王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第3章

先輩怖い人達に囲まれる

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怖い顔をした強そう(実際強い)な人達に囲まれてユーリス先輩はすっかり怯えてしまっている。


僕に強気に迫ってきた時とはあまりに違う姿に微妙な気持ちになるけれど、先輩も上学年とは言えまだ保護される子供。
こんな怖いオーラ纏った大人達に囲まれたらそりゃ萎縮するよなーっとも思う。




「君は何故剣を所持している。」


「こ、これは!…これは模擬刀で…訓練場から…持ってきまし、た。」



ヒュー様の問いに答える先輩の声は段々小さくなっていくが、どうやら許可なく持ち出してきたようだ。

いけないことだと分かっているから、声も小さくなっているのだろう。






「許可なく学園の物を持ち出し、挙句それを無防備な人へ向かって振り上げた。間違いないか。」


「っ…でも!でもそいつはあの時全力を出してなかった!!あんな勝負は納得できない!!」


「言い訳を言えとは言った覚えがない。」



ヒュー様の問いかけに答えず、自分の主張を始めた先輩にヒュー様が語気を強めると先輩は言葉を詰まらせ、何故か僕をギン!と睨みつける。

にぃ様がお隣ですごく手を強く握りしめていることから大分苛立っているのだと分かるけれど、学園で今は部外者になるにぃ様が生徒に手を挙げることは絶対に許されない。
例え相手に殴られるだけの理由があってもここでは生徒へ危害を加えることは絶対に許されないのだ。







「本気のルナイスと戦いたいと言うのなら正式な場を設けてはいかがですか?もちろん互いに誓約書を交わして。」


アイコンタクトで殿下と頷き合い、とーさまに言葉で発言の許可を得たノヴァが出した提案ににぃ様も僕も他の皆も驚いて思わずノヴァを二度見してしまう。


こういった場でノヴァが発言をするのは珍しいと思ったが、まさかの提案に思わずじっとノヴァを凝視。






「誓約書の内容はもちろん、万が一相手が死亡しても罪には問われないという誓約書です。」


淡々と告げたノヴァの言葉に殿下ととーさまとヒュー様の顔が歪む。

にぃ様だけが「良い案だ」と頷いている。
否、何気なくヨハネスとガンナーも頷いている。




「し…ぼう?」


「ルナイスが全力で戦えないのは相手を殺してはいけないから。そんなルナイスと本気で戦いたいのであれば死ぬ覚悟がある、ということでしょう?」



無表情のままコテンと首を傾げるノヴァはその美貌も相まってなかなかにホラー。

ユーリス先輩もそんなノヴァを見て顔真っ青。






「ルナイス様はどう思われますか?」


外だからノヴァは僕をルナイス様と呼ぶし、言葉遣いも丁寧なのが毎回面白いなって思う。

人の来ない森で小さい頃から一人で暮らしていたノヴァの素の口調は結構荒っぽいことを知っている。
二人きりの時はそれで喋るから、そのギャップがすごく好き。





「んー…すっごく複雑な気持ちだけど、先輩が誓約書にサインしてまで僕と戦いたいってことなら…僕はかまいません。」

最後にニコっと浮かべた笑みは先輩へ向けて。


ひぃ!何て悲鳴を上げるのはよしてほしい。
まるで僕が殺人鬼やらサイコパスやらみたいじゃない。





「で?…貴方は?」


「も…もういいです…すみませんでした。」


情けなくも降参した先輩にほっと息をつく。

此処でそれでも!何て選択をする愚かな人でなくて本当によかった。



ちょっと熱すぎてうざくてお馬鹿な先輩だけど、実力のある人だし、失うには惜しい人だと思うから。










先輩は僕が闇魔法を使って、影の中に取り込まれていたことは理解していない様子だったので記憶を消すことはなくヨハネスに連れられて学園長の元へ送られた。



やっとご帰宅ってことで殿下達に挨拶をしたが、その時に殿下から「やはり君もアーバスノイヤーの子だな。」と言われましたが…どういう意味なのかは聞かないでおきますね。





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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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