16 / 60
16話 罪悪感と贖罪(しょくざい)
しおりを挟む
16話 罪悪感と贖罪(しょくざい)
惇希side
北海道公演を終えて、次は宮城公演だ。
宮城のホテルは一泊で、雪と同じに部屋になった。
透弥の事さえなければ、雪とは気が合うし、おしゃべりしててもすごく楽しい、一番仲のいい後輩だ。
夜公演を終えて、透弥と雪は、またふたりで食事に行って、俺はひとり簡単に夕飯を済ませて部屋に戻ってた。
ひとりで過ごす時間は、苦しくて何をしていても透弥の事を考えてしまう。
苦恋花病になってからの方が、透弥を想っているような気がする。
手の掌の模様は、日に日に濃く色づいて、手の中に青い薔薇の花びらを握っているような状態になっていた。
手の掌を見つめながら、このままじゃ油断するとバレてしまうかもしれない
そう思うだけで、精神的にも疲弊していった。
―――気をつけなくちゃ…絶対にバレる訳にはいかない。
そんな事考えていたら、ホテルの部屋の外で雪の声が聞こえた。
丁度、ドアの前辺りでふたりで会話しているのか、雪の声は何をいっているのかさえよくわかるくらいだ。
『なんでっ!!まだ、部屋に帰りたくないっ!!』
雪が大声を出していた。
『明日も公演あるんだから。今日は大人しく、お互いの部屋に帰ろう。明日もまた会えるから。』
なだめるような口調の透弥に、明らかに雪はイラついているようだった。
『藤野くん!そればっかっ!!もういいっ!!』
雪の怒鳴る声が聞こえて直ぐに、ガチャと音が鳴って、部屋に雪が現れた。
不機嫌そうに、荷物を置いて、でも、悲しそうに瞳を潤ませていた。
『雪?どうした?透弥と喧嘩でもしたのか?』
堪らず声をかけると
『じゅんくんっ///…グスっ…グスっ…』
俺に抱き着き、グスグスと泣き始めた。
『透弥とけんかでもしたのか?』
『…僕が悪いってわかってるっ!でも、…』
どうやら、雪はもっと透弥と一緒に居たくて、駄々をこねたらしい。それを、透弥に諭されて納得がいかずに、あんな口調になって喧嘩腰になってしまったと、涙ながらに話してくれた。
雪の背中を擦りながら、雪の話を聞いていたら、
突然雪が俺の顔を見て
『藤野くん…まだ、ちゅーもしてくれない!!』
突然の雪の発言に戸惑いを隠しきれなくなる
『えっ?』
『付き合う前はふざけて、ちゅーするマネとかよくしてたのに…付き合ってから、そんなのもないし!いい雰囲気になりそうだったら、わざとふざけだして、そういう雰囲気壊すの!!なんで?なんで?僕、もう子供じゃないっ!!』
俺は、戸惑っていた。
先日の北海道で、透弥とキスしていたから…。
そんなこと、雪に言えるわけもなく、俺の中の罪悪感が、俺を苦しめる。
『…そっかぁ。』
大輝の言葉が頭をよぎった
【雪を悲しませたら、許さない】
俺は少し浮かれていたのかもしれない。
透弥とのキス、透弥に抱きしめられて…
少し、いい気になっていたのかもしれない。
雪もまた、付き合っても、なお、悩みを抱えている。
先日透弥とキスしてしまった、雪へのせめてもの罪滅ぼしに、
『雪は可愛いから、大切にしたいんじゃないかな?どうでもいいなら、テキトーにちゅーしちゃうんだと思う。でもさ、雪とのことちゃんと考えてるから、大切にとってあるんじゃないかな?』
雪を精一杯慰める。
それが、俺の雪への謝罪であり贖罪だ。
『そう…かな?』
泣いていた雪の顔は、少しはにかんで、露骨に嬉しさが隠し切れないと、そういう顔をした。
ホッとしている自分と、自虐的な言葉に胸を痛める自分がいた。
それでも、あのキスの罪は重いだろうと思っている。
そして、雪よりも先にキスしてしまった罪を、俺は受けなければならない。
『透弥ってさ、ああ見えても真面目だし。雪を大切にしたいんじゃないかな?』
『でも、もう一ヶ月も経つんだよ!付き合ってから!藤野くんてさぁ、もっと積極的でちょっとえっちだと思ってた!なんか、えっちとか上手そうだし、大人だから…なんか、すぐにでもえっちなことするんじゃないかって、思ってたから…余計に、手も出されなくて…焦ってる』
