私が君と過ごした数分間

いぶき

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12才の出産

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特別養子縁組の話を聞いてから…

何度も何度も説明をされた。

乳児院や養護施設とは違うこと。


「特別養子縁組」は…私はもう必要がないこと。


赤ちゃんを産んだらすぐにその夫婦に引き取られ、その人たちの子供になる。

戸籍上も。


私は二度と会えないし、どんな人に…
どんな夫婦に育てられるのか…

それさえも教えてもらえない。



私は…この子をちゃんと育てたくて…家族になりたくて…



でも…

赤ちゃんのことを思うと、私みたいな母親に育てられるなら…

経済的にも安定してる、そのご夫婦に託した方が幸せなのか…



何年も不妊治療をしてきて…

それでも出来なくて…


最後にたどり着いたのがここらしい。



私の子供はもうすぐ産まれる。




たった一回だったけど…

私たちは確かに愛し合って求めあって…


だからこそ、この子が出来たんだ…




その子を手放す…?

産んですぐに引き離される…?




そんなことができるはずがない。




だって…

私の中で8ヶ月も育ってきたんだ。


この子を育てたのは私だ。


離さない。

絶対に渡さない。






でも………


今の私に…


赤ちゃんにオムツを買って、最低限の物を買ってあげて、ミルクを飲ませることができるだろうか…




そんな葛藤の中…



ついに私の陣痛が始まった。



特別養子縁組の事や、私の年齢の事もあり…

予定日より早い入院のはずだったが…




私の赤ちゃんは「いま」産まれたがってる。




あの鬼畜所有の家から淡々と一人で病院へ向かった。


付き添いなど誰もいない。


母も父も、頼れる大人も。

病院から連絡が入って、少なくとも母は知ってるはずだった。

でもあの人は来なかった…




「お母さん…」


と思ってしまうのは何なんだろう…


来てくれるはずもない。


わかり切っていたことだが…


堪える…


ホルモンのバランスのせいだろうか。




でも私は一人じゃない。

君がいてくれるから…
私は頑張れるよ。


私は一人じゃない。


元気に、健康に。
私は必ず君をちゃんと産むから…



待っててね。
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