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第1章
健康診断sideルグノス
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末の息子ルナイスが無事1歳を迎えてから6ヶ月。
ルナイスが産まれてすぐにアリアの葬儀があったり、アリアを失った悲しに浸る暇もなく喚く義理父母の処理だったりで産まれた我が子に会えたのはルナイスが産まれて一週間後。
少し状況が落ち着いてヘレナに任せきりだった我が子に会った時は、あまりの小さな存在にルナイスを抱くことを躊躇した日が昨日のことのように思い出される。
近くに子供を産んだばかりの女性がおらず、母乳を与えることができずミルクのみで育てるしかなかった為、健康面で心配があったが本日の健康診断で問題なしと言われほっとする。
ただ器に合わない大きすぎる魔力を抑えることに力が使われ、体が大きくなりづらい可能性が高いと言われた。
健康診断を終えて、ヘレナがアドルファスとルナイスを連れて部屋を出て私も退室しようとしたところでウーに引き留められた。
2人きりで話がしたいと言われ傍に控えていたワイアットとコルダ他使用人達を部屋から出し、ウーが座っている椅子の近くのソファに腰掛ける。
「アドルファス坊ちゃまは鍛錬を頑張っているようですな。骨も太く強くなっております。食事に肉を増やし筋肉をしっかりと休めるケアをするように。」
ウーはニコニコと笑い長く伸びている髭を撫でる。
「弟を守るのだと日々頑張っている。」
「母君のことがあったので心配しておったが…仲が良い様で安心じゃ。」
アドルファスとルナイスの関係は私も心配していたが、アドルファスは母を失ったことを上手く受け入れ弟に優しく接してくれた。
良き兄であると言ったアドルファスが誇らしい。
「ふぅ…ルナイス坊ちゃまのことじゃが…気を付けた方がいい。」
「…というと?」
不穏な物言いに顔を顰める。
「膨大な魔力量に加え、何かしらの加護を持っているやもしれん。そうなれば王家もその周りもそれ以外も黙ってはおらんだろう。今回の診断では詳しいことは分からんかったが…魔力を使わせる際には細心の注意を払うことじゃな。」
加護か…
もしかしたらっとは思っていたのでそこまで驚いたりはしないが、ウーの言う通り本格的にルナイスの力を狙う輩への対処法を考えていかねばならないな。
「ノヴァを付けている。」
「ふぉ!ならば少しは安心じゃな。しかしノヴァがいくら優れた魔法使いであっても13歳の子だ。補助が必要ではないかの?」
「ヨハネスをルナイスの専属にした。」
「抜かりなし、じゃな。…正直わしは安心しておるよ。奥方様が亡くなった原因には間違いなくルナイス様の魔力の強さがあった。それはどうしようもない事実じゃ…それ故にお主等がルナイス様との関わりを無くしてしまうのではっと心配しておった。」
眉を下げてウーにしては珍しく決まりの悪い顔で告げられた言葉。
確かにルナイスを出産することにアリアの体が持たないと聞いた時、私はアリアにルナイスを諦めるように言った。
正直まだ見ぬ子供の命よりもアリアの方が大切だった。
しかしアリアはルナイスを産むと強く告げ、その意思は最後の時まで変わらなかった。
ルナイスが産まれて、アリアが亡くなって…ルナイスを憎く思わなかったとは言えない。
何故あの子は生きていて、アリアが死ななくてはいけないのか…そう思ったこともある。
愛せないと思った。
しかし、あの日ルナイスと初めて対面した日…愛せないだろうと思っていた自分は消えた。
腕に抱いたルナイスはアドルファスの時よりも小さく弱弱しいものだった。
強い魔力は感じるが、それがまだ幼い器に合っていないのだろう。
バランスが悪くとても不安定な状態の我が子を守らなくてはいけないと強く思った。
そしてふっとアリアが出産の一か月前に言っていた言葉を思い出した。
『夢でね、暗い部屋で小さな男の子が一人で蹲って泣いていたの。その背中が可哀想で寂しそうで…。目が覚めて何でかあの男の子はお腹にいる私の子だって思ったの。だからね…私がこの子を幸せにしてあげることはできないかもしれないけど…生まれてきてほしいって強く思うの。暗い部屋で一人で泣かせたくないって、そう思ったの。』
「…生まれてよかった…そう言わせてみせるとアリアと誓った。」
アリアのお腹の中で滅多に動かず、成長も遅かったルナイスを心配していた彼女に、ルナイスとの対面後アリアの墓前で誓った。
「ならば良い。実はアリアからお主等がルナイス坊ちゃまを愛せないようであればルナイス坊ちゃまを私の養子に迎えるよう言われておってな。その必要はなさそうじゃな。」
ウーの口から告げられた言葉に驚いた。
最後まで子供を諦めないかと告げていた私にアリアは生まれてきた我が子が心配だったのだろう。
そんな心労を与えていたことに情けなくなる。
笑顔で帰っていくウーを見送り、アリアのお墓のある丘まで馬を走らせ私は改めてアドルファスもルナイスも大切な息子たちを守っていくと誓った。