…ズキンっ…ぎゅーっと胸が締め付けられる
さすがに、ふたりのそんな話を聞くのは苦しくて、それでも、その罪に耐えなければと思った。
そっと胸の痛みを紛らわすために、胸に手を置いて、そっと擦った。
『ほら、ツアー中だし…初めてだと、次の日にも影響出るかもしれへないだろ?ちゅーしたらさ、雪は可愛いから途中じゃ止まらなくなるだろ?だからさ、ちゅーしないんじゃないかな?』
『ほんとに?そうかな…?』
大きなきゅるきゅるの瞳が、俺を見つめてて、慰サメの言葉に、気分は上がり始めていた
俺の中の隠し事を見透かされそうで、俺は思わず瞳を逸らしてしまった。
『大丈夫!雪が可愛いからに決まってる!ツアーが終わたらきっと、あいつ我慢できなくて直ぐにちゅーしてくれると思うよ。だって、雪は可愛いんだから。』
雪と透弥のキス…
思わず想像してしまった。
すると、ズキ、ズキと…胸が痛んで
一気に込み上げる吐き気…
う゛っ…
これっ、ヤバイっ…
惇希side
北海道公演を終えて、次は宮城公演だ。
宮城のホテルは一泊で、雪と同じに部屋になった。
透弥の事さえなければ、雪とは気が合うし、おしゃべりしててもすごく楽しい、一番仲のいい後輩だ。
夜公演を終えて、透弥と雪は、またふたりで食事に行って、俺はひとり簡単に夕飯を済ませて部屋に戻ってた。
ひとりで過ごす時間は、苦しくて何をしていても透弥の事を考えてしまう。
苦恋花病になってからの方が、透弥を想っているような気がする。
手の掌の模様は、日に日に濃く色づいて、手の中に青い薔薇の花びらを握っているような状態になっていた。
手の掌を見つめながら、このままじゃ油断するとバレてしまうかもしれない
そう思うだけで、精神的にも疲弊していった。
―――気をつけなくちゃ…絶対にバレる訳にはいかない。
そんな事考えていたら、ホテルの部屋の外で雪の声が聞こえた。
丁度、ドアの前辺りでふたりで会話しているのか、雪の声は何をいっているのかさえよくわかるくらいだ。
『なんでっ!!まだ、部屋に帰りたくないっ!!』
雪が大声を出していた。
『明日も公演あるんだから。今日は大人しく、お互いの部屋に帰ろう。明日もまた会えるから。』
なだめるような口調の透弥に、明らかに雪はイラついているようだった。
『藤野くん!そればっかっ!!もういいっ!!』
雪の怒鳴る声が聞こえて直ぐに、ガチャと音が鳴って、部屋に雪が現れた。
不機嫌そうに、荷物を置いて、でも、悲しそうに瞳を潤ませていた。
『雪?どうした?透弥と喧嘩でもしたのか?』
堪らず声をかけると
『じゅんくんっ///…グスっ…グスっ…』
俺に抱き着き、グスグスと泣き始めた。
『透弥とけんかでもしたのか?』
『…僕が悪いってわかってるっ!でも、…』
どうやら、雪はもっと透弥と一緒に居たくて、駄々をこねたらしい。それを、透弥に諭されて納得がいかずに、あんな口調になって喧嘩腰になってしまったと、涙ながらに話してくれた。
雪の背中を擦りながら、雪の話を聞いていたら、
突然雪が俺の顔を見て
『藤野くん…まだ、ちゅーもしてくれない!!』
突然の雪の発言に戸惑いを隠しきれなくなる
『えっ?』
『付き合う前はふざけて、ちゅーするマネとかよくしてたのに…付き合ってから、そんなのもないし!いい雰囲気になりそうだったら、わざとふざけだして、そういう雰囲気壊すの!!なんで?なんで?僕、もう子供じゃないっ!!』
俺は、戸惑っていた。
先日の北海道で、透弥とキスしていたから…。
そんなこと、雪に言えるわけもなく、俺の中の罪悪感が、俺を苦しめる。
『…そっかぁ。』
大輝の言葉が頭をよぎった
【雪を悲しませたら、許さない】
俺は少し浮かれていたのかもしれない。
透弥とのキス、透弥に抱きしめられて…
少し、いい気になっていたのかもしれない。
雪もまた、付き合っても、なお、悩みを抱えている。
先日透弥とキスしてしまった、雪へのせめてもの罪滅ぼしに、
『雪は可愛いから、大切にしたいんじゃないかな?どうでもいいなら、テキトーにちゅーしちゃうんだと思う。でもさ、雪とのことちゃんと考えてるから、大切にとってあるんじゃないかな?』
