だ。怪しい奴は?」


「近くに気配はありません。」



「見張りが必ずいるはず。居ないのなら何かしらこの場を見れる道具があるはずだ。魔力の残滓も探るように。」



「は!」





はぁっと重たい溜息を吐いてノヴァを呼び戻すようにコルダへ告げる。



コルダへ頼んで数秒でノヴァは戻ってきた。
どうやら転移を使ったようで、コルダから呪術については耳にしているようで難しい顔をしている。






「どうしてこう問題ばかり…」


「ヒル領の方も同じ理由で魔獣討伐が行われたのかもしれない。」


ノヴァの言葉に確かにここはまだノルデン領だけれどヒル領と近いし、ヒュー様が居る場所も此処からさほど遠くない。

次期領主となる人物が領地の端まで魔獣討伐に駆り出されるのは改めて考えれば通常ではないことだ。






「ノヴァ…とーさま禿げないかな?」



「…禿げは細胞の老化と聞く。対策魔法を研究しよう。」




新たな問題へと巻き込まれる予感につい弱気にノヴァに尋ねれば、励ましになるのかどうか微妙な言葉が返ってきた。

二人でとーさまが何時禿げてしまってもいいように研究しようね、なんて変な方向に決意を固めている所で馬車の扉が叩かれた。









「ルナイス様。残念ながら魔力の残滓については我々では分かりませんでしたが、こちらを発見致しました。」


扉を叩いたのはヨハネスで、ヨハネスの掌には目玉らしき模様が書かれた魔法付与札が貼り付けられたスライムが乗っている。



「魔物の魔力を使って自身の魔力を分かりにくくしているな。」



スライムを見てノヴァが言う。

少しばかり関心している様子のノヴァを見るに、この呪術を仕込んだ輩は魔術あるいは魔法に優れた者であると分かる。


目的も分からないし、単独犯なのか組織なのかも分からないけれど油断ならぬ相手であることだけは理解した。








「ノヴァは魔力の残滓は感じる?」


「あぁ。付与札から微かにスライムではない魔力を感じるが…思い当たる人物が居ないから誰かは分からない。」



ということは、僕達が関わったことがない者。

つまり茶会や社交界で会ったことのある自国の貴族達が関わっている可能性は限りなく低い。
他国の侵入者の可能性もあり得る。




「取り合えず数名は此処に残って調査と警戒を。僕達はヒュー様と合流。コルダはこのことをオスカル君とノルデン子爵様にご報告して。」


「「「「は!!」」」」


これ以上僕達が此処で立ち止まっていても良いことにならないと判断した僕はこの場に残す人員とノルデン領の出来事なのでその当主への報告をコルダに指示した。

魔法送書でお知らせしてもいいのだけど、重要なことなので万が一に備えてコルダをノルデン領に送った方がいいという判断で報告した後はノルデン家に従うようにも指示した。




コルダほど優秀な護衛は他にいないけれど、ヨハネスも他の護衛も十分に強い。


ノルデン家の護衛達も強いことは知っている。
ノルデン領の住民は基本的に好戦的な人が多いし、戦闘能力も高い。


だけど僕の心の安寧のためにコルダを傍に置いておいてほしいのだ。


それにコルダもノルデン家の戦闘に心惹かれているみたいで、僕はこっそりとしれっとノルデン家の警備隊の訓練に変装して混じっているコルダを見た。
今も嬉々として一人ノルデン家の方へ向かっていったし…まぁなんの問題もないだろう。







さて、僕達は早い事ヒュー様にこの問題を投げ付けて平穏な新婚旅行に戻ろう。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

婚約破棄は計画的にご利用ください

Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった 第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい ……どうしよう :注意: 素人です 人外、獣人です、耳と尻尾のみ エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります 勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください ざまぁできませんでした(´Д` ;)

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...