上 下
82 / 328
第2章

考えても仕方の無いことがある

しおりを挟む
たまが下がって、ランチも終えたところで一旦ノヴァとはお別れした。


ノヴァは使用人にいつもの客室(ほとんどノヴァ専用になりつつある部屋)に案内され、しばらく滞在する為に必要な物を整えたり色々あるから、たぶん夕飯までは会ったりすることはないだろう。

再び暇になった僕はとりあえず明後日の事情聴取に備えてあの日の詳細を紙に書きだしておこうとペンを握った。





しばらくペンを握っていたが、扉がノックされる音でペンを机に置いた。

声をかけるとおやつセットが乗せられたワゴンを押したメルナが部屋に入ってきた。



今日は窓際に用意をしてもらって、のんびり外を眺めながらおやつを頬張り、紅茶をすする。


アーバスノイヤー家はいつもに比べて多くの人がウロウロとしているが、それは警備が強化されたからだとばぁやが言っていた。
今回の黒幕の狙いが分かっていない以上、警備を強化しておくべきだと、とーさまは判断したのだろう。




黒幕が誰でなんの目的があってあんな事をするのか…もちろん気にはなるけれど、情報の少ない中で僕がいくら思考を巡らせようが答えには辿り着かないことは明らかなのでそこはあまり深く考えないようにしている。


ただ、あの状況の中で何か見落としたりはしていないか…あの日の記憶を何度も脳内でリピートする作業はしている。


基礎体力授業をしている途中、メリメリメリと何かを無理矢理割くような音がしたと思ったら空間に淀みが生じ、そこから悪鬼達が溢れ出てきた。


つまり悪鬼達を操った者は相当な魔法の使い手ということになる。

空間を割く魔法は魔力を多く使うし、誰にでも出来るものではない。
そこにあれだけの量の悪鬼を召喚するとなると、とんでもない魔力が消費されることだろう。



それに悪鬼達を強制的に操る力。

悪鬼の中にはそこそこ上位の者もいたはず…上位悪鬼すら強制的に動かせる魔法も使用して…となると…これを1人でやってのけるのならノヴァ以上の魔法使い。

そしてもう1つの可能性として何人かの魔法使い、魔術師、呪師のろいしの共謀。


更に最悪なもので、生贄を使用して行われた可能性。



僕は複数の者が共謀し生贄を使って今回の事件を引き起こしたのではないだろうかと考えている。

ノヴァ以上に魔法を使いこなせる大物が居たのならまったく耳にしたことがない、なんて事は無いだろう。


そんな人物を僕は知らないし、そこそこ魔力のある者達が共謀したとして、あれだけのことを同時に行うのは相当数が必要となるだろう。

そして、そんなに数が居たのなら1匹くらいの害虫はとーさま達によって駆除されているだろう。



それがないと言うことは、共謀している人数は片手ほどで、足りない魔力は生贄を使って填補てんぽしていると考えるのが妥当だろうと思うのだ。




そこまでは予測出来るのだけど…



やっぱり目的が想像できない。

何故悪鬼達を出現させたのが学園であったのか。


各学年棟に出現したと聞いている。
標的ターゲットが居たのだったら誰なのか…





「……ふぅ…考えても仕方ない。僕がお話できるのはあの日の状況の詳細だけ。」


頭の中に思い浮かべていたあの日の映像をぶち切ってぱくりとチィの実のマカロンを口に放り込む。


うむ、どんな状況にあってもチィの実は絶品である。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

超絶美形な俺がBLゲームに転生した件

抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。 何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!! 別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。 この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

僕は悪役令息に転生した。……はず。

華抹茶
BL
「セシル・オートリッド!お前との婚約を破棄する!もう2度と私とオスカーの前に姿を見せるな!」 「そ…そんなっ!お待ちください!ウィル様!僕はっ…」 僕は見た夢で悪役令息のセシルに転生してしまった事を知る。今はまだゲームが始まる少し前。今ならまだ間に合う!こんな若さで死にたくない!! と思っていたのにどうしてこうなった? ⚫︎エロはありません。 ⚫︎気分転換に勢いで書いたショートストーリーです。 ⚫︎設定ふんわりゆるゆるです。

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

運命なんて要らない

あこ
BL
幼い頃から愛を育む姿に「微笑ましい二人」とか「可愛らしい二人」と言われていた第二王子アーロンとその婚約者ノア。 彼らはお互いがお互いを思い合って、特にアーロンはノアを大切に大切にして過ごしていた。 自分のせいで大変な思いをして、難しく厳しい人生を歩むだろうノア。アーロンはノアに自分の気持ちを素直にいい愛をまっすぐに伝えてきていた。 その二人とは対照的に第一王子とその婚約者にあった溝は年々膨らむ。 そしてアーロンは兄から驚くべきことを聞くのであった。 🔺 本編は完結済 🔺 10/29『ぼくたちも、運命なんて要らない(と思う)』完結しました。 🔺 その他の番外編は時々更新 ✔︎ 第二王子×婚約者 ✔︎ 第二王子は優男(優美)容姿、婚約者大好き。頼られる男になりたい。 ✔︎ 婚約者は公爵家長男ふんわり美人。精霊に祝福されてる。 ✔︎ あえてタグで触れてない要素、あります。 ✔︎ 脇でGL要素があります。 ✔︎ 同性婚可能で同性でも妊娠可能な設定(作中で妊娠した描写は一切ありません) ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 【 『セーリオ様の祝福シリーズ』とのクロスオーバーについて 】 『セーリオ様の祝福』及び『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』のキャラクターが登場する(名前だけでも)話に関しては、『セーリオ様の祝福』『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』のどちらの設定でも存在する共通の話として書いております。 どちらの設定かによって立場の変わるマチアスについては基本的に『王子殿下』もしくは『第一王子殿下』として書いておりますが、それでも両方の設定共通の話であると考え読んでいただけたら助かります。 また、クロスオーバー先の話を未読でも問題ないように書いております。 🔺でも一応、簡単な説明🔺 ➡︎『セーリオ様の祝福シリーズ』とは、「真面目な第一王子殿下マチアス」と「外見は超美人なのに中身は超普通の婚約者カナメ」のお話です。 ➡︎『セーリオ様の祝福』はマチアスが王太子ならない設定で、短編連作の形で書いています。 ➡︎『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』はマチアスが王太子になる設定で、長編連載として書いています。 ➡︎マチアスはアーロンの友人として、出会ってからずっといわゆる文通をしています。ノアとカナメも出会ったあとは友人関係になります。

処理中です...