BL短編集【二話目執筆中】

薄明 喰

文字の大きさ
上 下
1 / 26
良い子

1

しおりを挟む
村の皆から好かれている人気者な男の子の両親が死んだ。

彼の両親は村では狩りをしたり、村の外の人とやり取りをして甘味だったり生活の手助けをしてくれるような物を持って帰ったりしていて、皆が彼らの事が大好きだった。







そんな皆が大好きだった2人は外から村に帰ってくる途中で野盗に襲われ惨殺された。

父親の体は縛られあちこちの骨が折れているのか体の形がぐちゃぐちゃになっていて、

母親は衣服を纏っておらず、あちこち傷まみれで土に汚れており、足の間から白い液体と赤い液体が混じったものが流れ出ていた。





そんな状態の2人を見つけたのは僕だった。


村の外で誰の目もない所で静かに過ごしたくて、本を片手に村を出てしばらく…惨たらしい死を迎えた2人の遺体を見つけたのだ。






慌てて僕は男の子に君のお父さんとお母さんが!って呼びに行った。

惨い死に方をした両親の死体を子供に見せるべきじゃないだなんてまだ4歳の僕には判断できなかった。



僕の慌てて彼の手を引いて村の外に向かう姿を怪しんだ大人たちも着いてきて、2人の死体を見て口を抑え息を飲んだ。

そして両親の遺体を見た男の子はその場に泣き崩れ、もう動かない両親に触れようにも触れられない様子で地面の土を握りしめていた。





「だ…大丈夫だよ。死に方は色々だけど、全部同じ死、なんだよ?」


「…は?」



「な、何を言ってるんだお前は!!」




僕は辛そうに泣く男の子に泣き止んで欲しかった。





「で、でも…死んだら痛いことも苦しいこともなくなるって!だから今2人は痛くないし苦しんでないよってっっぐぅ!!」


僕の父親に殴られて僕はその衝撃に体が吹き飛ばされて木に体をぶつけた。

バキッと音を鳴らしたのが木なのか、僕の体なのかは分からないけど全身が痛くて息が上手く吸えない。




「前々から思っていたが…やはりあの子は頭が可笑しい。」

「あんなことを言うなんて…狂ってる!」

「恐ろしいわ…いつかあの子は私たちのこと笑いながら殺すかもしれない。」



息を上手く吸えず、しまいには吐いてしまった僕を大人達は冷たく見下ろす。

僕はまた失敗してしまったと思うが、もう取り返しはつかない。








その後は、村の皆が亡くなった2人を丁寧に埋葬し、男の子は村長の家で一緒に暮らすことになり、

そして僕は良い子になるまで部屋に閉じ込められ
間違えればボールの様に蹴り転がらされ、時には何日も食事を与えて貰えず、勝手に外に出ないように鎖で繋がれ、

そして毎日教会が配布している人道についての教本を声に出して読まなければいけない生活が続いた。















どれくらいの時が経ったのか…


外に出ることを許された時には同じ年齢だった村の子は僕よりも随分大きくなっていて、僕より小さかった子供達は僕を指さして「だぁれ?」と首を傾げた。


外に出ても良くはなったが許されたわけではない。




両親の言うことを聞き、そして完璧にこなさなければ殴られるという日々は続き

村を歩けば石を投げられ「異常者!」と罵られる。



僕はこの数年間読み上げてきた教本に従って、死んだ生き物を見つけたらどんな生き物でもお祈りをして丁寧に埋葬し、困っている人がいれば手を差し出し、皆が嫌だと言う仕事をすべてこなし、そしてそれ以外の時間は本などを読み勉強をした。


もちろん、今も毎朝声に出して教本を読み上げる。


これは両親と僕の儀式。


僕が普通の人になるための

になるための大切な儀式。






だけど、僕はなかなか良い子になれない。


僕が口を開くと皆気持ち悪がるから僕は「はい。」以外の言葉を発さないようにした。

優しい言葉を学び、決して他者に触れたりしない。



憂さ晴らしに殴られても、物を投げつけられても、水に沈められても怒ったり声を出してはいけない。

僕は僕であってはいけないから。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋人が出て行った

すずかけあおい
BL
同棲している恋人が書き置きを残して出て行った?話です。 ハッピーエンドです。 〔攻め〕素史(もとし)25歳 〔受け〕千温(ちはる)24歳

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

もう遅いなんて言わせない

木葉茶々
BL
受けのことを蔑ろにしすぎて受けに出ていかれてから存在の大きさに気づき攻めが奮闘する話

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...