22 / 60
22話 痛い、苦しい…まだ、できる
しおりを挟む
22話 痛い、苦しい…まだ、できる
惇希side
体力が回復したカラダは軽く、本番もしっかりと踊ることが出来た。
胸の痛みもないし、透弥の魔法は本当にすごい!!
俺を完全に回復させてた!
あぁ、これが医師が言ってた、治療法のひとつか?
片思いの相手との性交渉ってやつね!
でも、性交渉しなくても、触れるだけで充分効果はある!!
すげ~!!
新たな発見に、胸が躍った。
そして、体調万全の俺と透弥との【カンパニュラ】は最高に気持ちが良かった。
会場中の視線を釘付けにして、ふたりで踊る最高の時間。
宮城を終えて、次は大阪。
地元である大阪では、実家に帰って、のんびりと過ごした。お父さんとお母さんとそして、お姉ちゃと、皆で食事をしたり家族と過ごす時間を楽しんだ。
特別な事なんて何もしなかったけど、また明日も帰って来るような、そんな時間を過ごして、
『じゃあ、また』と、言って大阪の三日間を実家に宿泊して終えた。
また、会えるみたいな顔して、家族に別れを告げた。
もちろん、苦恋花病の事は一切言わなかった。
…きっと、もう…
家族に会うことは無いだろう。
今までありがとうとか、元気でとか…そんな事を言ってしまったら、きっと、俺はダメになる。
まだ、頑張らなくちゃいけないから。
お別れは言わない。
横浜、愛知、静岡…ツアーはどんどん佳境にはいって後半戦…
手の掌だけに現われていた花模様は、足の平から徐々に上がって、足首辺りまで綺麗な青い模様を描き始めていた。
皮膚が透き通って、薔薇のうっすらと模様が現われだした。
体力も、以前よりも落ちて日々の一公演一公演が、苦しくて辛かった。
それでも、頑張れたのは、透弥と一緒だから。
透弥と一緒に踊ることが、何よりも嬉しくて、楽しい時間だったからだと思う。
それでも、やっぱり、気力じゃどうにもならない時がある。
そんな時は決まって、透弥が俺と一緒に医務室で昼寝をしたり、俺の背中を擦ってくれたり、気が付けば俺を抱き締めて眠っていたりと、俺に魔法をかけるみたいに俺を回復させてくれていた。
やっぱり、お前は魔法使いだったのか?
広島と新潟を残す福島公演の最終日の2公演目の事だった。
一公演目を終えて、ぐったりとするカラダを休ませるため、医務室へ向かい、恒例のように透弥も俺の隣で仮眠を取っていた。
俺に触れて、俺を抱き締める様に眠る
医務室で仮眠をとるのが、日課になっていた。横浜公演くらいまで、雪は俺と透弥が一緒に昼寝をすることに、ブツブツと文句を言って、時折毒を吐いた。
『なんで、藤野くんまで一緒に医務室行くの?ひとりで行けばいいじゃん!!』
そう言われれば、その通りだ!
透弥に来てもらう、義理はない。
でも、きっと、透弥と一緒に昼寝しなければ…もう、次の公演は踊ることが難しい…。そんな状況になっていた。
それが、愛知公演を境に不思議と、雪は俺に文句も言わなくなったし、毒も吐かなくなった。
心なしか、俺の前で透弥とイチャイチャする事も少なくなった様に感じる。
それが気のせいなのか、俺が痛みに耐えることで精一杯で他が見えなくなっていただけなのかはわからない。
それでも、苦恋花病の症状は酷くなるばかりだった。
透弥に抱きしめられて、仮眠を取るとカラダが軽くなっていたのに、今日は仮眠を取っても全然力が入らず、起き上がることさえできなくなっていた。
『…そろそろ…時間…だよな…』
起き上がろうとしても、カラダがベッドに縛り付けられてるみたいに、動けない。
透弥が俺を見て、
『じゅんくん…今日は、全然顔色が良くなってない…もしかして、起き上がれないの?』
次の公演まではあと一時間…。
『…大丈夫…、大丈夫…、もう少ししたら…きっと、大丈夫…』
そう言ったけど、自分でもわかっていた。
最初の頃の様に、抱き締められただけでは体力が回復しなくなっていた事を。
『…でも』
起き上がろうとしても、まるで自分のカラダじゃないみたいに動かなくて、チクチクと痛む胸の痛みと、ヒリヒリと足の裏が痛んだ。
次の瞬間、足の裏に激痛が走って
『う゛っーーっ。あ゛っ!はぁっ…あ゛っ』
カラダの中からじりじりと蠢く痛みが、足の皮膚を突き破り、激痛を与えた。
『はぁ…あ゛ぁっっ…あ゛う゛っ…』
『じゅんくんっ!!じゅんくんっ!!どうしたの?大丈夫?…痛いの?どこが痛いの?』
俺は必死に痛みに耐えた。
皮膚が引き裂かれて、体内から体外へ何かが出ていることは、わかっていたけど、かずやの前でそれを見せる訳にはいかないという一心で、ひたすらに、唇を噛んでその痛みに耐えた。
痛む場所を押さえる事も、できないまま。ひたすら痛みに耐えた。
何も話せないし、ひたすら唇を噛んでその痛みに耐えるしかなかった。
足の裏から、何かが体外へ出て俺に耐えがたい苦痛を与えた。
全身は強張り、その痛みに耐えようと意識をチャットダウンした。
ようやく目が覚めた時には、2公演目が終わっていた。
衣装のまま、大輝が俺の様子を見に来て
『目が覚めた?』って、汗を流しながら言った。
『え?ライブは?』
『…無理だったでしょ?そんなんじゃ踊れなかったでしょ?終わったよ…』
大輝が俺に教えてくれた。
『なんで!!なんで起こさなかったんだよっ!!起こせよ!!』
『…無理だろ、無理だっただろ…意識を失っちゃうくらい、辛かったんじゃないの?』
『……まだ…できる…っ…まだ、踊れるっ…だいきっ…俺、まだっ…できるっ…う゛っぅっ…』
大輝は、泣きじゃくる俺の頭をただ黙って、撫でてくれた。
惇希side
体力が回復したカラダは軽く、本番もしっかりと踊ることが出来た。
胸の痛みもないし、透弥の魔法は本当にすごい!!
