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第1章

お父様にとてつもなく叱られる

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昨夜はとりあえず眠ることを許可された僕だが、今朝起きた時にはしっかりと隣ににぃ様が居た。


逃げたりしないのに、ばぁやに手伝ってもらって着替え終わった僕をにぃ様はすかさず抱き上げ食堂へ連れてきた。

食堂にはとーさまも居て怪我はないのかとだけ聞かれた。



ノヴァも居たけど今回ノヴァも味方になってくれる様子はない。

ご飯を食べ終えた僕はまたすかさずにぃ様に抱えられ談話室へとやって来た。





「ルナイス、話してくれるな。」

皆静かに座ったところで、とーさまの厳かな声が部屋に響いた。






僕は3歳になる少し前から闇魔法が使えたことを告げた。


それを聞いたとーさまは目を瞑ってふぅっと深く息を吐き出した。
にぃ様は少し驚いた様子だったけど、すぐに顎に手を当てて何かを考えているような感じ。

ノヴァは何となく分かっていたのか特に驚く様子もなく、黙っている。



「…く…くら…くらいところにドボンってできるだけです!人をきじゅつけたりできましぇん!!」


何とも言えない空気に耐え切れなくなった僕はちょっと声を上げて自分が使える闇魔法はぽんこつなんだってアピールしたけど、噛みまくって上手く伝わった気がしない…。




「ルナイスが人を好き好んで傷つけるような人物だとは思っていない。」

椅子の上で撃沈している僕にノヴァがそんな声を掛けてくれる。



「あぁ。それよりどうやって暗い所にドボンとできるようになった?」

にぃ様はノヴァの言葉に頷いた後、そう問うてきた。





「えーっと…ねむれなくて…おつきさま見てたらしずんでました。」


暗闇に沈めるって初めて気が付いた日のことを思い出しながら答えるとにぃ様だけでなく皆の眉間に深い皺が刻まれてしまった。

僕もあの日はちょっとパニックになったからにぃ様達もびっくりだよね。








「びっくりしたけど、れんしゅーしたから今はへいきです!」


安心してよっと胸を張って言うと、三人の眉間には更に深い皺が。






「練習したっとは一体どんな練習をしたんだ?使用人達はおろかヘレナからもそんな報告は受けていない。」


とーさまの低めの声にどきまぎしながらばぁやが部屋を出た後にベットと僕の体を紐で繋げて飛び込んでした修行のことをお話した。






「「「はぁーーー」」」



今度は三人のふっかい溜息が吐き出された。








「ルナイス…とーさまはお前に散々危険な行為をするのは止めろっと叱ってきたはずだが?」

とーさまの怒ったお声にびくっと体が震えて縮こまる。




「ルナイス、なぜ私や公爵様達に相談しなかった。」


ノヴァも少し怒った様子で、何も喋っていないけどにぃ様もちょっと怒っているみたい。

三人ともが怒っているのは今までなかったから自然と涙が零れ落ちてくる。




「っだ…だって…だってぼ、僕がやみまほーつ、つかえるってしられたらい、い今よりぃ…っ今よりとーさま達いそがしくなって…なってぇ…も、もっとあえ…あえなくなるって…っおもった、からぁ!」


ボロボロと泣きながら今まで秘密にしていた理由を恥ずかしくも吐露すればとーさま達は驚いた顔をして、すぐに僕の涙をハンカチで拭ったり、背中を撫でてくれたり、頭を撫でてくれたり…。




しばらくあやされて、僕が落ち着いてから僕がやった練習法を実際にやって見せることになった。

僕はとーさま達をお部屋にご招待して、僕がやっていた練習法をやってみせる。



ユエの下に隠していた紐を取り出してベットに結び付ける。

ユエの下から紐を出した瞬間、とーさまの眉がピクっと動いたのにはビビったけど、どうにか続けて見せる。




ベットに紐を結び終えてから自分の腰に紐を括りつけて、それからそろっとベットの影に足をドブン。


ずぶずぶ床に沈んでいく僕ににぃ様が慌てた様子で僕の手を引っ張り上げ、僕を影の中から取り出した。






「こんな練習法危険すぎる!!」

珍しくにぃ様を声を荒げてそう言った。


確かに今思えば、大分荒業だったと思う。
だけどあの時に僕ができる最大限の安全性を兼ねた練習法はこれしかなかったんだ。




「ルナイス。お前はその練習法で暗闇の中に意識的に入り込んだり出たりすることができるようになった。それはすごいことだ。」

にぃ様と一緒に声を荒げると思っていたとーさまからの言葉にきょとんとなる。


「お前が私達に言えないような環境にしてしまった私達にも責任はある。…しかし、もしルナイスが秘密にやっていた練習法で大怪我をしたり、二度と闇の中から出てこれなくなった時、私はルナイスに魔法を教えていたノヴァを罰さなくてはいけなくなる。」


「なんで!」



褒められた?と呑気に思っていた僕は続いたとーさまの言葉につい声を大きくしてしまった。






「危険な魔法を教えたとしてノヴァは罰せられる。」


「ちがう!ちがうよ!僕!僕がかってに!」



「お前が勝手にやったことでノヴァは罰せられるのだ。」



とーさまの強い言葉にビクリと体が震え硬直する。

今回のとーさまは物凄く怒っている。
今までの比じゃないくらいすごく怒っている。




「ルナイスよく覚えておきなさい。お前はアーバスノイヤー家の人間だ。お前の勝手な行動によって罰せられる人間がいる。今回のことで上に立つ者の責任をきちんと教える必要があると判断した。の為、お前には1ヶ月間教師をつける。」


よくよく反省しなさいととーさまは言って部屋を出ていった。


にぃ様も同意見なのか、俯く僕の頭をぽんと撫でて部屋を出ていった。




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