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第1章

ミルクチャレンジ

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父が予想に反して僕を大切に思ってくれてることを知って、僕は安心して逞しく優しい腕に抱かれたまま泣き疲れて寝てしまったようだ。


起きたら昼。

空腹に目が覚めたのでお昼だと思う。
赤子の腹時計は意外としっかりしているものだ。


今の僕の食事はミルク。
母がいないので、僕は何かの動物のミルクを飲んでいるようだが、そいつがどんな生き物であるかを僕は知らない。

ばぁやは僕が母乳を飲んだことないを気にしている。
近くに母乳が出る人もおらず、どうしようもないことであるが、やはり免疫力が弱くなるので良くないようだ。
魔法が使えてもその辺りのことはどうにもできないのだとか。

栄養は前世と同じように自然なものから摂取しなければならない。




「あ~(ばぁや~)」


いつもならお腹がペコペコになる前にばぁやが起こしてミルクをくれるのだけど、今日は朝から色々あったので自然に起きるまで寝かせてくれているのだろう。

近くに人の気配がするので、声を出せば気が付いてくれるだろうと近くにいるであろうばぁやを呼んでみる。



「…起きたか。」


「ぅあ」



まさかの父であった。



僕の呼びかけに答えてくれたのは、ばぁやではなく綺麗な顔をしたあのパパさんであった。
ベビーベッドの壁のせいで分からなかった。





「ヘレナがミルクを持ってきている。しばし待て。」


父はそう言って僕の頭部を優しく撫でた後、そぅっと僕を抱き上げた。

今朝の出来事でそれなりに腕に力を入れても大丈夫だと分かったのか、今回の抱っこは悪くない。




コンコン


「ヘレナです。」


「入れ。」



しばらく抱っこされたまま一緒に窓からお外を眺めていると扉がノックさればぁやが手に僕の大事なミルクを携えて現れた。

空腹で目が覚め、しばらく経つので思わずミルクに向かって手を伸ばしてしまう。




「旦那様、ミルクを差し上げてください。」


「いや…赤子にミルクを飲ませたことがない。」


ばぁやは父に哺乳瓶を渡そうとするが父はそれを受け取らない。
只でさえお腹が減って仕方ないのに、そんなやり取りは後でしてくれ。



「あー!」

「ル、ルナ…ヘレナどうしたらいい。」

なかなか飲めないミルクに手を伸ばして泣けば父は慌てて僕の体を揺する。

そして意を決した様子で哺乳瓶を握り、ばぁやに指示を仰ぐ。


「こうお持ちになって、ゆっくり傾けて……そう、上手でございますよ!」


ばぁやに指導されながらのミルクは何時もより安定しないが、父が一生懸命僕の様子を見ながらやってくれてるので我儘は言わないでおこう。

んくんくっと飲みながら父を見ていると、険しい顔をしていた父の顔がふわっと綻んだ。


ミルクを飲み終えて、父は再びばぁやに言われるがまま僕の背中を叩いてゲップを促す。

げふっと僕の口から音がするとふふっと上品に笑われてしまった。



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