俺を完全に回復させてた!
あぁ、これが医師が言ってた、治療法のひとつか?
片思いの相手との性交渉ってやつね!
でも、性交渉しなくても、触れるだけで充分効果はある!!
すげ~!!
新たな発見に、胸が躍った。
そして、体調万全の俺と透弥との【カンパニュラ】は最高に気持ちが良かった。
会場中の視線を釘付けにして、ふたりで踊る最高の時間。
宮城を終えて、次は大阪。
地元である大阪では、実家に帰って、のんびりと過ごした。お父さんとお母さんとそして、お姉ちゃと、皆で食事をしたり家族と過ごす時間を楽しんだ。
特別な事なんて何もしなかったけど、また明日も帰って来るような、そんな時間を過ごして、
『じゃあ、また』と、言って大阪の三日間を実家に宿泊して終えた。
また、会えるみたいな顔して、家族に別れを告げた。
もちろん、苦恋花病の事は一切言わなかった。
…きっと、もう…
家族に会うことは無いだろう。
今までありがとうとか、元気でとか…そんな事を言ってしまったら、きっと、俺はダメになる。
まだ、頑張らなくちゃいけないから。
お別れは言わない。
横浜、愛知、静岡…ツアーはどんどん佳境にはいって後半戦…
手の掌だけに現われていた花模様は、足の平から徐々に上がって、足首辺りまで綺麗な青い模様を描き始めていた。
皮膚が透き通って、薔薇のうっすらと模様が現われだした。
体力も、以前よりも落ちて日々の一公演一公演が、苦しくて辛かった。
それでも、頑張れたのは、透弥と一緒だから。
透弥と一緒に踊ることが、何よりも嬉しくて、楽しい時間だったからだと思う。
それでも、やっぱり、気力じゃどうにもならない時がある。
そんな時は決まって、透弥が俺と一緒に医務室で昼寝をしたり、俺の背中を擦ってくれたり、気が付けば俺を抱き締めて眠っていたりと、俺に魔法をかけるみたいに俺を回復させてくれていた。
やっぱり、お前は魔法使いだったのか?
広島と新潟を残す福島公演の最終日の2公演目の事だった。
一公演目を終えて、ぐったりとするカラダを休ませるため、医務室へ向かい、恒例のように透弥も俺の隣で仮眠を取っていた。
俺に触れて、俺を抱き締める様に眠る
医務室で仮眠をとるのが、日課になっていた。横浜公演くらいまで、雪は俺と透弥が一緒に昼寝をすることに、ブツブツと文句を言って、時折毒を吐いた。
『なんで、藤野くんまで一緒に医務室行くの?ひとりで行けばいいじゃん!!』
そう言われれば、その通りだ!