ルナイスが産まれてすぐにアリアの葬儀があったり、アリアを失った悲しに浸る暇もなく喚く義理父母の処理だったりで産まれた我が子に会えたのはルナイスが産まれて一週間後。
少し状況が落ち着いてヘレナに任せきりだった我が子に会った時は、あまりの小さな存在にルナイスを抱くことを躊躇した日が昨日のことのように思い出される。
近くに子供を産んだばかりの女性がおらず、母乳を与えることができずミルクのみで育てるしかなかった為、健康面で心配があったが本日の健康診断で問題なしと言われほっとする。
ただ器に合わない大きすぎる魔力を抑えることに力が使われ、体が大きくなりづらい可能性が高いと言われた。
健康診断を終えて、ヘレナがアドルファスとルナイスを連れて部屋を出て私も退室しようとしたところでウーに引き留められた。
2人きりで話がしたいと言われ傍に控えていたワイアットとコルダ他使用人達を部屋から出し、ウーが座っている椅子の近くのソファに腰掛ける。
「アドルファス坊ちゃまは鍛錬を頑張っているようですな。骨も太く強くなっております。食事に肉を増やし筋肉をしっかりと休めるケアをするように。」
ウーはニコニコと笑い長く伸びている髭を撫でる。
「弟を守るのだと日々頑張っている。」
「母君のことがあったので心配しておったが…仲が良い様で安心じゃ。」
アドルファスとルナイスの関係は私も心配していたが、アドルファスは母を失ったことを上手く受け入れ弟に優しく接してくれた。
良き兄であると言ったアドルファスが誇らしい。
「ふぅ…ルナイス坊ちゃまのことじゃが…気を付けた方がいい。」
「…というと?」
不穏な物言いに顔を顰める。
「膨大な魔力量に加え、何かしらの加護を持っているやもしれん。そうなれば王家もその周りもそれ以外も黙ってはおらんだろう。今回の診断では詳しいことは分からんかったが…魔力を使わせる際には細心の注意を払うことじゃな。」
加護か…
もしかしたらっとは思っていたのでそこまで驚いたりはしないが、ウーの言う通り本格的にルナイスの力を狙う輩への対処法を考えていかねばならないな。
「ノヴァを付けている。」
「ふぉ!ならば少しは安心じゃな。しかしノヴァがいくら優れた魔法使いであっても13歳の子だ。補助が必要ではないかの?」
「ヨハネスをルナイスの専属にした。」
「抜かりなし、じゃな。…正直わしは安心しておるよ。奥方様が亡くなった原因には間違いなくルナイス様の魔力の強さがあった。それはどうしようもない事実じゃ…それ故にお主等がルナイス様との関わりを無くしてしまうのではっと心配しておった。」
眉を下げてウーにしては珍しく決まりの悪い顔で告げられた言葉。
確かにルナイスを出産することにアリアの体が持たないと聞いた時、私はアリアにルナイスを諦めるように言った。
正直まだ見ぬ子供の命よりもアリアの方が大切だった。
しかしアリアはルナイスを産むと強く告げ、その意思は最後の時まで変わらなかった。
ルナイスが産まれて、アリアが亡くなって…ルナイスを憎く思わなかったとは言えない。
何故あの子は生きていて、アリアが死ななくてはいけないのか…そう思ったこともある。
愛せないと思った。
しかし、あの日ルナイスと初めて対面した日…愛せないだろうと思っていた自分は消えた。
腕に抱いたルナイスはアドルファスの時よりも小さく弱弱しいものだった。
強い魔力は感じるが、それがまだ幼い器に合っていないのだろう。
バランスが悪くとても不安定な状態の我が子を守らなくてはいけないと強く思った。
そしてふっとアリアが出産の一か月前に言っていた言葉を思い出した。
『夢でね、暗い部屋で小さな男の子が一人で蹲って泣いていたの。その背中が可哀想で寂しそうで…。目が覚めて何でかあの男の子はお腹にいる私の子だって思ったの。だからね…私がこの子を幸せにしてあげることはできないかもしれないけど…生まれてきてほしいって強く思うの。暗い部屋で一人で泣かせたくないって、そう思ったの。』
「…生まれてよかった…そう言わせてみせるとアリアと誓った。」
アリアのお腹の中で滅多に動かず、成長も遅かったルナイスを心配していた彼女に、ルナイスとの対面後アリアの墓前で誓った。
「ならば良い。実はアリアからお主等がルナイス坊ちゃまを愛せないようであればルナイス坊ちゃまを私の養子に迎えるよう言われておってな。その必要はなさそうじゃな。」
ウーの口から告げられた言葉に驚いた。
最後まで子供を諦めないかと告げていた私にアリアは生まれてきた我が子が心配だったのだろう。
そんな心労を与えていたことに情けなくなる。
笑顔で帰っていくウーを見送り、アリアのお墓のある丘まで馬を走らせ私は改めてアドルファスもルナイスも大切な息子たちを守っていくと誓った。
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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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