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第2章

頼もしい訪問者

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夕食を食べ終えて、学園から出されている課題を済まし、よし寝るぞ!と寝る時の服に着替えた所で扉がノックされた。


はいっと返事をしてすぐ扉が開いたのでとーさまかにぃ様だなっと扉の方へ足を進めると、やっぱり顔を覗かせたのはとーさまとにぃ様だった。

そしてその後ろには予想外にノヴァとオリヴァーが居て、扉の方へ進めていた足をピタリと止め固まる。



慌てて後ろへ下がって物陰に体を隠し顔だけを出した僕を皆が不思議そうに見るけれど、扉を開いてくれているヨハネスは僕の気持ちを分かってくれているのか苦笑い。



「ルナイス様、こちらを。」

隠れる僕の真横にシュッと現れたコルダがポンチョ型の長羽織を差し出してくれたので慌ててそれを身に着ければ、どうして僕が物陰に体を隠したのか理解したとーさま達は申し訳ないと謝ってくれたけど、出来れば見なかったことにしてくれると助かる。


汗っかきな僕は毛布がふかふかな分、寝着ねまきはシルク素材で、鎖骨が出てて肘までの長さの袖のトップスと太腿半分くらいの長さのパンツで通気性を重視したスタイルなのだ。



しかも露出部分が多いし、これを用意してくれたばぁやの趣味で裾にレースがあしらわれている。

さすがに9歳になった僕はこの姿でノヴァやオリヴァーと会うことに羞恥心を抱くのだ。
とーさまやにぃ様にもちょっとあんまり見られたくない。




ドストライクなホルス様に見られるのも恥ずかしすぎるのだけど、初日にもじもじしていた僕に『動きやすそうでいいではないか。我もできれば動きやすい衣服をお願いしたい。』と言ってくれたので実はホルス様もお揃いのシルク服なのだ。

しかしムッチリ筋肉のホルス様が僕と同じデザインの寝着ねまきは絵面がやばいので、上は形は僕と一緒だけどレースのついてないもので、パンツも膝までの長さになっている。
もちろんパンツのレースもホルス様のものにはついていない。



僕もレースのついていないものがいいけど、ばぁやが用意してくれたものだから…着れなくなるまでは着ようと思っている。


決して僕の趣味ではないことを声を大にして言わせて欲しい。




「お待たせしました。どうぞお掛け下さい。」

さっきまでの出来事はなかったことにして、しれっととーさま達をソファを勧める。


とーさま達も僕の意図を読み取り、何事もなかったかのようにソファに掛けてくれた。





「ルナイス、夢の中で夢魔の気配を探ると聞いた。」

メルナとワイアットが用意してくれたホットティーを一口飲み、とーさまがさっそく本題を話される。


部屋に急遽用意されたホルス様専用のベットの上でくつろぎながらこちらを見ていたホルス様へ視線をむければにっと尊い笑みが…。

思わずぽっと頬を赤らめた僕ににぃ様からゴホンと咳払いをされてはっと我に返り姿勢を正した。





「昼間、ホルス様とお話してて昔読んだ本の挿絵によく夢を見せている相手の近くに夢魔が描かれていて…もしかしたら夢の中に夢魔が居るのかもっと思ったんです。居た場合はとりあえず気づかないふりをしてとーさま達にご報告しようと思っていました。」


結局夢の中で夢魔を見つけたとしても、夢魔と戦って勝てるイメージが湧かなかったのでその時は気づいてないですよーってしておいてとーさま達に頼ろうと思っていたのだ。

だからそんな危なくないですっと言えば、皆眉間に皺をよせ渋いお顔で僕を見てきた。





「ルナイスが気づいたことに向こうが気づく可能性がある。その場合夢の中に閉じ込められるかもしれないし、戦闘になってルナイスが傷つけられるかもしれない。」


「でも、どうせ毎日悪夢見せられるんだし遅かれ早かれだと思います。」



ノヴァの言葉に反論すればノヴァは渋い顔のまま黙ってしまった。

そう。気づきたくなくてもその内気が付いてしまう可能性だってある。


どっちにしても僕は今、危険なわけだ。





「悪夢だろうが何だろうが夢だろ?それならこっちだって現実じゃありえないことや出来ないこと出来るんじゃねーのぉ?」


シーンと静まった空気をぶった切ったのはオリヴァー。

相変わらずだら~んと座るスタイルである。




「なるほど…ルナイス。まずは夢の中で自分が想像したものや望んだものが現れるか試してみるのはどうだ?」


「分かりました!」




にぃ様の言葉に僕もなるほどっと頷き、良い案を出してくれたオリヴァーとハグ。

こういう時、オリヴァーはノリがいいので、『お~よしよしぃ』って頭をわしゃわしゃしてくるので面白くなって更に頭をグリグリと鍛えられている胸筋に押し付ける。






「いきなり行動を起こしたルナイスに夢魔が何かしかけてくる可能性が高い。これを持っていて。」


オリヴァーと戯れる僕の両脇下にノヴァの両手を差し込まれ、ノヴァの隣にポスンと座らされ首に掛けられた物を見れば、強い魔力を感じる宝石のついたネックレスがあった。



「いざという時、どこに居ても僕の所へ強制的に転移する仕組みになっている。」


「分かった。ずっと身に着けておく。ありがとう。」



凄く心強いお守りをぎゅっと握ってお礼を言えば、何故か両腕を広げるノヴァ。


少し考えてそっとハグをすれば、満足そうにハグを返してくれたからハグをするので間違いなかったらしい。



ノヴァとのハグはオリヴァーと違って心が穏やかになって、だけどちょっと心臓がドキドキする。





だけどノヴァとのハグはすぐににぃ様によって終了し、何故か僕は9歳にもなってにぃ様の膝の上に座らされている。

人より少しばかり体の成長速度が遅い僕ですが、もうしっかり重たくなっている。
それなのにさっきから軽々と持ち上げられて…




「ルナイス、今晩は皆交代でルナイスの傍に待機する。何かあっても安心していい。」


僕を膝の上に乗せるにぃ様を華麗にスルーしてとーさまが言った言葉に僕は頷き、皆を見る。


此処に居る皆を見ればとーさまの言う通り、何が合っても大丈夫って思える。




にぃ様の膝の上で格好つかないけど…

改めて皆によろしくお願いしますと頭を下げた。







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