透弥に来てもらう、義理はない。
でも、きっと、透弥と一緒に昼寝しなければ…もう、次の公演は踊ることが難しい…。そんな状況になっていた。
それが、愛知公演を境に不思議と、雪は俺に文句も言わなくなったし、毒も吐かなくなった。
心なしか、俺の前で透弥とイチャイチャする事も少なくなった様に感じる。
それが気のせいなのか、俺が痛みに耐えることで精一杯で他が見えなくなっていただけなのかはわからない。
それでも、苦恋花病の症状は酷くなるばかりだった。
透弥に抱きしめられて、仮眠を取るとカラダが軽くなっていたのに、今日は仮眠を取っても全然力が入らず、起き上がることさえできなくなっていた。
『…そろそろ…時間…だよな…』
起き上がろうとしても、カラダがベッドに縛り付けられてるみたいに、動けない。
透弥が俺を見て、
『じゅんくん…今日は、全然顔色が良くなってない…もしかして、起き上がれないの?』
次の公演まではあと一時間…。
『…大丈夫…、大丈夫…、もう少ししたら…きっと、大丈夫…』
そう言ったけど、自分でもわかっていた。
最初の頃の様に、抱き締められただけでは体力が回復しなくなっていた事を。
『…でも』
起き上がろうとしても、まるで自分のカラダじゃないみたいに動かなくて、チクチクと痛む胸の痛みと、ヒリヒリと足の裏が痛んだ。
次の瞬間、足の裏に激痛が走って
『う゛っーーっ。あ゛っ!はぁっ…あ゛っ』
カラダの中からじりじりと蠢く痛みが、足の皮膚を突き破り、激痛を与えた。
『はぁ…あ゛ぁっっ…あ゛う゛っ…』
『じゅんくんっ!!じゅんくんっ!!どうしたの?大丈夫?…痛いの?どこが痛いの?』
俺は必死に痛みに耐えた。
皮膚が引き裂かれて、体内から体外へ何かが出ていることは、わかっていたけど、かずやの前でそれを見せる訳にはいかないという一心で、ひたすらに、唇を噛んでその痛みに耐えた。
痛む場所を押さえる事も、できないまま。ひたすら痛みに耐えた。
何も話せないし、ひたすら唇を噛んでその痛みに耐えるしかなかった。
足の裏から、何かが体外へ出て俺に耐えがたい苦痛を与えた。
全身は強張り、その痛みに耐えようと意識をチャットダウンした。
ようやく目が覚めた時には、2公演目が終わっていた。
衣装のまま、大輝が俺の様子を見に来て
『目が覚めた?』って、汗を流しながら言った。
『え?ライブは?』
『…無理だったでしょ?そんなんじゃ踊れなかったでしょ?終わったよ…』
大輝が俺に教えてくれた。
『なんで!!なんで起こさなかったんだよっ!!起こせよ!!』
『…無理だろ、無理だっただろ…意識を失っちゃうくらい、辛かったんじゃないの?』
『……まだ…できる…っ…まだ、踊れるっ…だいきっ…俺、まだっ…できるっ…う゛っぅっ…』
大輝は、泣きじゃくる俺の頭をただ黙って、撫でてくれた。
34
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~
天埜鳩愛
BL
ハピエン約束! 義兄にしか興味がない弟 × 無自覚に翻弄する優しい義兄
番外編は11月末までまだまだ続きます~
<あらすじ>
「柚希、あの人じゃなく、僕を選んで」
過剰な愛情を兄に注ぐ和哉と、そんな和哉が可愛くて仕方がない柚希。
二人は親の再婚で義兄弟になった。
ある日ヒートのショックで意識を失った柚希が覚めると項に覚えのない噛み跡が……。
アルファの恋人と番になる決心がつかず、弟の和哉と宿泊施設に逃げたはずだったのに。なぜ?
柚希の首を噛んだのは追いかけてきた恋人か、それともベータのはずの義弟なのか。
果たして……。
<登場人物>
一ノ瀬 柚希 成人するまでβ(判定不能のため)だと思っていたが、突然ヒートを起こしてΩになり
戸惑う。和哉とは元々友人同士だったが、番であった夫を亡くした母が和哉の父と再婚。
義理の兄弟に。家族が何より大切だったがあることがきっかけで距離を置くことに……。
弟大好きのブラコンで、推しに弱い優柔不断な面もある。
一ノ瀬 和哉 幼い頃オメガだった母を亡くし、失意のどん底にいたところを柚希の愛情に救われ
以来彼を一途に愛する。とある理由からバース性を隠している。
佐々木 晶 柚希の恋人。柚希とは高校のバスケ部の先輩後輩。アルファ性を持つ。
柚希は彼が同情で付き合い始めたと思っているが、実際は……。
この度、以前に投稿していた物語をBL大賞用に改稿・加筆してお届けします。
第一部・第二部が本篇 番外編を含めて秋金木犀が香るころ、ハロウィン、クリスマスと物語も季節と共に
進行していきます。どうぞよろしくお願いいたします♡
☆エブリスタにて2021年、年末年始日間トレンド2位、昨年夏にはBL特集に取り上げて
頂きました。根強く愛していただいております。
愛をなくした大公は精霊の子に溺愛される
葉月めいこ
BL
マイペースなキラキラ王子×不憫で苦労性な大公閣下
命尽きるその日までともに歩もう
全35話
ハンスレット大公領を治めるロディアスはある日、王宮からの使者を迎える。
長らく王都へ赴いていないロディアスを宴に呼び出す勅令だった。
王都へ向かう旨を仕方なしに受け入れたロディアスの前に、一歩踏み出す人物。
彼はロディアスを〝父〟と呼んだ。
突然現れた元恋人の面影を残す青年・リュミザ。
まっすぐ気持ちを向けてくる彼にロディアスは調子を狂わされるようになる。
そんな彼は国の運命を変えるだろう話を持ちかけてきた。
自身の未来に憂いがあるロディアスは、明るい未来となるのならとリュミザに協力をする。
そしてともに時間を過ごすうちに、お互いの気持ちが変化し始めるが、二人に残された時間はそれほど多くなく。
運命はいつでも海の上で揺るがされることとなる。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~
大波小波
BL
第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。
ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。
白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。
雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。
藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。
心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。
少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる