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第1章

刺客はぽい

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ルナイス・アーバスノイヤー3歳になりました。

只今にぃ様と追いかけっこ中です。



ちなみに会話が出来るようになった僕はにぃ様のことを「兄」ではなく「にぃ様」と呼ぶようにぃ様から言われた。

父のことは「とーさま」。
少し前まで上手く言えなくてにぃたま、とーたま、何て呼んでいたが、2人は大喜びだった。
そのままで良いよっと言われたが成長すればきちんと発音できるようになるし、できるのにわざと舌ったらずな感じで話すのは恥ずかしいので遠慮しておいた。


「にぃ様ぁー!まてー!」



お家のお庭で一生懸命ににぃ様を追いかけるけど、一向に距離が縮まらない。

にぃ様は絶対手を抜いてくれている。
にぃ様が本気を出していたらたぶん今頃にぃ様は遥か彼方。

にぃ様はあんまりお喋りではないので、広い庭には僕の声だけが響いている。




「に…にぃさまぁ…はぁ…っふ…ま…っ…まってー!」

体力のない僕はすぐに息が切れて、情けなく地に伏せる。

そんな情けのない僕の元ににぃ様は駆け寄ってきてくれて、地に伏せる僕を抱き上げてくれた。


「つ、つかまえた!」

「しまった。策だったか。」


心配して抱き上げてくれたにぃ様の首に手を回して捕まえると、にぃ様はまいったと笑ってくれる。

ふふふ…僕の幼さを活かした策である!っと言いたいところであるが、本当に体力尽きて地に伏せただけである。
そして心配してくれたにぃ様を捕まえるというクズぶり。

にぃ様が大人な対応をしてくれるから成り立っている。ありがたや。




10歳になったにぃ様は二学年生になり学業が忙しく、こうして遊べる日は以前に比べると少なくなってしまった。

跡取りであるにぃ様はお休みの日もお勉強があるので、貴重な休憩時間を僕に使ってくれるのが申し訳なくも嬉しい。


「ルナイスすごい汗だ。休憩にしよう。」


にぃ様が近くの使用人からハンカチを受け取って僕の額を伝う汗を拭き取ってくれる。

直ぐに庭の日陰で1番景色のいい所にテーブルと椅子がセットされる。
殆ど音もなく一瞬でセッティングされるそれに毎回びっくりする。


「ルナイス、昨夜侵入者が居たらしいな。」

目の前で注がれる紅茶を見ていると心配そうな顔をしたにぃ様が尋ねてきた。


「はぃ。ぽいってしました。」


「…そうか。」



昨夜は珍しく僕の部屋まで刺客がやってきたのだ。
いつもは事前に警備隊の人達が外でやっつけるんだけど、極たまにすり抜けて僕の部屋に来る輩が居る。

最初のうちは緊急ベルを鳴らしてとーさまやにぃ様、ヨハネスが助けてくれていたけど、簡単な魔法を学び少しずつ剣術も習ってきた僕は昨夜思い切って部屋までやってきた刺客をやっつけてみた。


僕の喉元にナイフを近づけてきた刺客はまず寝てると思っていたのに目をガン開きして自分を見てくる幼児にとても驚く。

その驚いて動揺している隙に浮遊魔法で刺客を窓からぽいっと外に放り出してやった。



僕の部屋は二階にあって、窓から地面までの距離は結構ある。

だから運がよければ捻挫とか骨折で済むけど、運が悪ければ死んでしまう。
不法侵入者だから死んじゃっても仕方ないよね。

正当防衛、正当防衛。


まぁ結局、昨夜ぽいってした刺客は軽い捻挫で済んだみたい。
でも外に居た警備隊の人達にすぐ捕まったから、死人も出ずに無事終わってよかった、よかった。




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