王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

文字の大きさ
上 下
141 / 393
第2章

ルナイス2歳、ノヴァ14歳のとある日【番外編】

しおりを挟む


アーバスノイヤー家に呼ばれ、屋敷に辿り着いたが当主が急用の為しばらく待っていて欲しいと言われ折角だからと綺麗に整えられた庭を見て回ることにした。




アーバスノイヤー家の庭は広範囲が短く整えられた芝生の庭と、遊具の置かれた庭、色とりどりの花が咲き誇る庭、噴水のある庭の4つの庭がある。

今は亡き奥様がこれから生まれてくる我が子の為にと手を入れた美しく優しい庭だ。





素晴らしいこの庭を見てみたいと手紙を送る者もいた様だが、奥様が亡くなってからは他者がこの庭を歩くことは許されていない。

どうやら奥様が大切に育てた庭を汚されたくないという当主の思いと、時たま庭で遊ぶルナイスの邪魔をする者を許せないというアドルファス様の思いからそうなったようだ。




私は昔からの知り合いで、当主が言うのは家族のような存在だから庭を歩いても良いと許可を頂いている。

美しいと思うものを眺める時間はとても有意義なものであると思うので、有難くお言葉に甘えて偶に散歩をさせてもらっている。












しばらく歩いているとヘレナさんがキョロキョロとしながら焦った様子で歩き回っている所へ遭遇した。


「どうされましたか?」


「あぁ!ノヴァ様!坊っちゃまが居ないのです!先程までここで遊んでおられましたのに!!」



声を掛けると涙目になっているヘレナさんがそう言い力を貸してくれと頼んできた。


取り乱すヘレナさんを宥めて少し周りの魔力を探るとすぐによく知る魔力を近くに見つけた。





ヘレナさんと共に魔力の感じる場所まで行くと声を上げそうになったヘレナさんの口を魔法で閉じさせた。



辿り着いた場所にあったのはケテに包まれて穏やかな表情で眠るルナイスの姿であった。






ケテというのは精霊獣で、滅多に人前に姿を現すことは無く、個体数も少ないと言われている珍獣。

とても利口で魔力も戦闘力も強い生き物だ。
個体数が少ないと言われているが、只確認できていないだけで把握している数よりももっと存在している可能性はある。



種族関係なく弱い幼子を守ることから子供の安全を祈願する物に描かれることの多い獣である。





普段は温厚な性格の獣であるが、子供や自分を害す人間には容赦がなく攻撃をしてくるので注意が必要だ。




少しずつそっと近づいていくと私達の存在に気が付いたケテが片目を開いてこちらに視線を向けてきた。

怒ってはいないが、こちらを警戒している様子。





「ケテ…その子は此処の子供であり、彼女はその子の乳母だ。行方の分からなくなっていたその子を探していた。私はその子の不安定な魔力を安定させるため呼ばれているノヴァというものだ。」

許されるギリギリとラインまで近づいてからケテへ自分達がルナイスにとってどういう人物であるかを説明する。


賢いケテは人の言葉を理解するので、きちんと話し、ケテが納得してくれれば何事もなく子を返してくれる。






しかし、目の前のケテはしばらく喉をキュルキュルと鳴らし私達とルナイスを交互に見比べ、そして長くふさふさの尻尾を更にルナイスの体に巻き付け自身の方へと寄せた。

反応からして、私達に警戒心を強めたわけではなさそうだが…



それにケテのあのキュルキュルという鳴き声は寂しい時や、甘えている時なんかに出す鳴き声のはず。





もしかして…ケテはルナイスと離れたくない?





「んぅ…ふわ…ふわ……きもひぃ。」

どうすればっと悩んでいるとケテに包まれて眠るルナイスがふっと寝言を呟いた。

涎を垂らして本当に気持ちよさそうにケテの毛に埋まり眠るルナイスを見て、私もヘレナさんもルナイスが起きるまではこのままでっとその場で待つことにした。





ヘレナさんには自分が見ているから戻ってもいいと言われたが、何となく目の前の平和で穏やかな光景を見ていたくてその場に留まった。


















どれくらい経ったか、グググーっと伸びをしたルナイスは目を覚ますと自分を包み込むケテの毛にびっくりして、そしてケテと見つめあい、「おはよ~」と呑気に挨拶をした。

すぐにそんな光景を見守っていた私とヘレナさんに気が付いてあわあわしていたのは面白かった。




その後ケテはしばらくの間アーバスノイヤー家の近くに滞在し、そしてその後自身の子が産まれるから人里からは離れると言って去って行ってしまった。


ちなみにケテの言葉を理解し教えてくれたのはルナイスで、どうしてケテの思いが伝わったのかは本人にも分からないようだが、もしかしてケテは気に入った相手に思念を伝えることができるのではないだろうか?




またケテと会う機会があれば、ぜひ確かめてみたいと思った。









※ケテ…雪豹に似た精霊獣。雪豹の倍でかく、尻尾は長毛。
(作者の空想の生き物です)



____________

【雑談】

そういえば今何ページ目なんだろう?と思って見てみたらここで140Pでした。

いつの間にやら100Pを超えてました(笑)


2章が長い。
戦闘シーンの表現が難しい。

早くほのぼの甘々なお話を描きたいと思い、ちょっと寄り道。



しおりを挟む
【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
感想 41

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~

狼蝶
BL
――『恥を知れ!』 婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。 小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。 おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。 「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい! そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

処理中です...