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第4章
友人であろうと許しません
しおりを挟むあのお花のお店を出た後は、植物園だったり領民達が営む出店街を歩いたりしてお腹をぱんぱんに膨らませたところでノルデン邸に帰還した。
ありとあらゆる食を食べ歩いたので夕食はとらず、部屋でのんびりして過ごし翌日は早朝から元気なオスカル君に起こされて訓練場へと連れ出された。
「これからこの1から3部隊と僕とノヴァ様を含むルナイス様部隊で模擬戦を行います!」
すっごい笑顔でそう言うオスカル君を覚醒しきらない脳みその僕はぼーっと眺める。
隣でノヴァが「誰が何時決めた。」とか不機嫌に言っていいながら寝ぼけている僕が倒れそうになるのを何度も支えてくれている。
「ルナイス。お前の友人が勝手に模擬戦を始めているがいいのか?」
早朝からテキパキ動き回る騎士と警備隊の人達を目で追っていると不意に凄い耳元で低くて安心するとってもいい声が聞こえてきて徐々に意識が現実の方へと引っ張られる。
「ん…僕…まだ…寝間着…です。」
「よく見ろ。此処に来る前に着替えさせた。」
「…ほんとだ。…ん?どういう状況?」
意識が覚醒しきったところで自分の置かれている状況に困惑する。
気が付いた時には僕達の周りに木刀を構えた人達が沢山いて、目が爛々と輝いている。
朝からバッキバキに元気な人達を見て引いていると隣から「始め!」というオスカル君の大きな声が聞こえてきたと思ったら周りにいた人達が一斉に僕達に向かって突っ込んでくる。
状況をまだよく分かっていない僕は振り下ろされる木刀たちを避けながらノヴァに説明を求めた。
「ノヴァ!どういう状況これ!?」
「オスカル様が何の前触れもなく俺達を巻き込んで模擬戦を始めた。」
「なるほど!」
簡潔に分かりやすく状況を教えてもらったところで、僕は楽しそうに木刀を振り回しているオスカル君を視界に捉える。
「制限とか決まりは?」
「ない。」
「じゃあ…その他大勢は任せるね。」
僕がそう言うとノヴァはすぐに僕のやろうとしていることを分かってくれて、こちらへ向かってきている人達を氷漬けにして、残った者達には火球を投げ飛ばした。容赦ない。
僕はノヴァがこちらへ向かってくる者達を相手してくれている間に標的の元へと影にどぼんして移動。
標的の影から飛び出してこちらへ振り上げられた肘を掌で抑え向きを変え、標的の首元へ近くにいた奴から奪った木刀を突き付ける。
それまで有象無象に動き回っていた標的も周りの人間も一斉に動きを止めたところで僕は標的の耳を思いっきり引っ張り上げる。
「いだだだだ!!!」
「オスカル君。今すぐ謝罪をするか、片足の自由を失うか…どっちを選ぶ?」
「す、すみません!!!」
標的、オスカル君は迷う間もなく謝罪をしたので耳から手を離しオスカル君からも離れる。
周りの騎士や警備隊の人も木刀を下ろし反省顔をしているのでオスカル君とは共犯だろう。
あくまでも今の僕達は客という立場にある。
そんな僕達を早朝の頭が覚醒していない間にぼこぼこにしてやろうだなんて…
いい度胸である。
「この事はしっかりノルデン子爵に報告させてもらいますね。」
ざっとオスカル君含め全員を見渡した後にニコっとわざとらしい笑みを浮かべてそう告げた僕に追いすがり僕の歩み道を阻む者達を拘束魔法で動きを封じながら離れへの道を歩く。
もちろん後ろにはノヴァが付いてきていて結界を張って近づいてくる輩を弾いている。
「ル、ルナイス様!」
「残念。もう僕の護衛が報告に走ってまーす。」
顔を真っ青にしたオスカル君が僕に縋るように声をかけてくるのを笑って突き放すと、オスカル君はそんなーっと声をあげて地面に伏した。
ちなみに走って報告に行ったのはコルダなのでもうすぐノルデン子爵の元に辿り着くことでしょう。
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