BL短編集【二話目執筆中】

薄明 喰

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良い子

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あーくんは毛布を被って僕も中に入れてくれた。


まだ寝るのにはだいぶ早い時間なのにどうしたんだろう?と顔を上に向けてあーくんの顔を見つめる。




「ヤト。色んな所を旅したけど…どこかいい所はあったか?」


「んー…全部素敵な所でした。美味しいものが沢山あるし、皆僕を見て笑ったり嫌な顔しないでくれました。」




僕は火に焼かれて死んだはずだった。


でも気が付いた時にはあーくんに抱かれて、見知らぬ森の中の木の上で寝てた。





火に焼かれたのは悪夢だったのかと思ったけど、体には火傷の痕があるし、視界は狭くて左目の辺りに触れたらざらざらしていて、右目を瞑ったら何も見えなかったから焼かれたのは夢じゃなかったのだと直ぐに理解した。



じゃあ何で僕は生きてるんだろう?とあーくんに聞いてみたけど


「俺が望んだんだ。ヤトに生きていて欲しいからお願いしたら叶った。」


としか言わず、詳しいことは教えてはくれなかった。










本当はすごく気になるけれど、あーくんは言いたくない様子だし、なんとなく…知らない方がいいような気もするからそれ以上は聞かず、あーくんに手を引かれるままに色んな所を一緒に旅した。


村の外に出たことがなかった僕は、色んな所を旅する度に自分のが当たり前じゃない世界に驚いた。




何もその人の利になることなんてしていないのに、屋台のおばちゃんが笑いかけてくれて美味しいものを味見させてくれたり

あーくんとはぐれて立ち尽くしている僕に声をかけてくれた人は、あーくんが僕を見つけるまで一緒に居てくれた。








どうしてそんな風にしてくれるのか理解できなくて、あーくんに何で?と質問したらあーくんは何故か悲しそうな顔をしたけど


「あの村の人間達とは考え方が根本的に違うんだ。」


と教えてくれた。







旅をして行く中で、色んな人達と出会い、人それぞれの思いや考えがあるのだと学んだ僕はなるほどっと頷く。



あーくんが居た図書館の本でも見たことがあった。

文化の違い…ってやつだろう。







「あぁ…でも…」


「でも?」



「あの氷の滝…綺麗でした。」



ふと思い出したのは、旅を始めて1年程が経過した頃に辿り着いたとっても寒い小さな国。


雪という白い綿のようなものが天から降っていて、太陽が照って暑くって汗まみれになることはないけれど、代わりに寒くて手足の先が赤くなって腫れることがあるという国。



寒い所に住むことに優れた動物達は皆毛がもふもふで、とっても気持ちが良かったことを思い出す。






火に焼かれたことがあるからなのか…


僕は暑いのが苦手だから、涼しい所かああいう寒い所の方が落ち着く。



前に砂漠の暑い国に行った時には、暑いのに夜に焼かれた時の夢を見てしまって更に暑くなっちゃった。

体も思い出すのか、傷跡がジクジクと痛みだして意識が朦朧とする時があって…


それからあーくんは暑い所には行かなくなった。






ごめんなさいって謝ったら、目的のない旅だから気にしないでいいよって言ってくれた。


今居る所も運動をしたり何かするとちょっと汗をかくけど、風が気持ちよくてあの炎の中を思い出すほど暑くはない。







「ブランカグラス国か。確かにあそこは綺麗な国だった。国民性も穏やかで……ヤト。もう一度ブランカグラス国へ行ってみようか。」


「??はい。今度は白うさぎ、見たいです。」


「はは!そうだな。今度は必ず見つけよう。」




あんまり地理に詳しくはないけれど、此処からブランカグラス国は結構距離がある。

歩くだけではもちろん時間が掛りすぎてしまうので馬車に乗ったり、船に乗ったりするのだろうけど…今回のように明確に目的地を決めて旅をするのは初めてだ。


急にどうしたのかな?と思ったけど、あーくんの傍に居れるのなら何処だって着いていく。






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