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第1章
羞恥を耐えたお夕食
しおりを挟む「坊ちゃま。」
「ん…んぅ?」
メルナに体をぽんぽんとされ、呼びかけられ目が覚めた。
外は眠りにつく頃より日が沈んで暗くなりかけている。
「お夕食のお時間です。こちらをどうぞ。」
メルナはそう言ってテキパキと僕の所へ温いお湯が入った桶を持ってきて、顔を洗い終わった後ぽんぽんぽんと僕の顔を拭きさっさと桶を片しに行った。
メルナの動きをぼーっと見送っていたけれど、徐々に脳が動き出してメルナが言っていたお夕食の時間という言葉を思い出す。
慌ててベットから降りて、皺になった服を脱ぎ散らかす。
「坊ちゃま。そんなに急がなくてもまだお時間に余裕がありますよ。」
服をぽんぽーんと脱ぎ散らかす僕を見てメルナが苦笑いでそう言うので安心して脱ぎ散らかした服を集めてメルナに渡す。
「坊ちゃま着替えはこちらです。」
ぐちゃぐちゃの服を僕から受け取ったメルナはそう言って綺麗に畳まれた新しい服を渡してくれた。
脱ぐ時よりも落ち着いて服を着替え、姿見の前に立つ。
跳ねている髪の毛を何度も撫でつけるけど、全然治まってくれない。
「んー。」
もどかしくてつい出た声に、メルナがクスクス笑いながら少し濡れた手で僕の頭を撫でつけ、ふわっとした風魔法で乾かしてくれたら問題の跳ね毛は無事に治まってくれた。
「ありがとう!」
「お役に立てて光栄でございます。食堂に参りましょう。」
食堂につくと使用人が扉をノックし、とーさまかにぃ様が居るのかなっと思ったら二人とも席に座っていた。
どうやら僕待ちだったようだ。
全然間に合うって言ったのに!と思って振り返ってメルナを見たら強張った顔で固まっていた。
「ルナイス、私達が予定よりも早く来たんだ。」
メルナの様子から意地悪だったり嘘をついたわけではないと察してもむぅっと下唇を出してしまう僕にとーさまが声を掛けてくれた。
「一緒にティータイムを過ごせず悪かった。」
「ごめんね。」
とーさまとにぃ様がそう言って謝ってきたので、慌てて頭を横に振る。
「いいえ!しゅぎょーをしてましたので!」
「ふむ。ヤックルから報告を受けている。つい行き過ぎた指導をしてしまったと言っていたが。」
とーさまの言葉にびっくりして僕は再び首を大きく横に振った。
「僕のたいりょくがなさすぎました!」
大きな声でそう言うと、とーさまは口をむにょむにょさせて黙ってしまい、にぃ様はクスクスと笑った。
恥ずかしいけれど事実だし、僕の見栄のせいでヤックルが罰を受けるのは良くない。
熱くなった顔を隠すために俯きながらとーさまとにぃ様が笑い終わるのを待つ。
「っん゛ん゛…頑張りなさい。」
「…はい。ぼくぼーふれるようにがんばります。」
「ふふ。」
とーさまの激励に答えたらにぃ様にまた笑われてしまった。
その後は思い出したようにクスっと笑うにぃ様と顔を赤くして俯きながら黙々と食べる僕と、思い出し笑いをするにぃ様を諫めるとーさまでお夕食を終え、今日の思い出のお話をした。
「ルナイス、明日ノヴァが来る。指輪の正しい扱い方を学ぶように。」
「ふぁ!はい!」
とーさまの言葉を聞いてノヴァに会える喜びに溢れ、思わずお返事の前に声が漏れちゃった。
ノヴァに会うのは本当に久しぶりだ。
なかなか国からの任務が終わらなくてなかなか僕に会いに行けないでイライラするってお手紙が届いたのはつい2週間ほど前のこと。
「にんむおわったのですか?」
「2日前に新しい任務を言い渡された所を何の利益もなくいつまでもいい様に使われる筋合いはないっと国王に啖呵を切って転移で逃げたので暇になったそうだ。」
「…ノヴァしけーになりませんか?」
「私からもフォローを入れているし、あ奴を失っては国も大損だからな。」
とーさまの口から出た衝撃の内容にノヴァが死刑にならないかとても心配したがさすがとーさま。
国も大損かもしれないが、ノヴァを失っては僕が一番困る。
まだまだ魔法を教えてもらいたいし、ノヴァとの時間は心が安定する。
僕がまた堕ちてしまわないようにってノヴァもとーさま、にぃ様も定期的に僕の心のお話をよく聞いてくれる。
そのお陰か堕ちてしまう時は大分減った。
「明日は私もアドルファスも朝食の後出る。」
「ちょーしょくごいっしょしていーですか?」
「あぁ。あまり時間がないので落ち着かないだろうが。」
「ごいっしょします!」
とーさまにOKを貰い、つい床についていない足をぶんぶん振ってしまう。
後ろでワイアットがゴホンとわざとらしい咳をしたのですぐに足を止める。
今日はとーさまとにぃ様と楽しい時間を過ごせて、ご夕食も一緒に食べられて、明日の朝食もご一緒できるなんて嬉しい。
それにその後はノヴァに会える。
それに明日はヨハネスとばぁやも傍に居てくれる。
良い日になる予感満載の明日を思い、自室に戻るまでの廊下をついスキップで進んでしまう。
そんな僕の後ろを着いてきていたメルナに名前を呼ばれて足を止めると先ほどのことを謝ってきて慌てた。
攻めるような視線を向けてしまって申し訳なかった。
ばぁやだったら知りませんよって感じで平気なお顔するから、その感じで視線を向けてしまった僕が悪い。
お互いにごめんねってした後、メルナは僕の眠る支度をしてからお辞儀をして部屋を出て行った。
僕は楽しみな明日に向けて、早く眠ることにした僕はメルナを見送った後少しだけ前世の記憶にあるストレッチをしてからベットに潜り込んだ。
部屋は真っ暗にしないと眠れないので自分で消せるようにスイッチはベットのすぐそばに置いてもらっているので、スイッチを押して明かりを消す。
夕食前に眠ったけど、やっぱり疲労が溜まっていたのか僕はすぐに眠りの世界へ意識を飛ばした。
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