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44話 嘘つきと病名
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44話 嘘つきと病名
透弥side
宮城公演の医務室でのことだった。
俺はじゅんくんが苦恋花病だと確信した。
昼公演を終えて、2時間の空きが出来て、じゅんくんはいつものようにぐったりと体力の限界を迎えているように見えた。
『大輝起こして!』と言い残して、じゅんくんは医務室へ向かった。
なぜ?俺じゃなくて、大輝にそれを頼むの?
なぜ俺じゃないの?
俺がじゅんくんの一番の親友だと思っていた。
それなのに?
俺じゃなくて、大輝に言った事が、俺を酷く落ち込ませた。
ぐったりしたじゅんくんが心配で、俺もじゅんくんの後を追うように医務室へ向かった。
ドアを開けると、ベッドにはカーテンが引かれていて、カーテンを開けるとじゅんくんがぐったりと横たわっていた。
寝不足だと言い張るじゅんくんだけど…たぶん嘘。
寝不足なんてもんじゃないくらいに顔色が悪かった。もう寝るからあっち言ってって言われたけど、そんなんでどこかに行くような俺じゃない!
じゅんくんの隣に寝ようとしたけど、キツク断られ、仕方なくベッドの横にある椅子に座った。
椅子に座ったまま、コトンと頭をじゅんくんが寝ている布団にもたげた。
布団からはじゅんくんの手が出ていて、俺の手に触れた。
ん?あれ?
白く…青い…?
よく見ると…うっすらと花の模様が浮かび上がっていた。
これ…って…。
そうだよね…。
もう、間違いないよね…。
ズキンと奥の方で痛む何かを隠して、そっと目を閉じた。
恐る恐る
『ねぇ~、病気…なの…?』って、聞くと
『…違うよ…。…病気じゃ、ない…』って、震えた声が嘘を吐き出した。
『…嘘つき…』
じゅんくんは嘘つきだ…。
苦恋花病を俺に隠した。
その手の花の模様を見ないフリして、ぎゅっと握りしめた。
言いたくないの?
俺には言えない?
大輝には言ったの?
大輝は知っているんじゃないの?
繋いだ手を離せなかった。
離したらいけないような気がしたから。
どうしようもなく、胸が痛い…もやもやとするこの胸の奥にあるものはなんだろう。
じゅんくんが瞳を閉じて、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきたのを見計らって、俺はじゅんくんのベッドへ潜り込んだ。
そのカラダを癒したくて…
苦恋花病だって、信じたくなかった。
じゅんくんが苦恋花病じゃないと言ったから…
苦恋花病じゃないのかもしれない…そう思いたかった。
でも、うっすらと浮かび上がる花の模様が俺の目に映ってしまった。
その細いカラダを抱き締めて、涙を流した。
俺にも言ってよ…。
俺を頼ってよ。
じゅんくんは…誰に恋をして、どんな辛い思いをしているの?
俺たち友達だろ?
なんでも話して欲しいのに…、俺には何も話してくれないなんて。
俺たちの過ごして来た、あの長い時間は何だったのだろう。
ぎゅっと抱きしめていると、じゅんくんからは苦痛の表情が消えて、顔色がみるみるよくなっていくのがわかった。
俺でもいい?
じゅんくんを癒せるなら、俺が抱きしめてあげるから。
誰に恋をしていたって、片思いの人に伝わらない想いでも、俺が癒してあげる。
だって、俺たちは最高の友達で、親友でライバルで、他にない程相性抜群のバディだから!!
痛みで強張っていたカラダが徐々に、解れていくように、じゅんくんのカラダは力が抜けていった。
もう少しこのまま、じゅんくんを抱いていよう。
夜公演が始まるまで、俺でいいなら…
俺が、じゅんくんを抱き締めていよう。
温かいじゅんくんを抱き締めたまま、俺も目を閉じた。
透弥side
宮城公演の医務室でのことだった。
俺はじゅんくんが苦恋花病だと確信した。
昼公演を終えて、2時間の空きが出来て、じゅんくんはいつものようにぐったりと体力の限界を迎えているように見えた。
『大輝起こして!』と言い残して、じゅんくんは医務室へ向かった。
なぜ?俺じゃなくて、大輝にそれを頼むの?
なぜ俺じゃないの?
俺がじゅんくんの一番の親友だと思っていた。
それなのに?
俺じゃなくて、大輝に言った事が、俺を酷く落ち込ませた。
ぐったりしたじゅんくんが心配で、俺もじゅんくんの後を追うように医務室へ向かった。
ドアを開けると、ベッドにはカーテンが引かれていて、カーテンを開けるとじゅんくんがぐったりと横たわっていた。
寝不足だと言い張るじゅんくんだけど…たぶん嘘。
寝不足なんてもんじゃないくらいに顔色が悪かった。もう寝るからあっち言ってって言われたけど、そんなんでどこかに行くような俺じゃない!
じゅんくんの隣に寝ようとしたけど、キツク断られ、仕方なくベッドの横にある椅子に座った。
椅子に座ったまま、コトンと頭をじゅんくんが寝ている布団にもたげた。
布団からはじゅんくんの手が出ていて、俺の手に触れた。
ん?あれ?
白く…青い…?
よく見ると…うっすらと花の模様が浮かび上がっていた。
これ…って…。
そうだよね…。
もう、間違いないよね…。
ズキンと奥の方で痛む何かを隠して、そっと目を閉じた。
恐る恐る
『ねぇ~、病気…なの…?』って、聞くと
『…違うよ…。…病気じゃ、ない…』って、震えた声が嘘を吐き出した。
『…嘘つき…』
じゅんくんは嘘つきだ…。
苦恋花病を俺に隠した。
その手の花の模様を見ないフリして、ぎゅっと握りしめた。
言いたくないの?
俺には言えない?
大輝には言ったの?
大輝は知っているんじゃないの?
繋いだ手を離せなかった。
離したらいけないような気がしたから。
どうしようもなく、胸が痛い…もやもやとするこの胸の奥にあるものはなんだろう。
じゅんくんが瞳を閉じて、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきたのを見計らって、俺はじゅんくんのベッドへ潜り込んだ。
そのカラダを癒したくて…
苦恋花病だって、信じたくなかった。
じゅんくんが苦恋花病じゃないと言ったから…
苦恋花病じゃないのかもしれない…そう思いたかった。
でも、うっすらと浮かび上がる花の模様が俺の目に映ってしまった。
その細いカラダを抱き締めて、涙を流した。
俺にも言ってよ…。
俺を頼ってよ。
じゅんくんは…誰に恋をして、どんな辛い思いをしているの?
俺たち友達だろ?
なんでも話して欲しいのに…、俺には何も話してくれないなんて。
俺たちの過ごして来た、あの長い時間は何だったのだろう。
ぎゅっと抱きしめていると、じゅんくんからは苦痛の表情が消えて、顔色がみるみるよくなっていくのがわかった。
俺でもいい?
じゅんくんを癒せるなら、俺が抱きしめてあげるから。
誰に恋をしていたって、片思いの人に伝わらない想いでも、俺が癒してあげる。
だって、俺たちは最高の友達で、親友でライバルで、他にない程相性抜群のバディだから!!
痛みで強張っていたカラダが徐々に、解れていくように、じゅんくんのカラダは力が抜けていった。
もう少しこのまま、じゅんくんを抱いていよう。
夜公演が始まるまで、俺でいいなら…
俺が、じゅんくんを抱き締めていよう。
温かいじゅんくんを抱き締めたまま、俺も目を閉じた。
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