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第4章
ハビット辺境伯
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西に到着してまず思ったのは
『あー…歓迎されてないなぁ』だった。
西門は無事通れたんだけど、領民が向けて来る視線は決していいものではない。
どこの奴だ。
貴族だ。
何しに来た。
そんな声があちこちから聞こえてくる。
公爵の息子として生きてきた僕に害をなそうものなら、結構な刑が下るのだけど…何か僕前世から悪感情向けられやすいんだよね。
「ルナイス。」
「大丈夫だよ。興味ないし。」
ノヴァが心配してくれるけど、昔ほど気にならなくなったし考え込まなくなった。
疲れるのは疲れるんだけど。
「まずはハビット辺境伯の所に行くんだよね?初めて会うなぁ。ノヴァは会ったことある?」
「ない。ハビット辺境伯は外者嫌いで有名だからな。王都の社交界にも色々理由つけて参加したことないって話だそうだ。」
お互い初めましての相手に会うのって緊張するよね。
しかも相手は全然歓迎してなくて、寧ろ『来んな!』って言ってたらしいし。
そこをとーさまがあんまり調子乗ってるとお前の領地燃やすぞって脅して黙らせたとかなんとか…。
まぁこっちだって会わなくていいなら会いたくないし、そのまま騒いでくれててもよかったのに…とも思わないでもないけど。
西門を通ってからしばらく
やっと目的のハビット辺境伯の屋敷に辿り着いた。
辿り着いたけど、門が開かないみたい。
面会全力拒否じゃん。
「ノヴァ。どうする?」
どうする?何て聞きながら、もうこんなん回れ右して観光してよくない?って思ってる。
たぶんノヴァも本心では同じだと思うけど、ここで僕達が諦めたら余計ハビット辺境伯の暴走が激しくなりそうだからそれはできないってことは分かってる。
どうしようかなーっと思っていると不意に横に立つノヴァが手を前に出した。
そして次の瞬間には門が炎に包まれた。
門の素材が木だったからすごくよく燃えてる。
炎の勢いからノヴァが凄く苛立ったことが伺える。
「水砲!!お!お前ら!!!こんなことして許されるとお思いなの!?」
門の中でわーわー使用人らしき人達が水をかけたり大忙しで動いてるのを静観してたら、屋敷の奥から息を切らせた女性、恐らくハビット辺境伯が走って来て、大規模な水魔法を炎に放ち鎮火させ、そして静観していた僕達をびしっと指さす。
「許されるでしょ?」
「あぁ。許されるな。寧ろハビット辺境伯の方が罰を受けるのでは?」
横に立つノヴァに許されるよね?って首を傾げて聞いてみたら大きく頷かれて、そうだよねって頷く。
だってこの世界は身分社会。
確かに今の僕達は男爵位だけど、実家は公爵だし、ノヴァは国お抱えの優秀な魔法使いだから、今のどっちが悪い?ってなったら100%僕達の勝訴だと思う。
恐らくハビット辺境伯は長いこと王都で社交界に出てないし、ていうか西から出てないし、アーナンダ国の情勢が分かってないんだろうな。
西に居れば一番偉いのはハビット辺境伯だし。
「ルナイス。此処は妖精が多いな。さっきから五月蠅くてかなわぬ。」
どこからかやって来たホルス様が僕の横に現れて、妖精が乗ってたのか肩をぱっぱと払う仕草を見せる。
残念ながら僕には妖精が見えないけれど、よっぽど多いらしい。
ホルス様が首をぶんぶん振って低く唸り出すくらいに纏わり着かれているみたい。
「そ、その者は今、妖精と申したか?こ…此処には人族しか居らぬぞ!適当なことを言うな!!」
「人しか居なかったら貴女はそんな魔法は使えないし、自然に豊かな実はなりません。」
ホルス様に向かって声を荒げるハビット辺境伯につい腹が立って『そんなことも知らないんですか?』って感じで言ったら、しっかり伝わったみたいで彼女の顔が真っ赤に茹で上がる。
「ん?なるほど…そこの者、妖精共からの伝言だ。『未熟な小娘よ。いい加減我等が育てた実を無遠慮に取っていくのはやめよ。ていうか、お前ら何年もふざけんなよ。そろそろ痛い目に合わせるぞ。』とのことだ。」
ホルス様が妖精からの伝言というのを口にしたのだが…妖精予想外に口が悪い。
もしかしたら、口が悪くなるほど此処に住まう妖精達の鬱憤が溜まっているのかもしれない。
「誰が未熟な小娘ですって!?私は辺境伯として長年このハビット領を守ってきたのですよ!!許可なく住まう妖精共が生意気な!!」
はじめましての様子からハビット辺境伯が素直に妖精の言葉を聞き入れるとは思わなかったけど…うん。
これはたぶんプチ戦争の開幕だね。
__________
長い事更新が空きましてすみません。
やっと設定など整理できましたので、これからまた徐々に更新頑張ります!
