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56話 戸惑いと困惑で好きの意味を考える

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56話  戸惑いと困惑で好きの意味を考える



最高のステージが終わり、みんなの興奮も余韻も最高潮だった。



じゅんくんは、公演が終わった後も元気で、みんなに笑顔を振りまいて、病気だなんて嘘だったのではないかと思う程だった。

それでも、打ち上げには参加せずに、帰ると言った。

病に侵されているなんて嘘みたいに、元気に笑って
『じゃあ!!』って、手を挙げて帰っていった。

また明日!って、いつもみたいに帰って行くじゅんくんに、クルーも
『おう!お疲れ~!じゃあな~』
『お疲れ~、またな~』
なんて、いつものレッスン帰りみたいに別れた。


元気で明るく帰って行くじゅんくんに、違和感を覚えたのはなぜだろう?

この胸につっかえている、もやもやはなんだろう?


今更、じゅんくんを抱いてしまった事を後悔しているのか?

じゅんくんの片思いの相手が俺だなんて…聞いてない。

俺がじゅんくんをあんなに苦しませていたのだろうか?

公演が終わって、このもやもやは大きくなるばかり。

昨日聞いてしまった、【好き】が頭から、離れない。


俺だって、じゅんくんが大好きだ!

でも、この大好きは…じゅんくんが言った【好き】と一緒なのか?わからない

雪の事も好きだし、大輝のことも大好きだ!

一緒に過ごして来たクルーも好きだし、ダンスも好きだ!


これらの好きと、一体何が違うのだろう?

打ち上げの最中、ビールを飲みながらずっと考えてた。コップの中には、次々とビールが注がれて、空いては満たされ空いては満たされ、気が付けばかなりの量を呑んでいた。

それでも、頭はしっかりしていて、じゅんくんのことばかり気になっていた


なぜこんなに気になるのだろう?

じゅんくんの苦恋花病は、もう治ったのだろうか?

…いや、治るためには両想いになるしかない!

片思いの相手が俺ってなると、俺と両想いにならなければ、じゅんくんの命はない。

そういうことだよな?


でも、俺は…好きの感情がわからない。

俺の好きって気持ちじゃダメなのか?


みんな好きだし…

でも、もし雪や大輝があの病にかかっていたら?
俺は同じことをしていただろうか?

もし、俺がこのまま何度ももじゅんくんを抱いたら?
苦恋花病は治るのだろうか?


もし…じゅんくんと付き合ったら?

もし…このままじゅんくんと会わなかったら?

もし、もし…

もし○○だったら?をいくつもいくつも考えて…


考えているうちに、打ち上げが終わった。


ツアーが終わって、これからしばらくはじゅんくんに会う予定はない。
仕事もしばらく入ってないし、レッスンもしばらくない。

だからと言って、じゅんくんに会う理由もない…。


それに、なんだか用もないのに会いにくい…



ツアーを最後までって気持ちと、じゅんくんを救いたいって気持ちで、なにも思わなかったけど…

今考えてみると、俺とじゅんくん…

えっちしてるんだよな…。

妙な気まずさを覚えた。

次に会う時、どんな顔して会えばいいのだろう…?


会ってしまったら、蕩けるようなあの妖艶な表情のじゅんくんをもう一度見たいと思ってしまうのではないかとか…

もう一度、俺はじゅんくんを抱くのだろうか?とか…



呑み過ぎた頭で、そんな事をずっと、ぐるぐる考えて、深い眠りに就いてた。



次の日、呑み過ぎてカラダが重たくて頭もよく回ってなくて、それでもじゅんくんの様子が気になった。

でも、突然家に押し掛ける訳にもいかないし、電話しても、なんて言えばいいのかもわからない。

えっちをしてしまっているし…
どんな顔して会えばいいのかもわからない…
どんな顔して会えばいいのか…
わからない。

好きの意味も、どうやって会えばいいのかも…
わからないことだらけだった。



そんなこんなで、頭の中ぐるぐるどうしたらいいのかわからないことが回っていて、何もせずに数日が経ってしまった。



そして、俺は…

この世に残されたもっとも深く美しい青を見ることになった。
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