上 下
226 / 328
第4章

証拠です。

しおりを挟む

夕飯を終えて片付けも終えると、気が付いたらコルダの姿は消えていて、ヨハネスが暗くなってきたからお家に入りましょうと言うので家の中へ。


部屋数が少ないので

僕とノヴァ

ヨハネスとコルダとガンナー

ホルス様とオーレさんとルゲイエさん


で一部屋を使うことに。






夕飯はコルダが獲って来たパオだけでお腹いっぱいになったので、明日の朝食ではガンナーとヨハネスが獲って来てくれた獲物と木の実を食べる。

こんなサバイバルな感じは前世含め初めてなので正直楽しい。


僕は狩りに出てないけど…。






「ルナイス。眠れそうか?」


「うん。ノヴァのおかげで寝れる。」


環境が変わるとなかなか眠れない僕をノヴァが抱きしめてくれて家から持ってきていた毛布でくるんでくれるので、余裕で睡魔が襲って来てます。

伴侶というより、親子っぽいとは僕も思うけれど…僕もノヴァもガツガツヤるぜ!というよりはイチャイチャしてくっついていたいタイプ。



気が付いたらぴったりとノヴァにくっついていて、ノヴァも僕が近くにいるのにあんまり離れているとすごく自然に僕を横に移動させてる。

仲が良いねと言って笑ってくれる人もいれば、どこでもイチャイチャするなと文句を言う人もいる。



ちなみによく文句を言ってくるのはお馴染みのヒュー様だ。










そんなこんなで、ぴったりとくっついて眠った翌日。


ハビット辺境伯領からは全ての妖精が姿を消した。

昨夜からほとんどの妖精が枯れた土地の方へ移動して、今朝完璧に領から妖精が去ったのだ。



そして今日はカンカン照りのお天気。

さっそく土地は干上がり始め、植物達は元気をなくしている。




すぐにハビット辺境伯や領民達が水魔法を展開して地を潤すが、妖精が完全にいなくなった領は少しずつ魔素が薄くなっており昨日までのような威力が出ない。

皆困惑した様子で、中には魔力を多く使い過ぎてしまい倒れた領民もいるみたい。


後で回復薬ポーション持って行くから我慢してねぇ。







慌ただしく動き回るハビット辺境伯達を領地の外の木の上からのんびり観察をして、夕刻。


僕達はハビット辺境伯の屋敷の扉を叩いた。






「あ…貴方達一体何をなさったの!?倒れた民もいるのですよ!?こんなことが許されると思っておいでですか!!」


応接室に通されて直ぐにやってきたハビット辺境伯は鬼の形相で声を荒げた。



「証拠もないのに我々を疑うのですか。」

ノヴァが視線を鋭くしながらハビット辺境伯に凄む。



「っ証拠もなにも!貴方達が来た翌日にこのようなことになったのですよ!!原因は貴方達しか考えられないでしょう!」


ハビット辺境伯は一瞬怯むも、再び大きな声でノヴァに食って掛かる。

僕は大きな声や音が苦手なのでヨハネスがすっと僕の耳を塞いでくれている。







「遅かれ早かれ、私達が来ずともこのような状況になっていたと思いますよ。原因はこの土地から妖精が消えたというだけのことです。」



「そ…そんなはずないわ…妖精がいないだけで…こんな…」



ノヴァの言葉にハビット辺境伯は愕然とした様子で僕達の対面のソファに座り込む。




「それで?ハビット辺境伯はどのような証拠を提示してくれるのですか?」



衝撃を受けているところ申し訳ないですが、僕は一刻も早くこの面倒な状況から脱却したいので話を進めます。

ヨハネスが凄く微妙な表情で見てくるけど僕気づいてません。









「…ハビット家に代々受け継がれてきた史書よ。どうやってこの領地を豊かにしてきたかが書かれているわ。」


ハビット辺境伯は疲れた様子でひとつの本を僕達に差し出した。


ノヴァがパラパラ―と読んで、しばらく目を閉じた後僕達に分かりやすく掻い摘んで史書の内容を話してくれた。




ノヴァから聞いたハビット家の史書の始まりは3代目から。

水路を確保したり、地を耕して植物を植えたりと試行錯誤しながら領民と力を合わせて土地を守り発展させてきたことがよく分かる本で、こういう時はこうすると良いなどという助言も記されており歴代当主たちの領地への熱い思いが感じ取れる。






「ハビット辺境伯様。これが王家の書庫にあった西の地にまつわる史書です。」


ヨハネスが机の上に置いた、たまに届けてもらった王家保管の史書をハビット辺境伯が手に取り読み進めていく間僕達は静かにお茶を飲んで待つ。









しばらくして重たい息を吐き出したハビット辺境伯がそっと本を閉じ、机に置いた。




「…最後に押されていた魔判は確かにハビット家のものと王家のもので間違いない…」


項垂れてぼそりと呟くハビット辺境伯の気持ちは僕には分からない。


尊敬していた先祖が妖精族の力を借りていたことへの失望なのか…それとも今まで信じていたハビット家当主の誇りの喪失か…





「妖精族の功績を我が物顔で…私は…私達は…」


ついに顔を手で覆ったハビット辺境伯の声は震えている。







「ハビット辺境伯様。初めに申し上げた通り、僕達はなにも妖精族だけの力でこの地が豊かになったとは言っていません。妖精族達の力で地が潤い緑豊かになりましたがその地を整えてきたのはハビット辺境伯達です。この地を良いものにするため妖精族に協力を申し出たのは初代ハビット辺境伯様であり、彼がそうしなければこの地は今も枯れ果てた生き物の住めない地だったでしょう。そしてこの地を他国から守って来たのは間違いなくハビット辺境伯家です。」


別に励ますつもりで言ったんじゃない。

何度も言うように僕達は最初から妖精族の存在を認め共存を目指してもらいたいだけで、ハビット辺境伯が西の地を豊かにしたわけではないとは言っていないのだ。



事実を言っているだけなので、うるうるきらきらした目で見つめてくるのは本当に辞めてもらいたい。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。 それが僕。 この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。 だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。 僕は断罪される側だ。 まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。 途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。 神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?   ※  ※  ※  ※  ※  ※ ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。 男性妊娠の描写があります。 誤字脱字等があればお知らせください。 必要なタグがあれば付け足して行きます。 総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・

相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・ 「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」 「…は?」 ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

処理中です...