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第1章

杞憂でした。

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綺麗で素敵なパパさんと見つめあって数分。



ばぁやに促されて父は僕をお抱えのままソファに座ったが、一言も発さぬ。
母を殺した僕を恨み、出会った瞬間嫌悪の目で睨みつけられるのでは?と思っていたがそんな様子はない。

僕を抱っこする腕もぎこちないけど、優しくてすごく気を使ってくれてるのが伝わってくる。



「…潰しそうだ。」

「ひぅ!!」



待った!
勘違いだったかも知れん!!

つ、潰しそう!?
憎くて憎くてこのまま潰してしまいそうってことですか!


やだ!
圧死は苦しいし死ぬまでが長そう!
死ぬなら急所をばーん!とやってくれ!




「ぁあーーーーーん!!」

「泣いている。」


「だ、旦那様!頭!頭をしっかり支えて下さい!!」


泣き叫び仰け反って逃げようとする僕を無表情なまま見つめる父にばぁやが慌てて声をかける。

首がまだ座ってないから首がぐんにゃりしてるのをばぁやに言われた父が支えると再び父と目が合う。



「…可愛らしやすぎないか?」


そして予想もしなかった言葉が父の口から聞こえてきた。
可愛らし?僕に言ってるの?
目が合ってるしそうだよね?



「はい。坊っちゃまは旦那様と奥様の可愛らしいところをぎゅっと詰め込んだような愛らしさでございます。」

ばぁやは何故か誇らしげに胸張ってる。


「あぁ。」

ばぁやの言葉に頷いた父は初めてその綺麗な顔を綻ばせた。

とっても綺麗な笑みに僕の涙はピタリと止んで、思わず釣られて僕の顔もへらぁってなった。



「ぐっ…愛い!!」

「旦那様!強い!坊っちゃま潰れる!」

ばぁやが丁寧な言葉を忘れるほど慌ててぐいっと僕を強く抱きしめた父から僕を引き離す。


「ふゃ(死ぬかと思った)」

「坊っちゃま大丈夫ですか?旦那様!坊っちゃまを殺す気ですか!!」


よしよしとばぁやにあやされながらばぁやに怒られる父を見ると、物凄く反省してた。

人ってこんな肩落とせるんだってくらい沈んでる。



それから父は何度か僕に手を伸ばしたが、ばぁやの鉄壁なバリアにより拒まれた上に更にばぁやに怒られていた。



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