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17話 俺の味方

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17話 俺の味方




惇希side


雪と透弥がキスする事を考えたら、ズキズキと…胸が痛んで
一気に込み上げる吐き気…


う゛っ…


『う゛っ…ごめっ…』


口元を押さえて、トイレに駆け込む


『っう゛っ…うぇっ…ぉえっ…』


『じゅんくん?…大丈夫?』


鍵をかけていたので、中に入って来ることは無くて、雪はドアの向こう側で俺を心配している

…大丈夫…そう言わなければいけないのに…


出てくるのは、言葉ではなくて

深い青色の薔薇の花びら


次から次へと零れ落ち、その薔薇の青はどんどん深くなっていく


押さえた口元からも、はらはらと薔薇の花びらが零れ落ちて、周囲を花びらが舞っていた。

『っ…おぇっ…う゛っ…うぇっ…』
止まらない吐き気に、どんどん体力は奪われて、目の前が霞んで見えた。

『じゅんくんっ!じゅんくんっ!…どうしようっ…開けてっ!!…大丈夫?…ねぇ
大丈夫?っここ、開けてっ!!』


ドアの向こう側では、雪が戸惑っていて、その様子がうつろな俺にさえ、手に取るように分かった。

雪…ごめん…。
心配してもらえる資格なんてないのに…

『…だいちゃんっ…来て!直ぐに』
そんな事を言っていたと思う。

少しずつ遠のいていく意識の中で、雪が大輝に助けを求めているのがわかった。

しばらくすると、ドンドンっとドアをノックする音が聞こえて

『じゅんくんっ!大丈夫?俺!大輝!!だから、開けて!!雪は今、俺の部屋でふじさんといるから!俺ひとりだから。ここ開けて!』

…残った力を振り絞って、這っていって鍵に手を伸ばした。

カチっ

鍵を開けるとすぐに、ドアが開いて、大輝が俺を抱きかかえた。

『なにしてんのっ!!こうなる前に言えって言ったよね?…こんなに吐いて…苦しかっただろ?なんで、もっと早く助けを呼ばないの?』

大輝は、俺が散らした花びらを見回して言った。

『…突然、だった…から…。吐くの…止まらなくなって…うっ…』

まだ少し残る吐き気と胸の痛みが、さらに体力を失わせた

『立てる?…ダメそうだな…』

大輝は、俺の腕を肩にかけて、抱えるようにベッドへ運んでくれた

『…どうしたらいいの?これ、なんか治療法とか薬とかある?』

『…少ししたら、落ち着くから…大丈夫…うっ…』

『大丈夫そうには見えないって!!…病院行く?』
『…行っても…仕方ない。薬も…治療もなにもないんだって…』

『………』

大輝は、黙って俺を見ていた。

『…少し、すれば…落ち着くから…大丈夫…。雪は?』

『…雪なら大丈夫。少しびっくりしてたみたいだけど…。今はふじさんといるよ。…あっ…』


『大丈夫…雪が…。俺の事、心配してて…。不安にさせちゃったから。大丈夫なら良かった…』

『じゅんくんの事、すごく心配してたよ。だから、俺の事呼んで助けてって』

雪…心配かけてごめん。

『…どうする?…雪と同じ部屋辛いなら、代わる?』

『ううん…俺が、悪いから。罪悪感…。雪はなんにも悪くない。…雪、部屋に戻って来てもかまわないよ』


『でも…』
大輝は心配そうに俺を見て、それでも俺は大丈夫だと、首を振ると、大輝はぁ~とため息を吐いた。

『そうやって強がるところ、じゅんくんの悪いところだよ…そんなに強がって、辛いの自分でしょ?』

『…仕方ないだろ?…これが俺なんだから。今更、変えられないって。雪…部屋に戻って来ても大丈夫…あっ!トイレ!花びらまみれだ…』

立ち上がろうとしたら、倦怠感が強くて、起き上がることが出来なくて
起き上がろうとした肩を掴まれて

『…俺がやっておくから、休んでて。そんなんで明日、大丈夫?』

『少し休めば…大丈夫だと思う…』

大輝は、また、はぁ~っと、ひとつ大きなため息ついて花びらを片づけにトイレに向かった。

大輝、ありがとう。
お前がいてくれてよかった。

迷惑かけて、ごめん。

あと少しだから…。

あと少しだけ…。
わがまま、言ってもいいかな?



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