王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

文字の大きさ
上 下
13 / 386
第1章

僕はやばいらしい

しおりを挟む

兄は僕を離そうとせず、けして抱かれ心地は良くないものだったけど食後の僕はおねむの時間だ。

うつらうつらする僕を兄は相変わらずキラキラした瞳で見てくる。


少し離れた所にいるばぁやも流石に僕をベビーベッドに寝かせようとするが、兄がぎゅっと僕を抱き寄せて阻止するので困り顔だ。





「う…うやーーー!!」

眠たいのに眠らせてもらえない状況に遂に涙が溢れ出した僕。

前世の記憶はあれど、体は生まれてまだ1ヶ月なのだ。
理性よりも本能が勝るのも仕方のないことだろう。



ガチャ


「アドルファス。ルナイスを寝させてやれ。」


僕が泣いても離そうとしない兄に遂に父が召喚されたようだ。

父の一声に兄は泣きそうに顔を顰めたが、そっと泣き続けてしゃくりあげている僕を父の腕に渡した。


「ひっ…ぅ~…あ~!!」

「今日はお前もルナイスと一緒に寝るといい。しかし明日からはきちんと稽古を受けろ。」


トントンと一定のリズムで背中を叩かれる心地良さに少しずつ眠れない辛さも和らぎ、瞼が落ちてくる。

暫くしてふわふわに体が包まれて、すぐ近くで兄の気配を感じた。
兄はぎゅっと僕の手を握ってきて少し意識が上がりかけたけど、頭を撫でる心地よい手に意識が途切れ眠りの世界へと落ちた。




ーーーーーー



「ルナイス坊っちゃま、アドルファス様。朝ですよー!起きてくださいましー!」


突如鼓膜を刺激した音に驚いてバチッと目を開ける。

とても良い朝とは言えない目覚めだ。



「アドルファス様は稽古がありますからねぇ。ルナイス様、これから頑張るアドルファス様を一緒に見送りましょうねぇ。」


いつもならこんな風に起こさないのにと不思議に思っていると、どうやら兄の稽古の時間が迫っているらしい。

兄は寝ぼけながらも、どこからともなく現れたメイドさん達によって着替えをすました。


「行ってくる。」

「あ~(行ってらっしゃい)」


顔を拭かれて腰に剣らしき物を佩剣はいけんするとシャキッとした顔に変わった兄の言葉に返事をすると兄は一瞬ふわっと笑って部屋を出ていった。

兄を見送った後はばぁやとしばらく遊ぶ。


キラキラを出してもらったり、ばぁやがカラカラと振る訳の分からない玩具を眺めたり…。

そうやって遊んでいるとコンコンと扉がノックされた。



「旦那様がお越しになりました。」

「はい。」

ばぁやが返事をするとゆっくりと扉が開かれ、相変わらずお綺麗な顔をしたパパさんがやって来た。

父は何を言うでもなく手に持っていた宝石のようなものを僕の手に握らせた。

僕が握るとその宝石っぽい物はキラキラと輝き、父の目の前には前世のゲームでよく見ていたステータス表示のようなものが出ている。


「…やはり、な。」

父はそう呟くとじっと僕を凝視する。

一人で納得して何も説明をしてくれないから、僕とばぁやは首を傾げるしかない。




「だ…旦那様?坊ちゃまに何かございますでしょうか?」

何も言わない父にばぁやが耐え切れず尋ねた。


「保有魔力量が平均よりもかなり多い。このままでは魔力暴走を起こしかねない。」

「なんてこと!」


父の言葉にばぁやは口を覆って声を上げた。
口を覆う手が小刻みに震えていることから大事なのだと感じる。


「仕方ない。ノヴァ・ウォードに来てもらおう。」

「すぐに!」


何だか分からないが僕がやばくて誰かを呼びに行ったらしいばぁや。

父は僕から宝石ぽい物を取ろうとしたが僕はそれを阻止した。


驚いた表情の父が再び僕から取ろうとしてまた僕は阻止。


「将来有望だな。」

ちょっとした悪戯心でしたいじわるに父は何故か満足気に頷くので、宝石っぽいものはそっとお返ししておいた。




しおりを挟む
【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
感想 41

あなたにおすすめの小説

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが

ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク 王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。 余談だが趣味で小説を書いている。 そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが? 全8話完結

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

俺の婚約者は悪役令息ですか?

SEKISUI
BL
結婚まで後1年 女性が好きで何とか婚約破棄したい子爵家のウルフロ一レン ウルフローレンをこよなく愛する婚約者 ウルフローレンを好き好ぎて24時間一緒に居たい そんな婚約者に振り回されるウルフローレンは突っ込みが止まらない

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

処理中です...