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第4章
変わったことその壱。にぃ様。
しおりを挟む僕がアーバスノイヤー家の家業を一部継ぎ、にぃ様の部下になります宣言から3年。
まだ少し寒い2月2日
無事最終上学年となった。
今日までに本当に色んなことがあった。
まずにぃ様。
21歳で当主の勉強期間を終え、当主の仕事を補佐する当主補佐になった。
重要性の高い仕事や最終決定はとーさまが。
その他の細かいこと等はにぃ様が。
そしてにぃ様は近衛騎士団の第2部隊部隊長にもなった。
第2部隊は主に魔獣討伐と魔獣被害にあった地域の復興支援に務める部隊なので、領地を離れることが多い。
そんな中で当主の仕事も熟すのだからとんでもない仕事量だ。
これをとーさまは一人で熟していたのかっと毎回驚くし、改めて尊敬した。
そして去年、ついににぃ様に婚約者が…
ナイ・オルフェウス様
オルフェウス伯爵家のご令嬢であり、歌うことで解呪するという能力を持つ御仁である。
どうやらアンデット系の討伐の際に、解呪の為同行していたナイ様が全く臆することなくバッサバッサと敵を切り捨てるにぃ様に惚れ猛アタックされていたのだとか。
始めはすげなく接していたにぃ様にナイ様は僕の所へ来た。
仲良くなる助言が欲しいときちんとお伺いのお手紙を出し、僕に会いに来たのだけど、それを知ったにぃ様は激怒。
『ルナイスを使って私に近づこうと企むなど許さん!』
と言って正式な手順で訪れたナイ様を追い払ってしまったのだ。
さすがにこれにはナイ様も傷ついて泣きながら帰って行かれた。
僕もあんまりナイ様を知らなかったのであーあくらいに思っていたのだけど、きちんと伺いを立てて僕が良いですよって返事をして来たお客様を雑に返してしまったので、僕はにぃ様と一緒にお茶をしながらちょっと叱ったのだ。
『彼女はきちんと許可を得て来ていたのにあのように返されては僕は面目が立ちません。』
っと。
それを聞いたにぃ様が、謝罪と3人でのお茶会のお誘いの手紙を出し、嫌わずにいてくれたナイ様は再びアーバスノイヤー家に訪れてくれたのだ。
そこでナイ様は決して僕を利用して近づくつもりはなく、純粋ににぃ様の趣味や好きなものなど話のきっかけとなることを僕に教えてもらいたかったのだということと、ナイ様は小さい頃の僕の生誕祭で容赦なくお爺様にボタンを投げ付ける様子を見てから僕を恋愛とは違った意味で好いてくれているのだと言った。
それから何度か何故か僕も含めた3人でのお茶会を開催し、婚約に至ったのだが…
僕は知っている。
婚約を約束する両家の顔合わせの場でにぃ様が
『私が一番に守り優先するのはルナイスです。それでもいいのですか。』
と言って
『重々承知しております。私が一番に優先するのはアドルファス様ですが同じことを貴方に求めていませんし、アドルファス様とルナイス様のその兄弟愛が私は大好物なのです。無問題です。』
とナイ様が答えたことを。
そしてそんな癖の強い2人に両家の親が渋い顔をしていたことも知っている。
にぃ様の発言は有事の際、伴侶よりも僕を守るのために動くという事でそんな発言を当たり前にオルフェウス伯爵は良く思わない。
しかも一度きちんと招待を受けて尋ねた娘をこっぴどく追い返している。
印象は下の下。最悪だ。
そしてナイ様の発言。
ちょっと『大好物』がよく分からないけれどアウトな気がするのを両家が感じ取った。
とーさまは
「本当にこれでいいのですか?」と念押ししたし、オルフェウス伯爵もナイ様に「本当にこれでいいのか?」と確認したが、ナイ様が惚れた方の負けですわ!とはっきり言ったことで無事?婚約が成立したのだ。
ナイ様やオルフェウス伯爵には悪いけど、こういう時でも僕を優先してくれるにぃ様が僕は大好きだ。
だけど僕はもう一つ知ってる。
これはナイ様にも伝えたのだけど
にぃ様はちゃんとナイ様に好意を抱いているってこと。
『アンデットの呪いを一瞬で解呪した強者がいた。』
そう言って楽しそうに言っていたにぃ様のこともナイ様にはこっそりと教えておいた。
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