王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第1章

お外への期待

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僕ルナイス・アーバスノイヤーは生まれてから8ヶ月目を迎えた。

「まぁ、坊っちゃまそんなところに!」


 ハイハイが出来るようになった僕はこうしてよく隠れてはばぁやを驚かせるという遊びにハマっている。

ばぁやがとっても良いリアクションを見せてくれるのでなかなかに楽しい。

今日はクローゼットと窓の隙間に隠れてみた。
埃ひとつない隙間にばぁやの凄さが分かる。

僕のお世話をしながら部屋も綺麗に保つ何て素晴らしい。



「坊っちゃま。そろそろ旦那様が帰って来られますから準備致しましょうねぇ。」


悪戯っ子と鼻を突かれて、ばぁやに着替えさせられる。

さっきまでは遊んで汚れても良いお洋服で、今着てるのは魔力の混じっていない薄い服。


これから帰ってきた父に魔力循環をしてもらうので魔力の邪魔にならない物を身につけないとダメなんだ。




コンコン

「旦那様がお越しです。」


着替え終わって窓の外をばぁやに抱かれたまま眺めていると扉がノックされて父登場。


「ルナイス。」

「あぃ。」


父に名前を呼ばれてばぁやの腕から降ろされる。

最近ばぁやは僕に歩くことを求めてくるがまだハイハイできたばかりだ。
ばぁやは僕に期待をしすぎだ。


ふぅっと息を吐き出してハイハイでしゃがんでくれた父の元へ向かう。

ハイハイで父の元へ向かう時、父は何時も変なお顔。
口がぷるぷるしてて何か我慢してる感じ。



無事に父の元へ辿り着き、父に抱き上げられる。

ソファに座った父はゆっくりと僕のお腹に手を当てて僕の中の魔力を動かしていく。


ノヴァさん曰く、血縁関係が濃い方が魔力循環は上手くいくらしい。
魔力って不思議。



お腹の中のものがぐるぐる~って動いて重たかったのが軽くなる感じがする。

便秘で溜まってたものが全部出てスッキリした時の爽快感に近いスッキリさである。


兄もしてくれるのだけど、やっぱり父に循環してもらう方がモゾモゾ感少なくて良い。
兄も優しくしてくれているのがすごく伝わってくるから良い気分ではあるけど、やっぱり途中で魔力がクシャってする時あるからなぁ…


「ヘレナ。入学の服を見繕っておいてくれ。」

「かしこまりました。」


父の魔力循環が終わって寛いでいると父が突然ばぁやにお願いごとをする。

入学の服…とは一体なんでしょう?

まさか8ヶ月で学校なんて行かないよね?



「アドルファス様は入学前から優秀だと貴族の間で有名なようですよ。」


ニコニコばぁやが嬉しそうに呟いた言葉に父は満足気に頷く。

そして兄の入学の話だと察する僕。


そうか…
兄はもうすぐ学校に通ってしまうのか。

お稽古だとかで今までも一緒にいる時間は短かったけど、学校に行けば今以上に会う機会が減るんだろうな…。
それは少し寂しく思う。


少しだけ寂しく感じるなぁ。


「ルナイスを守れる兄になると頑張っている。」

「そうですね。」



父の言葉にそう言えば前に兄から守る宣言をされたと思い出す。

口数の少ない兄であるがぎこちなくも可愛がってくれているのは伝わってきている。

ばぁやが兄は剣の才能があると言っていた。
魔力量は平均よりも少し多いくらいなのだとか。
ばぁやもよく兄の将来が楽しみだと笑っている。



「坊っちゃまのお洋服ですが、アドルファス様の制服に合うように少し綺麗めのグレーのお洋服にしようと考えますが、よろしいでしょうか?」


ばぁやの言葉に頷く父。


そこで父がばぁやに言っていた服は僕のものだと知る。
ん?ということは…もしかして僕外に出れるのでは!?

初の異世界お外の予感に胸がドクドクする。
じっと父を見つめると父は困ったように笑った。


「ルナイス、まだ6ヶ月先の話だ。」

6ヶ月…

まだこの国がどう言った暦なのか分からないけど、父の顔を見るにまだ僕のお外デビューは先の話らしい。


「ぅぅ」

思わず唇を突き出して唸ってしまった。


「やはり理解しているな。」

不貞腐れる僕の口をつまみながら父がボソボソと喋る。
近くにいる僕にはそれが聞こえて冷や汗が背中を伝う。

言葉を完全に理解している8ヶ月の赤ん坊って、気持ち悪がられるのでは…

チラッと父の顔色を伺う。


しかし僕の顔を見る父の顔は穏やかで楽しそうに僕の口や頬をむにむにしている。


んー…まぁ、嫌悪されて生きにくくなるより良いでしょう。


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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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