近々短編小説を公開する予定ですのでよければそちらもご覧下さい。
『あー…歓迎されてないなぁ』だった。
西門は無事通れたんだけど、領民が向けて来る視線は決していいものではない。
どこの奴だ。
貴族だ。
何しに来た。
そんな声があちこちから聞こえてくる。
公爵の息子として生きてきた僕に害をなそうものなら、結構な刑が下るのだけど…何か僕前世から悪感情向けられやすいんだよね。
「ルナイス。」
「大丈夫だよ。興味ないし。」
ノヴァが心配してくれるけど、昔ほど気にならなくなったし考え込まなくなった。
疲れるのは疲れるんだけど。
「まずはハビット辺境伯の所に行くんだよね?初めて会うなぁ。ノヴァは会ったことある?」
「ない。ハビット辺境伯は外者嫌いで有名だからな。王都の社交界にも色々理由つけて参加したことないって話だそうだ。」
お互い初めましての相手に会うのって緊張するよね。
しかも相手は全然歓迎してなくて、寧ろ『来んな!』って言ってたらしいし。
そこをとーさまがあんまり調子乗ってるとお前の領地燃やすぞって脅して黙らせたとかなんとか…。
まぁこっちだって会わなくていいなら会いたくないし、そのまま騒いでくれててもよかったのに…とも思わないでもないけど。
西門を通ってからしばらく
やっと目的のハビット辺境伯の屋敷に辿り着いた。
辿り着いたけど、門が開かないみたい。
面会全力拒否じゃん。
「ノヴァ。どうする?」
どうする?何て聞きながら、もうこんなん回れ右して観光してよくない?って思ってる。
たぶんノヴァも本心では同じだと思うけど、ここで僕達が諦めたら余計ハビット辺境伯の暴走が激しくなりそうだからそれはできないってことは分かってる。
どうしようかなーっと思っていると不意に横に立つノヴァが手を前に出した。
そして次の瞬間には門が炎に包まれた。
門の素材が木だったからすごくよく燃えてる。
炎の勢いからノヴァが凄く苛立ったことが伺える。
「水砲!!お!お前ら!!!こんなことして許されるとお思いなの!?」
門の中でわーわー使用人らしき人達が水をかけたり大忙しで動いてるのを静観してたら、屋敷の奥から息を切らせた女性、恐らくハビット辺境伯が走って来て、大規模な水魔法を炎に放ち鎮火させ、そして静観していた僕達をびしっと指さす。
「許されるでしょ?」
「あぁ。許されるな。寧ろハビット辺境伯の方が罰を受けるのでは?」
横に立つノヴァに許されるよね?って首を傾げて聞いてみたら大きく頷かれて、そうだよねって頷く。
だってこの世界は身分社会。
確かに今の僕達は男爵位だけど、実家は公爵だし、ノヴァは国お抱えの優秀な魔法使いだから、今のどっちが悪い?ってなったら100%僕達の勝訴だと思う。
恐らくハビット辺境伯は長いこと王都で社交界に出てないし、ていうか西から出てないし、アーナンダ国の情勢が分かってないんだろうな。
西に居れば一番偉いのはハビット辺境伯だし。
「ルナイス。此処は妖精が多いな。さっきから五月蠅くてかなわぬ。」
どこからかやって来たホルス様が僕の横に現れて、妖精が乗ってたのか肩をぱっぱと払う仕草を見せる。
残念ながら僕には妖精が見えないけれど、よっぽど多いらしい。
ホルス様が首をぶんぶん振って低く唸り出すくらいに纏わり着かれているみたい。
「そ、その者は今、妖精と申したか?こ…此処には人族しか居らぬぞ!適当なことを言うな!!」
「人しか居なかったら貴女はそんな魔法は使えないし、自然に豊かな実はなりません。」
ホルス様に向かって声を荒げるハビット辺境伯につい腹が立って『そんなことも知らないんですか?』って感じで言ったら、しっかり伝わったみたいで彼女の顔が真っ赤に茹で上がる。
「ん?なるほど…そこの者、妖精共からの伝言だ。『未熟な小娘よ。いい加減我等が育てた実を無遠慮に取っていくのはやめよ。ていうか、お前ら何年もふざけんなよ。そろそろ痛い目に合わせるぞ。』とのことだ。」
ホルス様が妖精からの伝言というのを口にしたのだが…妖精予想外に口が悪い。
もしかしたら、口が悪くなるほど此処に住まう妖精達の鬱憤が溜まっているのかもしれない。
「誰が未熟な小娘ですって!?私は辺境伯として長年このハビット領を守ってきたのですよ!!許可なく住まう妖精共が生意気な!!」
はじめましての様子からハビット辺境伯が素直に妖精の言葉を聞き入れるとは思わなかったけど…うん。
これはたぶんプチ戦争の開幕だね。
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長い事更新が空きましてすみません。
やっと設定など整理できましたので、これからまた徐々に更新頑張ります!
近々短編小説を公開する予定ですのでよければそちらもご覧下さい。
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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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