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39話 最高のステージ

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38話 最高のステージ


惇希side


甘い夢のような行為を終えた朝。

目が覚めると、空は真っ青な青空だった。

真っ白な雲と、どこまでも抜けるような、青が綺麗な空だった。それは、俺が吐き出した薔薇の花びらの様に真っ青で、どこまでも深い青色をしていた。


久しぶりにカラダが軽くて、手から生えてしまった小さな芽の痛みも気にならないくらいだった。

目が覚めて、まだ寝ている透弥を起こさないようにそっとキスをした。

昨日見た夢を確認するかのように、昨日のアレが夢じゃなかったとを、この唇が透弥の唇の温かさで現実だと確認できた。

もう一度、透弥の唇に唇を重ねた。

温かい…。

これは紛れもなく現実で、昨日のアレは夢でも妄想でもない。

俺に生きる時間を与えてくれた行為。


―――ありがとう。透弥。

俺を癒してくれた透弥にお礼を言って、俺はベッドから起き上がった。

カラダは軽く、久しぶりにすっと起き上がることが出来た。これも、透弥の魔法のお陰だと思う。

例え、あの行為の好きとか恋愛感情がなくても、俺を抱いてくれたことに感謝している。お陰で久しぶりに思い通りにカラダが動く。

久しぶりに軽い足取りで、浴室へ向かった。

シャワーを浴びて、お互いの体液で汚れたカラダを綺麗にした。たくさんの透弥の体液をカラダが吸収していて、まだ、ナカにも透弥が残っていた。でも、俺のナカにある透弥をいつまでもとどめておきたくて、ナカは洗わず表面だけを洗い流した。

不思議と気持ちまで軽くて、今までで一番晴れやかな気持ちかもしれない。

シャワーを終えると、透弥が目を覚ましていて、
『カラダ…だいじょうぶ?』って、俺を心配そうに見た。

『うん!すごく調子がいい!最終日、思いっきり楽しもう!!』

俺たちは着替えて、会場へ向かった。

『おはようっ』
雪と大輝に声をかけると…

雪と大輝の距離が、なんだか少し近い気がして、大輝に
『おはよ、なんかあった?』

って、聞いたら

『まぁっ///…』
なんて、嬉しそうに含み笑いを浮かべた。

そっかぁ。よかった。

雪への罪悪感が消えたわけじゃないけど…。ほんの少しだけ、その罪が軽くなったそんな気がした。

大輝の長年の想いが伝わったと思ったら、なんだか、自分の事みたいに嬉しかった。


それから、昼公演が始まっても、俺の体調はすこぶる良くて、昼公演は完璧に近い出来だった。

昼公演を終えても、俺の体調はずっと良くて、みんなと一緒に夜公演までの時間を過ごした。

時々、透弥が俺のそばに来ては
『大丈夫?医務室行く?』って、耳元で小さな声で言った。

それでも、カラダは軽くそんなの必要ないと思えた。
『大丈夫!すごく調子がいいんだ!カラダが軽くて、10歳は歳が若返ったみたいだ』なんて、笑って見せた。

そして、このツアー最後の夜公演が始まった。

流れる汗も、音も全てがキラキラと輝いていて、自分が病気だなんて忘れるくらいに爽快だった。

こんなにカラダが動くのは久しぶりで、自分のカラダを取り戻したみたいに、力いっぱい踊った。

最後のカンパニュラの前に

『これが、最後のカンパニュラだ!思いっきり踊るから!!最後、一緒に楽しもうっ!』

曲が始まる前に、ステージ袖で透弥に伝えた。

『うん!もちろん楽しもう!俺も楽しむ!』

ステージの真ん中に座り込んで、曲の入りを待ち、イントロが始まると勢いよく立ち上がる。

カラダが軽くて、立ち上がるだけじゃ足りなくて、思いっきり飛び上がった。



イける!
今ならイケる!

前の振付踊れる!!

俺の体調不良のために、負担の少ない振付に変えてしまったけど、今なら前の振付で踊れる!
そんな気がした。

急遽、俺は、以前の振りに変えて踊り出すと、一瞬透弥がハっとした表情で俺を見た。だけど、長年透弥と一緒に踊っていて、透弥ならきっと、前の振付に戻しても大丈夫と踏んでいた。

信頼しているから出来るアドリブだった。
そして、透弥は思った通り、前の振付で踊り始めた。

信じてた。
きっと、大丈夫だって。

ふたりで踊るカンパニュラ。

何度も視線を交わして、濃厚なラブシーンを演じるみたいに、ステージの上で透弥と踊った。

音も観客の熱気も俺たちの想いも…
全部が完璧だった!!

そして、今まで経験したことのない、最高のステージだった!





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