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第1章

過酷な訓練。木刀は?

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僕のお供をしてくれることになった警備隊の人は、ヤックル・トゥワイスさん。


ヤックルさんはまず僕には体力が必要だと言い、ただいま訓練所のすみっこで腹筋中。

「うぎぃぃぃぃぃ!!」

「9!」

目標は20回。

しかし9回目の今でもうお腹が千切れそう。



汗をだらだら垂れ流し、顔を真っ赤にして歯を食いしばり、とてもお外で披露してはいけないお顔の僕をヤックルさんは気にすることなくニコニコ笑顔で数を数える。

休むこともへばることも許されない空気と笑顔。



えらい人に捕まったと…僕は絶望しながら引き千切れそうなお腹に無理やり力を入れて起き上がる。





「うぃぃぃぃ!!!」

「10!あと10回です!」


誰か助けて…












「ぐぅいぬぬぬぬぬぅう!」

「20!よく頑張りました!」


な…何とか20回腹筋を達成した。

離れた所から見守ってくれていた数名が温かい拍手を送ってくれるが、地面に横たわる僕にはその拍手に答える余力がない。
許してくれ。


あれだ。

ヤックルは笑顔で爽やかで、優しい物腰のくせに実はとんでもないスパルタ人間だ。

笑顔で有無を言わさない。
何て恐ろしい人なんだ。





「ルナイス様、次は腕立て伏せです。」


「ぜー…ひゅ…ぜー…や、やすませ、て」


地面に転がってぜーはーひゅーひゅー言う当主の息子に容赦ない声をかけるヤックルに待ったをかけるがニコニコしてじーっと僕の待てが解除されるのを待ってくる。

一見従順に見える彼だけれども、今の僕には笑顔でプレッシャーという名の重石を乗せてくる拷問官にしか見えない。




いくら待たれてもすぐには立ち上がれそうにない僕を見かねてか、どこからかコルダが現れ僕の口に水を運んでくれた。




「ヤックルさん、ルナイス様に合わせて無茶のない指導を求む。」


「いやぁ、つい熱が入ってしまった。申し訳ございませんルナイス様。」



コルダが少し鋭い目でスパルタヤックルさんに注意すると、ヤックルさんは眉を下げて僕に謝ってきた。

確かに彼を拷問官見間違えるほどにスパルタ教官であったが、自分の時間を割いて僕に教えてくれているんだ。
感謝こそすれど謝られることはない。

しかし、コルダの言う通り無理なく僕に合ったペースでの訓練はお願いしたい。




「あやまらないで…でも、やさしく、してください。」





結局、これ以上は過度な運動になって筋肉を痛めかねないというコルダの判断で修行は終わり。

持ってきた木刀を1度も振ることなく終わった。


僕は木刀を握り、コルダに運ばれてベットの上に居る。

コルダはメルナに事情を説明するとすぐに姿を晦まし、メルナは木刀を壁に片して僕の顔を冷たいタオルで拭いてくれた。




「夕飯になったら起こしますので、お休みになられますか?」

メルナに聞かれて頷いて返す。

息は整っているけれど、まだ喋るには舌が重たすぎる。
さっと自身に浄化魔法クリーンを使って毛布に潜り込み寝る体制に入るとすぐに瞼が落ちて眠りの世界へ意識を飛ばした。




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