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第1章
第六感が危険を知らせている。
しおりを挟む夕飯の後は少しだけ皆で談笑して、遅くならないうちにそれぞれ自室へと入った。
僕は疲れていないうえにノヴァと長いお昼寝をして目がギンギンに覚めているので、ゆっくりとお風呂に入っていくつかばぁやに用意してもらった絵本をベットに寝転がりながら読んでいる。
本当は魔力操作などについて書かれている書物を読みたいのだけど、まだ前世でいうところのひらがなのような文字しか理解することが出来ないので、難しい文字ばかりの書物は読めないのだ。
眠れるようにお部屋を整えてもらって、ばぁやには早めに下がってもらった。
あとは僕が眠たくなったら明かりを消して眠ればいいだけ。
そんな状態でゴロゴロしていると不意に空気の揺らぎを感じて、瞬時に僕はベットから転がり落ちてそのままベットの影の中に沈む。
嫌な予感がして考えるよりも体を動かしていたから今部屋に誰が居て、どうなっているのかは分からないけれどそのままじっと闇の中に籠る。
この暗闇の中では時間の感覚もないし、どこを見ても真っ暗で外の状況は何も分からないけど…今戻ってはいけないと僕の第六感が告げている。
今日はとーさまもにぃ様もそれにノヴァだって居るから異変に気が付いてすぐに動いてくれていると思う。
それに使用人達も優秀だ。
しばらくしたらきっと大丈夫になる。
それまでは闇の中に居よう。
_____________
刺客side
依頼を受けてやってきたのはかの有名なアーバスノイヤー公爵家。
賢王には膝をつき、愚王には剣先を向けると言われており国の窮地を幾度となく救ってきた名家。
表向きは優秀な近衛騎士の一族であるが、裏では王家に盾突くものや国を陥れようとするものを排除する影の一族。
そのことを知っているのは俺のように同じ暗殺を生業としている者か、貴族の一部か王族くらいのものだろう。
このアーバスノイヤー家では使用人すら油断ならない。
俺と一緒に送り込まれた刺客のほとんどは既に息絶えているだろう。
俺は何とか暗殺対象の次男、ルナイス・アーバスノイヤーの部屋へと侵入することができた。
しかし、いざ刃を振り下ろそうとした瞬間こっちを振り返ることなく小さな子供の体はゴロゴロとベットの下へ転がり落ちそのまま闇の中に飲み込まれていった。
予想外すぎる展開に呆然としているとスッと自身の首に冷たい物が当てられた。
「依頼主を吐くか、死ぬか…どちらを選択する。」
一瞬だ。
一瞬で俺は首に刃を当てられ、周りを取り囲まれている。
元々、アーバスノイヤー家への依頼を受けた時から生きて帰れるとは思っていなかった。
暗殺対象を殺せたとしても、その後自身が生きて戻ることは想像すらできなかった。
裏のアーバスノイヤー家を知っている者ならば皆思うことだろう。
それでもこの依頼を断れなかったのには理由がしっかりとある。
依頼主を吐いたところで俺が助かることはないだろう…。
しかし、俺が素直に依頼主を吐き言い訳をすればあの依頼主を悲惨な状況に追い込める確率が高い。
どうせ死ぬのならあの依頼主に復讐を!
「依頼主は___」
刺客side end
_____________
どれくらい時間が経過したのか…僕は不意に差し込んだ光に闇の中から這い出た。
真っ暗な所から出た僕は急な明るさに目を開くことができなかったけど、闇から抜け出た瞬間とっても温かいぬくもりにつつまれて、ほっと息を吐き出した。
嫌な気配はしなかったし、光の方からは温かいノヴァの魔力を感じたから。
目が光りに慣れて、周りを見渡してみたらノヴァの他ににぃ様やばぁや、ヨハネスも居た。
とーさまも居るかと思ったけど、どこにも居なくて…。
「ルナイス、父上は刺客を捉え尋問をしている。」
ちょっとだけ不安になった僕にすぐに気が付いてくれたにぃ様は、ノヴァに抱かれている僕の目線に合わせて頬を優しく撫でながらそう教えてくれた。
「ルナイス…何時から闇魔法が使えていたのか、じっくりにぃ様達とお話をする必要があると思わないか。」
安心してにぃ様の掌に頬を押し付けたところで、にぃ様から言われた言葉にぴしりと体が固まる。
よくよくにぃ様のお顔を見てみると、目が笑ってなかった。
すっごく笑ってない。
そこで、僕はようやく自分が闇魔法を使えることが思わぬ形でにぃ様達にバレてしまったことを理解した。
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