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26話 キスの効果
しおりを挟む26話 キスの効果
惇希side
お前は…友達とあんなキスするのか?
それなら、雪にもしてやれよ。
雪がキスしたいって、知ってる?
あほ…。
涙が溢れるのを止められなくて。
それでも、透弥とキスをしてカラダが軽くなっているのを実感しているだけに、なんとも言えない気持ちになる。
医務室に来る時には、壁を伝わないと来れなくて透弥に抱きかかえられてきたのに…
今なら、痛みに耐えながらでも、自分の足で歩きたぶん夜の公演を踊りきることが出来る。
そんな風に思えるくらいに体力は回復していた。
皆の元へ戻ると、透弥は俺に視線を向け、歩みよろうとしたが、首を振って俺はそれを止めた。
変にふたりの距離を意識しすぎたかもしれない。でも、それくらい俺たちは距離を置くべきだ!
なぜなら、雪の目があるから。
雪の大きな瞳に、俺と透弥はどんな風に映ってしまったのだろう…。
不安に思っていると、雪が
『じゅんくん?大丈夫?…公演終わりより、ちょっと顔色よくなったんじゃない?』って、俺を心配してきてくれた。
キスをして、元気になりましたなんて口が裂けても言えない。
ごめんな。雪…。
でも、このことは絶対に雪にバレないようにするから。
雪を悲しませるようなことは、したくないから。
あと、少しだけ…
雪には内緒にさせて。
『おう!全然大丈夫!!ほら、次の公演に向けて準備しないとっ。ほらっ』
ほんの少し顔色が良くなった自分を鏡に映して、メイクを始めようとすると…
『僕がしてあげる』
雪があっという間に、メイクを施してイケメンに変えてくれた。
頬にチークをのせて、ほんのりピンクに染めると病気に罹る前みたいだった。
『ありがとう!!なんか、お礼…したいんだけど?いつも、メイクしてもらってるからさ。』
『別にいいよ!好きでメイクしてあげてるだけだし!自分のだけじゃなくて、人の事メイクするのもすごく好きだから♡』
『そういうわけにはいかないって!欲しいもの考えときな!高すぎるやつはダメだからな、ははっ。』
雪と笑い合った。
そして、無事に夜公演を終わらせた。
重たい体を引きづるように、ホテルの部屋へ行った。
広島でのホテル宿泊の相手は大輝だった。
大輝なら、なんの気兼ねもなくぐったりできる。
クルーのみんなは広島のお好み焼きを食べに行った。もちろん、大輝も雪も透弥も一緒だ。
俺は、休みたいからと言ってみんなとは一緒に行かずに、部屋にひとり戻った。
部屋に戻ってシャワーを浴びると、どっと疲れが出てきて…
透弥としたキスの効き目が切れるみたいに、カラダが重たくなっていった。
ベッドに押し付けられたみたいに、カラダの自由が奪われて、夕飯をまだ食べていなかったけど…起き上がれそうもないくらいに辛くなった。
…眠れば、回復するのだろうか?
足に絡みつく薔薇のトゲがチクチクと皮膚に鈍い痛みを与え続ける。
病院でもらった気休めの痛み止めを飲もうと、手を伸ばしたけど…、届かず薬を飲むことを断念した。
歩いて取りに行けるほどの体力は、もう残されていなかった。
大輝が帰って来るまで、この痛みに耐えようとした時
トントンとドアをノックする音がして、
『大輝…おかえり…、悪いんだけど…そこの…』
って、ドアの方みたら、大輝じゃなくて透弥だった。
手にはビニール袋を持ってて
『夕飯…食べてないだろ?いっしょ食べよ』
そう言って、俺のベッドへ腰かけた。
『は?お前…なんで?…お好み焼き…みんなと食べに行かなかったの?』
透弥はビニール袋の中から、お好み焼きを取り出して、にっこり笑って
『お好み焼き!食べに来た!』
っ//////
なんだ!それ!
俺をきゅんとさせんなよ!!
そんな、かっこいい事すんなよ!!
『食べよ!あったかいうちが美味しいからさ』
俺は、起き上がろうとしたけど、やっぱり起き上がることすらできなくて
しばらく、藻掻いて起き上がろうと頑張ってて
そしたら、見兼ねた透弥が…
『ちゅーしよっか?』って…
何故にそうなる?
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