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28話 全部流して
しおりを挟む『俺が誘ったんだっ!!』
全部を吐き出すように、きっぱりと言い放った。
『俺が誘ったんだ!友也さんの弱みにつけ込んだのは俺だから!心は手に入らなくても…カラダだけならって…俺が誘ったんだよ!!最低なのは俺だ!!』
一ノ瀬くんは、悲しそうな顔で俺を見ていた。
一ノ瀬くんの口を塞いでいた手を、ゆっくりと下ろして、それは自分に言い聞かせる様に言った。
『もう…終わったから。…終わりにしたから。』
我慢していた涙が、ポロポロと流れては落ちていった。
『…友也さんに…っ…言ったからっ…仁さんの好きな人は友也さん…ですって…う゛っ…仁さんのところに…行って下さいって…言ったから…この遊びの関係は終わりですって…ちゃんとっ…言ったから…う゛っ…これで…終わりにしたからっ…』
言葉の間に涙と嗚咽が混じって、一ノ瀬くんに上手く伝わったかわからないけど…。
全部話すことが出来たと思う…。
こんな事一ノ瀬くんに話すつもりじゃなかったのに…。
もしかしたら、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。誰にも話せない秘密の恋だったから…。
一ノ瀬くんは、ふわっと俺を抱きしめて
『頑張ったな…』
と、聞いたこともないような優しい包み込むような声で言った。
見上げると一ノ瀬くんの表情がさっきとは全く別モノになっていて、柔らかく俺を照らしていた。
俺を包む細い長い腕は、友也さんのモノとは全く別モノだったけど、胸が苦しくなることなんてなくて…心が穏やかに落ち着いていった。
流れる涙も苦しかった想いも全部を、一ノ瀬くんが包んでくれているみたいで全部を吐き出すように泣いた。
俺が泣いている間ずっと、一ノ瀬くんは俺を優しく抱きしめていてくれた。
どれくらい泣いていたのだろう…
『ごめん…こんなとこ見せて…このことは…』
『わかってる!俺と遼平のひ・み・つ♡』
一ノ瀬くんは嬉しそうに笑った。
続けて
『寂しいなら、俺が一緒に寝てあげよっか?…あっ///その…そういう意味じゃなくてっ…いやっ…そうなっても…いいんだけど…あっ///…そんな弱っている時に…ずるいかっ?…』
真っ赤になって慌てている一ノ瀬くんが可愛かった。
『ありがとう。寂しくなったら…お願いしようかな?笑!』
俺は笑った。
そして、一ノ瀬くんは自分の部屋に帰っていった。
泣き疲れたのか、俺は熟睡することが出来た。
苦しくて眠れない夜をあれだけ過ごして来たのに…。
終わりにすると決めた日、こんなにもスッキリ眠れるなんてどんな皮肉かと笑った。
スッキリと目覚めて、鏡を見た。
大丈夫!いつも通りのイケメンだ!!
大丈夫…
俺、ちゃんと終わりに出来た!!
そして、あのふたりはどうなったのだろうか…
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