雪を精一杯慰める。
それが、俺の雪への謝罪であり贖罪だ。
『そう…かな?』
泣いていた雪の顔は、少しはにかんで、露骨に嬉しさが隠し切れないと、そういう顔をした。
ホッとしている自分と、自虐的な言葉に胸を痛める自分がいた。
それでも、あのキスの罪は重いだろうと思っている。
そして、雪よりも先にキスしてしまった罪を、俺は受けなければならない。
『透弥ってさ、ああ見えても真面目だし。雪を大切にしたいんじゃないかな?』
『でも、もう一ヶ月も経つんだよ!付き合ってから!藤野くんてさぁ、もっと積極的でちょっとえっちだと思ってた!なんか、えっちとか上手そうだし、大人だから…なんか、すぐにでもえっちなことするんじゃないかって、思ってたから…余計に、手も出されなくて…焦ってる』
…ズキンっ…ぎゅーっと胸が締め付けられる
さすがに、ふたりのそんな話を聞くのは苦しくて、それでも、その罪に耐えなければと思った。
そっと胸の痛みを紛らわすために、胸に手を置いて、そっと擦った。
『ほら、ツアー中だし…初めてだと、次の日にも影響出るかもしれへないだろ?ちゅーしたらさ、雪は可愛いから途中じゃ止まらなくなるだろ?だからさ、ちゅーしないんじゃないかな?』
『ほんとに?そうかな…?』
大きなきゅるきゅるの瞳が、俺を見つめてて、慰サメの言葉に、気分は上がり始めていた
俺の中の隠し事を見透かされそうで、俺は思わず瞳を逸らしてしまった。
『大丈夫!雪が可愛いからに決まってる!ツアーが終わたらきっと、あいつ我慢できなくて直ぐにちゅーしてくれると思うよ。だって、雪は可愛いんだから。』
雪と透弥のキス…
思わず想像してしまった。
すると、ズキ、ズキと…胸が痛んで
一気に込み上げる吐き気…
う゛っ…
これっ、ヤバイっ…
34
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】雨上がり、後悔を抱く
私雨
ライト文芸
夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。
雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。
雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。
『信じる』彼と『信じない』彼女――
果たして、誰が正しいのだろうか……?
これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
奇病患者は綺麗に歌う
まこと
BL
ある街の郊外の大きな病院。
そこは、普通の患者ではない、
特定の患者だけが入院している病院だった。
そこに彼はいる。
そこで彼は歌うのだ___
酷く綺麗な声で
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
BL作品です。
奇病患者とその担当医の話です。
シリアスや暗い場面があるので、苦手な方は注意してください。
※占いツクールでも活動しているのですが、そこで私が書いている作品をのせているので、無断転載等ではありません。
余命三ヶ月、君に一生分の恋をした
望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。
定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。
杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。
「どちらが先に死ぬかな」
そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。
「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。
けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる