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18話 笑っとけ!
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18話 笑っとけ!
惇希side
花びらを吐きまくった後は、いつも全身がどっと重たく感じる。
自分のカラダなのに、まるでいう事をきかなくなって、重たい鉛を手足に巻き付けられているようなそんな感覚だ。
カラダを動かすことも困難なくらいに重たくて、自分のカラダじゃないみたいになる。
大輝が、俺の吐いた花びらを片づけてくれて、俺はいつの間にか眠ってしまっていたみたいで
ぼんやりと目を開けると、そこには
透弥がいた。
透弥は俺を見て、ほっと息を吐いて俺を抱き締めた。
心配そうに俺を見つめる瞳が優しくて、心地よくて、すっと伸びて来た透弥の大きな手が、俺の頬を包んだ。
俺に触れた大きな手は、温かくて、まるで、魔法みたいに青い光が出ているみたいで、触れられたところがぽぉわぁっと軽くなった。
すぅーっと胸の痛みと、吐き気が消えていった。
俺を見つめる透弥の指が、俺の唇をなぞって、
どれくらい見つめ合っていたのだろう
時間が止まったみたいに、じっと見つめ合ってた。
透弥の幻でも見ている様に、ただ目の前の透弥を見ていた。
ゆっくりと近づいてくる透弥の唇が、俺の唇に触れて、重なる。
お互いの熱が唇から伝わって、それでも唇は重なったままで、
そして、ゆっくりと離れていった。
それから、すぅっと体が軽くなって、温かいような、体中の毒素が抜けたみたいな、そんな不思議な感覚と安心感に包まれて、とろとろとまた意識が薄れていった。
遠くで雪の声が聞こえてて
『じゅんくん…大丈夫かな?』
『大丈夫だよ、さっきよりも顔色良くなってたし』透弥の声がした。
『なんかあったら、俺かだいちゃん呼ぶといいよ。俺は部屋に戻るから。雪、大丈夫?』
『うん。ありがとう。藤野くん。おやすみ』
『おやすみ』
それから、透弥の声は聞こえなくなった。
夢…見てたのかな?
そして、また意識は遠く落ちていった。
窓から差し込んでくる日差しで、目が覚めるとカラダは軽くなっていた。
それでも、掌花は消えること無くて、日に日に濃くなってて。ひりひり痛む手の掌を眺めて、震える手をぎゅっと握って、ゆっくりと息を吸い込む
…大丈夫、まだできる。
…大丈夫、最後まで、できる。
…大丈夫…、最後までやり切る!
自分に言い聞かせて、隣のベッドを見たら、雪がすやすやと眠っていた。
可愛い寝顔に、ほっとした。
心配かけてごめん。
絶対に雪には気づかれないようにするから!
雪は、なにも心配しないで笑っていればいい。
雪は大きなきゅるきゅるの瞳を弾ませて、笑っていればいいから。
軽くなったカラダを起こして、隣のベッドで眠る雪に布団をかけて、シャワーを浴びに浴室へ向かった。
浴室から戻ると
『じゅんくんっ!大丈夫?』
って俺に抱き着いてきて
『ごめんな、雪。びっくりしただろ?もう大丈夫だから。ちょっと疲れてたのかな?もう、大丈夫だから。心配かけてごねんな。』
『…じゅんくん。ほんとに大丈夫なの?けっこう吐いてたよね?…それに、まだ、顔色悪いけど?』
雪の頭をぽんぽんと撫でて
『大丈夫だから心配すんなって!俺も歳なのかな?一日2公演は、なかなかしんどい!』って、笑って見せた。
それでも、雪の顔は全然笑ってなくて…
『…じゅんくん、あのさ…、昨日…やっぱ、…いい…』
なにか言いかけて、雪は黙ってしまって、何とも言えない空気が流れた。
『みんな、心配しすぎなんだって!!ほんとに大丈夫だからさ!!疲れてるだけだって』
俺は、いつもより明るく振る舞った。
『今日も、ガシガシ踊るぞ!!今日の公演もすんげ~楽しみ』
『…それなら、いいけど。無理はしないで。…じゃあ、メイクしてあげる!最高のビジュに仕上げてあげるね。』
『おう!頼んだぞ!もともとイケメンだけど、雪のメイクでビジュ爆あげでいくぞ!!』
雪に促されて、椅子に座りメイクが始まった。
俺の顔に色をのせて、青白い顔をピンク色に染めていく雪。
俺と雪…いい関係だ。
可愛い後輩で、気も合う。
最後まで、雪には気づかれないようにするから!!
俺をメイクしている雪の顔が、鏡に映し出されると、いつものキラキラな笑顔じゃなくて、曇り空みたいなどんよりとした表情だった。
『そんな、顔すんなって!!笑っとけ!!可愛い顔が台無しだぞ!!雪の笑顔は天使の微笑みだんだから!!周りのみんなを笑顔に変えるんだからさ』
笑っとけ!
何があっても笑っとけよ!
雪が笑顔だったら、きっと、透弥も大輝も笑顔になれるから。
頼んだぞ!
どんな時も、笑顔でいてくれ!
なにがあっても、笑っとけよ!
