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第3章

最後の走者は荷が重い。

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その後も順調に一位になったり二位になったりと上位をキープ。





そして、僕の番。

実は僕…最後の走者なんです。


騎士を目指している子がするべきだよって訴えたけれど、もう誰も耳を傾けてくれなかった。




最後なんて目立つ。

僕は目立ちたくないのに…





そうぶつぶつ文句を言っていたら

『お前は何番目に走っても結局目立つ。ぐちぐち言わないでちゃっちゃと走ればいいだろう。』

とテトラ君に言われた。



『うん。ルナイス様は何番目でも目立つと僕も思いますよ?』


何てオスカル君にも言われてしまったので、もう諦めた。






確かに今まで社交の場に出てこなかったアーバスノイヤー家の次男が走るとなれば、保護者でもない人もいるような今日の観客層だ…嫌でも注目されてしまうだろう。


そう思ってため息を吐いた僕に二人が『絶対分かってないよね』と話していたのを僕は知らない。







僕の前に走っていた子と手を合わせた瞬間、僕は重力魔法を使って自分の周りの重力を無くした。

するとふわっと体が浮いたのでそこから浮遊魔法と風魔法を使って一気に前にいた人達を抜かした。


オリヴァーに付き合ってもらって練習しているうちに風魔法でちょっとした追い風を起こすことでただ浮遊魔法で進むより早くなることに気が付き、これで徒競走を駆け抜けることにしたんだけど…これが結構疲れる。



僕は闇魔法の適合者であって、重力魔法も浮遊魔法も風魔法も闇魔法を扱うよりも倍の魔力と集中力が必要になる。

しかも風魔法は生活に使えるレベルに毛が生えた程度にしか扱えない。




『ルナイス・アーバスノイヤー様はやい!はやいです!!どんどん追い抜いて追い抜いて追い抜いてーーーー…ゴール!!見事1着を勝ち取りましたァ!!』



ゴールの場所に辿り着いた僕は汗たらたら、息きれきれ。

すごく集中してたから外野の声なんて気にしてなかったけど、何か司会の人がすごく僕について実況してた気がする…。




気の所為とは思えないほどにあらゆる方向から視線を向けられて慌てて気配を薄めて足ってクラスメイトの所まで行くと、クラスメイト達から『さすがです!』『いくつ魔法展開したのですか!?』などなど、普段では考えられないくらい声をかけられる。



どうやら皆1位になったことに興奮しているらしい。






苦笑いで興奮しているクラスメイト達を躱して急いでテトラ君とオスカル君がいる所に移動した。




「な?」

「ね?」


テトラ君とオスカル君の影に隠れる僕にかけられた言葉に顔を顰める。



「「それより」」



「何の魔法を使った?」

「いくつ魔法展開したのですか?」





隠れる僕に顔を寄せて先程のクラスメイト達と同じような質問をしてくる2人にう"ーっとなって、ドボンしたい気持ちになるけど、すごく我慢した。


でも向けられるいくつもの視線が恥ずかしくて、不愉快でんーんー唸っていると、しゅんっと近くに人の気配。


「「っ!!」」


「ルナイス。」



急に現れたノヴァにテトラ君とオスカル君が息を飲み身構えるけれど、ノヴァはそんな2人を気にせず僕の頬に手を添えて心配そうに僕の顔を覗き込んだ。



「魔力が乱れてる。おいで。」









______

プチ補足

アヴィオをスタートの言葉にしていますがイタリア語で『avvio』です。
同じアヴィオという言葉で『航空』という意味があるようですが、ここでは開始!的な感じで使わせてもらってます。
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