良い子【短編】

薄明 喰

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村の馬の糞を掃除している時に、この村の教会に誰でも入れる図書館ができたと耳にした。



図書館は本が沢山ある所だって知ってた僕は、急いで掃除を終わらせて日が暮れる前に何とか噂の図書館にやってきた。








だけど、図書館はすでに閉まっていて中に入ることはできなかった。











それからしばらくして、村の隅でお薬屋さんをしているお姉さんのお家の屋根の修理を終えた時、お姉さんが僕がまだお手伝い中だってことにしとくからフード付きの布これを着て図書館に行っておいでと言ってくれた。


僕は図書館に行ってみたいなんて誰にも言ったことがないのに何で分かったんだろう?と不思議に思いながらも断ろうとした。

だっては嘘をついたら駄目なんだ。




折角両親に良い子だと言われることが増えたのに、そんな事をしてはまた頭がイカれた子に戻ってしまう。


だけどお姉さんはいいから行っといでと僕の体をぐいぐい押すから、仕方なく僕はフードを深く被り、人目のない道を歩き図書館へとやってきた。






「うわぁ…」


図書館に入って漏れ出た声に慌てて両手で口を抑える。

図書館では静かにしてくださいねと入口に書いてあったのに、やっぱり僕は良い子にはなれてない。




ゆっくりと中に入り、中で紙に何かを書いている見たことの無いお兄さんに小さく声をかける。


「あ…あの…」

「ん?君は?」


フードを被る僕に顔を顰めたお兄さんに慌ててフードを取り顔を見せ



「ヤトって言います。」



と挨拶をした。





「あぁ…よく働いている子だね。本を読みに来たのかい?」


「ぁ…はい…だめ、でしょうか?」


「いいよ。好きに読みなさい。」



汚い、異常者な僕じゃ、やっぱり教会の図書館の本を読んではいけないのかと諦めて帰ろうとしたらお兄さんは微笑んで本を読む事を許してくれた。


僕は嬉しくて何度もお礼をいいながら読めそうな本を選んで図書館の隅の人目に付きにくい場所で静かに読書をした。













あれから薬屋さんのお姉さんのとこでの仕事の時は図書館へ行くようになり

両親に嘘をついていることへの罪悪感を抱えながらも本を読むことに夢中になっていた。




ここ最近僕が読んでいるのは恋物語。

沢山の人から愛される主人公を良い子になる為の参考にしているのはもちろん…


読んでいるとまるで僕まで愛されているかのように錯覚することができて、本を読んでいる間は言いよう良ないほどに幸せだった。










「君は最近そういった話のものばかり読んでいるね。好きなのかい?」


「ぇ…ぁ…はい」


「どんなとこが面白いの?」



「…ぃ…良い子になるために……僕は僕じゃだめなので…主人公みたいになれたら…僕…」




お兄さんの質問にもじもじしながら頭を高速で動かして言葉を紡ぐ。

大丈夫かな

傷つけてないかな

おかしくなかったかな

いい子かな





「…決めた……ヤト。少しの間ここでお留守番しててください。」


「ぇ…で、でも…僕…帰らないと…」



「大丈夫。私がご両親にきちんと説明するから。」




「……はい。」




お兄さんの力強い目に勝てなくて、僕は諦めて頷いた。

時間通りに帰らないとまた閉じ込められてしまうかもしれない。


だけど、お兄さんが両親に言ってくれれば、もしかしたら怒られなくて済むかも…


そんな事を思いながら図書館を去っていくお兄さんの姿を見送った。




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