241 / 317
第4章
抑えられない好奇心
しおりを挟むテトラ君達は予想通り翌日のお昼前に帰ってきた。
テトラ君のお父様であるハデス辺境伯様を連れて。
「なるほど。」
現状ノヴァの結界で歪みの穴を塞いでいることを報告するとハデス辺境伯様は静かに頷かれた。
相変わらず大きくて逞しい逆三角形の肉体で憧れるが、ちょっとデカすぎて僕は長時間辺境伯様を見ていられない。
「歪みの穴は昨夜から今朝にかけて少しずつ大きくなっていっています。結界を解いたら昨日よりも大型の魔獣が現れる可能性が高いとみています。」
しれっと辺境伯様に衝撃情報を告げるノヴァに僕だけじゃなくヨハネス達も驚いている。
結界を施しているノヴァしか穴の拡大は分からなかったのだが、僕達はその情報を聞いていなかった。
「うむ…」
ノヴァの言葉を踏まえてどう対策をするかと思案する辺境伯様。
組んだ腕の上腕二頭筋がすごい。
テトラ君も将来はあんな筋肉すごくなるのだろうか…。
それにしても僕は今朝起きた時からひとつ気になっていることがある。
これは声に出して言ってもいいことかどうか分からなくて今まで黙っていたけれど、やっぱり好奇心が抑えられない。
「大量の魔獣が歪みの穴から出てきたとして、この森を出てくるのでしょうか?」
昨日テトラ君は魔獣やキメラ達があの森から出てきたことはないと言っていたので、僕は結界みたいなものがこの森には展開されているのだろうと思っていた。
森の近くに来て、森の中に入っても結界も魔力も感じなかったけれど…魔獣達が今までこの森から外に出なかったのには何かしら理由があったはずだ。
ノヴァの結界を解いて魔獣達がどんどん湧いてきたとして、彼らははたして森の外まで僕達を追いかけてくるのだろうか?
それが朝起きた時からずっと考えていることで、できれば試してみたいと思っていることだ。
「確かに今まで奴等は森の外に出たことはないと記録されている。しかしその理由が分からん。今それを試して、万が一魔獣達が森の外に出てしまえば被害を被るのは我々北の者だけではない。」
辺境伯様の言葉にですよねーっと笑う。
「…辺境伯。国から許可を取り試してみませんか。私が森の外に結界を張りますので万が一魔獣達が森の外に出ても被害は最小限に抑えられると思います。私が死なない限りは。」
ノヴァの提案に僕と辺境伯様は驚く。
辺境伯様は国から許可を取って実験しようと告げるノヴァに驚いていて、僕は最後のノヴァの死を連想させるような言葉に驚いた。
「僕を置いて死なせるわけない。」
「あぁ。分かっている。もしもの話だったが悪かった。」
ちょっと怒りが沸々と湧いてきた僕がノヴァを睨みながら言うとノヴァは困ったように、でもどこか嬉しそうに笑い謝ったのでまだ怒りは完全には収まらないけれど、これ以上責めるような言葉は言わないように口を閉じた。
そんな僕のコメカミにちゅっとキスをおとすノヴァにきゅんっとしながらも、汗臭いかもしれないからやめて欲しいとも思う複雑な僕の心。
うん。でもやっぱり嬉しいが勝つな。
「私も知りたいところではあるが…お前達は今新婚旅行中では?」
「「……大丈夫です。」」
辺境伯様が心配のお顔で僕達に言った言葉に僕もノヴァも内心「あ…」と思ったけれど、問題ないと宣言した。
だって今の僕達は魔獣達が森を出てくるのかが気になりすぎている。
解明しないではいられない好奇心が元気に動き回っているのだ。
「お前達が良いならこちらとしてはありがたい申出だ。だが許可を得るのに最速でも一ヶ月はかかるぞ。」
「そこはアーバスノイヤー家に頼ります。」
「あぁ…あいつならばすぐに動き結果を出すだろうな。」
辺境伯様の心配にノヴァがきっぱりととーさま達を頼ると告げると、辺境伯様も納得して頷かれたが若干顔を引きつらせているような…。
ノヴァのことも息子のように思っているとーさまにこの事を教えたら喜びそうだからこっそり教えてあげよーっと企みながらノヴァがさっそくとーさまに魔法送書を送るのを見守った。
483
お気に入りに追加
3,064
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた。
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエルがなんだかんだあって、兄達や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑でハチャメチャな毎日に奮闘するノエル・クーレルの物語です。
若干のR表現の際には※をつけさせて頂きます。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、改稿が終わり次第、完結までの展開を書き始める可能性があります。長い目で見ていただけると幸いです。
2024/11/12
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。
花かつお
BL
気づけば男しかいない国の高位貴族に転生した僕は、成長すると、その国の王妃となり、この世界では人間の体に魔力が存在しており、その魔力により男でも子供が授かるのだが、僕と夫となる王とは物凄く魔力相性が良くなく中々、子供が出来ない。それでも諦めず努力したら、ついに妊娠したその時に何と!?まさか前世で読んだBl小説『シークレット・ガーデン~カッコウの庭~』の恋人に捨てられた儚げ不憫受け主人公を助けるヒーローが自分の夫であると気づいた。そして主人公の元クズ恋人の前で主人公が自分の子供を身ごもったと宣言してる所に遭遇。あの小説の通りなら、自分は当て馬悪役王妃として断罪されてしまう話だったと思い出した僕は、小説の話から逃げる為に地方貴族に下賜される事を望み王宮から脱出をするのだった。
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる