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14話 キス、ちゅー、キス
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14話 キス、ちゅー、キス
惇希side
もう少しだけ、透弥の寝顔を特等席で見ていたい。
俺だけの透弥を、もう少しだけ…
もう少し…
あと少しだけ…。
透弥の体温を感じて、誰よりも近くで透弥の寝顔を見ていたい。
透弥の寝息がかかるくらいに、すぐ近くに居るのに、目の前にはぷるぷるの唇があって、いつだってキスが出来る。
でも、できないのは…しないのは、勇気がないから。
こんなチャンスでさえ、自分のものに出来ない俺。
もし、雪よりも先に透弥に告白していたら?
雪と付き合わないで、俺と付き合ってって言っていたら?
今、ここで透弥にキスしたら?
なにか、変わっていたのかな?
~たら、~ればを繰り返しているだけじゃ、何も変わらない。
どうせ死ぬのなら…
たった一度だけ…
勇気を振り絞る
唇をじっと見つめて、透弥の寝息を確認して、透弥が眠っていることをしっかり確認した。
そして、眠っている透弥の唇にそっと口付けた。
直ぐに、くるっと寝返り打って、透弥に背を向けた。
ドクドクドクドクと心臓が、早鐘を打つ。
ほんの少し唇が触れただけなのに、こんなにも嬉しいのは…きっと、まだ…
いや、ダメだ。
これで、終わりにするって決めたのに。
それなのに、心は揺れてしまう。
人差し指で、透弥に触れた唇をなぞって、その感触に酔いしれた。
…あぁ…俺、やっぱ、まだ…
透弥の事、好きなんだ。
涙が出てしまいそうなくらいに、嬉しかった。
最初で最後のキス…。
透弥は知らない秘密のキス。
俺だけが知っている、秘密の出来事。
『…んん、…んっ…』
透弥の声が聞こえたかと思ったら、すぐに抱きしめられて、ハっとした。
え?
バレた?
焦ったけど、それから透弥は動くこと無くて、
…寝ぼけてるだけだった。
ホッと息を小さく吐いた。
俺を抱き枕にして、まだ眠っている透弥。
抱き締められる温もりを感じて、そのまま眠りに就いた。
朝、目が覚めると温もりはもう消えていて、いつもお決まりのルーティンのストレッチを、何事もなかったかのようにしている透弥がいた。
透弥は俺が目覚めた事に気が付くと、
『おはよぉ、体調どう?よくー寝れた?』
何事もなかったかのように振る舞う透弥。
透弥に、抱きしめられて眠った事や、
…その…
キスをした事…っ///
それらが、夢だったのかもしれないと思ってしまって、思わず唇に触れた。
今は、もう何の感触も残っていない唇に、少し寂しさを感じながらも、その柔らかな唇の記憶を辿る。
…キス、したよな?
確かに、この唇に透弥の柔らかなぷるぷるの唇が触れたよな…?
すると、
『ちゅーしたいの?』
突然の透弥の言葉に
『は?えっ?あっ…はぁ゛――!!な、なんでそんなわけあるかぁ!!』
意味のわかんない逆切れをすると
『そんな、切なそうな顔して唇触ってるからさ。ちゅーしたろかって思ったよ!ひゃははっ。妙にじゅんくん色っぽかったよ!』
透弥は元気な笑い声を響かせた。
…じゃあ…
『ちゅーしろよ!!』
あまりにも何も考えてない無神経な言動に苛立った。
どうせ俺の事なんか見てないくせに!
俺とキスなんてできないくせに!
そんな事ばっか言って、俺を喜ばせて堕としていく残酷なヤツ!
無邪気な奴こそ、たちが悪い!
俺の気も知らないで、【ちゅーしたろか】なんて、言うなよ!!
透弥はストレッチを止めて、じわじわと俺に近づいてきて、ほとんど身長が変わらないはずなのにその威圧感と気迫に押されて、すごく大きく感じた。
透弥の手がふわっと俺の頬を包んで、腰を抱き寄せられる。
え…?
ほんとに…?
冗談じゃなくて?
…キス…してくれるの?
『…じゅんくん…』
それはいつも聞いている声なんかじゃなかった…
少し濡れた艶っぽい声に、全身が痺れるほどに、ときめいた。
名前呼ばれるだけで、ぎゅって胸が掴まれて…
トクンって心臓の音が文字になって飛び出して来たみたいに、大きく跳ねた。
トクン、…トクン…ドクン、ドクン
俺の心臓の音がどんどん大きくなって
透弥の視線は俺を虜にして、今まで感じたことのないような、優しい眼差しで俺は見つめられて
ゆっくりと、近づいて来る唇に
数秒後のキスの未来を想像する。
それは、昨日したキスよりも、きっと、もっと幸せなキスなのだろう。
俺が勝手にするキスじゃない。
透弥がくれる、本物のキス。
『…じゅんくんっ…っ』
透弥の声が、俺の胸に溶けていく…。
惇希side
もう少しだけ、透弥の寝顔を特等席で見ていたい。
俺だけの透弥を、もう少しだけ…
もう少し…
あと少しだけ…。
透弥の体温を感じて、誰よりも近くで透弥の寝顔を見ていたい。
透弥の寝息がかかるくらいに、すぐ近くに居るのに、目の前にはぷるぷるの唇があって、いつだってキスが出来る。
でも、できないのは…しないのは、勇気がないから。
こんなチャンスでさえ、自分のものに出来ない俺。
もし、雪よりも先に透弥に告白していたら?
雪と付き合わないで、俺と付き合ってって言っていたら?
今、ここで透弥にキスしたら?
なにか、変わっていたのかな?
~たら、~ればを繰り返しているだけじゃ、何も変わらない。
どうせ死ぬのなら…
たった一度だけ…
勇気を振り絞る
唇をじっと見つめて、透弥の寝息を確認して、透弥が眠っていることをしっかり確認した。
そして、眠っている透弥の唇にそっと口付けた。
直ぐに、くるっと寝返り打って、透弥に背を向けた。
ドクドクドクドクと心臓が、早鐘を打つ。
ほんの少し唇が触れただけなのに、こんなにも嬉しいのは…きっと、まだ…
いや、ダメだ。
これで、終わりにするって決めたのに。
それなのに、心は揺れてしまう。
人差し指で、透弥に触れた唇をなぞって、その感触に酔いしれた。
…あぁ…俺、やっぱ、まだ…
透弥の事、好きなんだ。
涙が出てしまいそうなくらいに、嬉しかった。
最初で最後のキス…。
透弥は知らない秘密のキス。
俺だけが知っている、秘密の出来事。
『…んん、…んっ…』
透弥の声が聞こえたかと思ったら、すぐに抱きしめられて、ハっとした。
え?
バレた?
焦ったけど、それから透弥は動くこと無くて、
…寝ぼけてるだけだった。
ホッと息を小さく吐いた。
俺を抱き枕にして、まだ眠っている透弥。
抱き締められる温もりを感じて、そのまま眠りに就いた。
朝、目が覚めると温もりはもう消えていて、いつもお決まりのルーティンのストレッチを、何事もなかったかのようにしている透弥がいた。
透弥は俺が目覚めた事に気が付くと、
『おはよぉ、体調どう?よくー寝れた?』
何事もなかったかのように振る舞う透弥。
透弥に、抱きしめられて眠った事や、
…その…
キスをした事…っ///
それらが、夢だったのかもしれないと思ってしまって、思わず唇に触れた。
今は、もう何の感触も残っていない唇に、少し寂しさを感じながらも、その柔らかな唇の記憶を辿る。
…キス、したよな?
確かに、この唇に透弥の柔らかなぷるぷるの唇が触れたよな…?
すると、
『ちゅーしたいの?』
突然の透弥の言葉に
『は?えっ?あっ…はぁ゛――!!な、なんでそんなわけあるかぁ!!』
意味のわかんない逆切れをすると
『そんな、切なそうな顔して唇触ってるからさ。ちゅーしたろかって思ったよ!ひゃははっ。妙にじゅんくん色っぽかったよ!』
透弥は元気な笑い声を響かせた。
…じゃあ…
『ちゅーしろよ!!』
あまりにも何も考えてない無神経な言動に苛立った。
どうせ俺の事なんか見てないくせに!
俺とキスなんてできないくせに!
そんな事ばっか言って、俺を喜ばせて堕としていく残酷なヤツ!
無邪気な奴こそ、たちが悪い!
俺の気も知らないで、【ちゅーしたろか】なんて、言うなよ!!
透弥はストレッチを止めて、じわじわと俺に近づいてきて、ほとんど身長が変わらないはずなのにその威圧感と気迫に押されて、すごく大きく感じた。
透弥の手がふわっと俺の頬を包んで、腰を抱き寄せられる。
え…?
ほんとに…?
冗談じゃなくて?
…キス…してくれるの?
『…じゅんくん…』
それはいつも聞いている声なんかじゃなかった…
少し濡れた艶っぽい声に、全身が痺れるほどに、ときめいた。
名前呼ばれるだけで、ぎゅって胸が掴まれて…
トクンって心臓の音が文字になって飛び出して来たみたいに、大きく跳ねた。
トクン、…トクン…ドクン、ドクン
俺の心臓の音がどんどん大きくなって
透弥の視線は俺を虜にして、今まで感じたことのないような、優しい眼差しで俺は見つめられて
ゆっくりと、近づいて来る唇に
数秒後のキスの未来を想像する。
それは、昨日したキスよりも、きっと、もっと幸せなキスなのだろう。
俺が勝手にするキスじゃない。
透弥がくれる、本物のキス。
『…じゅんくんっ…っ』
透弥の声が、俺の胸に溶けていく…。
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