俺に…なんかあっても…
雪は、笑っとけ!
惇希side
花びらを吐きまくった後は、いつも全身がどっと重たく感じる。
自分のカラダなのに、まるでいう事をきかなくなって、重たい鉛を手足に巻き付けられているようなそんな感覚だ。
カラダを動かすことも困難なくらいに重たくて、自分のカラダじゃないみたいになる。
大輝が、俺の吐いた花びらを片づけてくれて、俺はいつの間にか眠ってしまっていたみたいで
ぼんやりと目を開けると、そこには
透弥がいた。
透弥は俺を見て、ほっと息を吐いて俺を抱き締めた。
心配そうに俺を見つめる瞳が優しくて、心地よくて、すっと伸びて来た透弥の大きな手が、俺の頬を包んだ。
俺に触れた大きな手は、温かくて、まるで、魔法みたいに青い光が出ているみたいで、触れられたところがぽぉわぁっと軽くなった。
すぅーっと胸の痛みと、吐き気が消えていった。
俺を見つめる透弥の指が、俺の唇をなぞって、
どれくらい見つめ合っていたのだろう
時間が止まったみたいに、じっと見つめ合ってた。
透弥の幻でも見ている様に、ただ目の前の透弥を見ていた。
ゆっくりと近づいてくる透弥の唇が、俺の唇に触れて、重なる。
お互いの熱が唇から伝わって、それでも唇は重なったままで、
そして、ゆっくりと離れていった。
それから、すぅっと体が軽くなって、温かいような、体中の毒素が抜けたみたいな、そんな不思議な感覚と安心感に包まれて、とろとろとまた意識が薄れていった。
遠くで雪の声が聞こえてて
『じゅんくん…大丈夫かな?』
『大丈夫だよ、さっきよりも顔色良くなってたし』透弥の声がした。
『なんかあったら、俺かだいちゃん呼ぶといいよ。俺は部屋に戻るから。雪、大丈夫?』
『うん。ありがとう。藤野くん。おやすみ』
『おやすみ』
それから、透弥の声は聞こえなくなった。
夢…見てたのかな?
そして、また意識は遠く落ちていった。
窓から差し込んでくる日差しで、目が覚めるとカラダは軽くなっていた。
それでも、掌花は消えること無くて、日に日に濃くなってて。ひりひり痛む手の掌を眺めて、震える手をぎゅっと握って、ゆっくりと息を吸い込む
…大丈夫、まだできる。
…大丈夫、最後まで、できる。
…大丈夫…、最後までやり切る!
自分に言い聞かせて、隣のベッドを見たら、雪がすやすやと眠っていた。
可愛い寝顔に、ほっとした。
心配かけてごめん。
絶対に雪には気づかれないようにするから!
雪は、なにも心配しないで笑っていればいい。
雪は大きなきゅるきゅるの瞳を弾ませて、笑っていればいいから。
軽くなったカラダを起こして、隣のベッドで眠る雪に布団をかけて、シャワーを浴びに浴室へ向かった。
浴室から戻ると
『じゅんくんっ!大丈夫?』
って俺に抱き着いてきて
『ごめんな、雪。びっくりしただろ?もう大丈夫だから。ちょっと疲れてたのかな?もう、大丈夫だから。心配かけてごねんな。』
『…じゅんくん。ほんとに大丈夫なの?けっこう吐いてたよね?…それに、まだ、顔色悪いけど?』
雪の頭をぽんぽんと撫でて
『大丈夫だから心配すんなって!俺も歳なのかな?一日2公演は、なかなかしんどい!』って、笑って見せた。
それでも、雪の顔は全然笑ってなくて…
『…じゅんくん、あのさ…、昨日…やっぱ、…いい…』
なにか言いかけて、雪は黙ってしまって、何とも言えない空気が流れた。
『みんな、心配しすぎなんだって!!ほんとに大丈夫だからさ!!疲れてるだけだって』
俺は、いつもより明るく振る舞った。
『今日も、ガシガシ踊るぞ!!今日の公演もすんげ~楽しみ』
『…それなら、いいけど。無理はしないで。…じゃあ、メイクしてあげる!最高のビジュに仕上げてあげるね。』
『おう!頼んだぞ!もともとイケメンだけど、雪のメイクでビジュ爆あげでいくぞ!!』
雪に促されて、椅子に座りメイクが始まった。
俺の顔に色をのせて、青白い顔をピンク色に染めていく雪。
俺と雪…いい関係だ。
可愛い後輩で、気も合う。
最後まで、雪には気づかれないようにするから!!
俺をメイクしている雪の顔が、鏡に映し出されると、いつものキラキラな笑顔じゃなくて、曇り空みたいなどんよりとした表情だった。
『そんな、顔すんなって!!笑っとけ!!可愛い顔が台無しだぞ!!雪の笑顔は天使の微笑みだんだから!!周りのみんなを笑顔に変えるんだからさ』
笑っとけ!
何があっても笑っとけよ!
雪が笑顔だったら、きっと、透弥も大輝も笑顔になれるから。
頼んだぞ!
どんな時も、笑顔でいてくれ!
なにがあっても、笑っとけよ!
俺に…なんかあっても…
雪は、笑っとけ!
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