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12話 症状と習性
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12話 症状と習性
惇希side
手の平を見てみると…
真っ青な花びらの模様が、うっすらと浮かび上がっていた。
え?これ…なに?
手の中に、まるで花が咲いてるみたいに浮かび上がっている模様。
それはまだ薄く、曖昧で確認が難しいけれど…確かに、苦恋花病の症状の掌花(しょうか)と呼ばれるものだった。
初めは薄く気が付かないらしいが、徐々に色を濃くして、そのうち皮膚を突き破り、手の平から綺麗な花を咲かせるという症状だ。
ヒリヒリと微かに痛むのは、掌花の症状なのだろう…
これからもっと強くなるであろう痛みに、不安を抱きながらも、ぐっと手のひらを握って、耐えると決めた。
最後まで苦しさや、痛みに耐えて…
笑顔で透弥と一緒にツアー最後までやり切って…
…バイバイって、笑ってまた明日会うみたいに別れる。
そんな風にお別れしたいから。
どんなに辛くても、痛くても…弱っている姿を見せちゃダメなんだ。
できれば、透弥に気が付かれずに死んでしまいたい。
ツアーが終わって、数日会わなかったら死んでたって筋書きを俺は望んでる。
俺が最後に咲かせる青い薔薇を、誰にも見られることなく…
ひとりで死のうと決めた。
たったひとりで、だれにも知られることなく、苦恋花病に蝕まれて、死んでいく。
それが、一番いい。
ソレが俺の望んだ未来だ。
この綺麗な青い薔薇を誰にも見せることが無いのは少し残念な気もしたが…
こんなもの、見せるものじゃない
こんなに苦しい綺麗な青…誰も知らなくていい
…まぁ、大輝に見られてしまったのは、予想外だったけど…
雪と透弥が幸せになれるように…
みんなの事が大好きだから、みんなが幸せになれるように…
それを、願ってる。
それから、シャワーを浴びて、他にも苦恋花病の症状が出ていないか体中を確認した。
体にも花の模様が出る花斑(かはん)が現われるらしいが、まだ、体にはそれらしき模様はでていなかったので、ホッと胸をなでおろした。
そのまま、透弥を待つことなく…
ベッドに入って、眠りに就いた。
どれくらい、眠ったのだろか…
ガタン、と音がして意識は目覚めるが、瞳を開けることなく、眠ったフリをした。
透弥は小さな声で『ただいまぁ、じゅんくん寝てる?』って言って、ぺたぺたと足音を消して、寝ている俺の目の前までやって来たみたいだった。
気配だけなので、実際どこまで近づいていたのかはわからないが、
『やっぱ、あんまり体調よくないのかな?』って、ぼそぼそと独り言を言っていた。
一瞬お酒の匂いがしたけど、すぐに消えて透弥の気配も遠ざかっていった。
それから、荷物をガサゴソと触る音がして、すぐにシャワーの音が聞こえ始めた。俺はうっすらと瞳を開けて時間を確認すると、23時だった。
どうやら、少し呑んで帰って来たみたいだ。
ガタン、バタンっ…ドタドタ、透弥はしばらくいろんな音をさせてた。俺は寝たフリをしながら、音を頼りに透弥の行動を推察してた。
だいたいの行動パターンを知っているから、ペチペチと音がすれば全身に化粧水付けてるところだろうなとか、うっふぅ~と声が聞こえてきたら、今はストレッチタイムで、ごしゅごしゅと歯磨きの音が聞こえたら、そろそろ寝るころだって透弥の行動を音でおってた。
何度かあくびする声が聞こえたかと思うと、気配が近づいて来て…俺の布団がめくられて、俺にぴったりとくっつくように透弥が俺の布団に入って来た。
え?
ええっ?
なにっ?どういう事?
これ、どういう状況!!
おいっ!間違えてるって!!
お前のベッド向こうだろっ!!
なにしてんだよっ!!
惇希side
手の平を見てみると…
真っ青な花びらの模様が、うっすらと浮かび上がっていた。
え?これ…なに?
手の中に、まるで花が咲いてるみたいに浮かび上がっている模様。
それはまだ薄く、曖昧で確認が難しいけれど…確かに、苦恋花病の症状の掌花(しょうか)と呼ばれるものだった。
初めは薄く気が付かないらしいが、徐々に色を濃くして、そのうち皮膚を突き破り、手の平から綺麗な花を咲かせるという症状だ。
ヒリヒリと微かに痛むのは、掌花の症状なのだろう…
これからもっと強くなるであろう痛みに、不安を抱きながらも、ぐっと手のひらを握って、耐えると決めた。
最後まで苦しさや、痛みに耐えて…
笑顔で透弥と一緒にツアー最後までやり切って…
…バイバイって、笑ってまた明日会うみたいに別れる。
そんな風にお別れしたいから。
どんなに辛くても、痛くても…弱っている姿を見せちゃダメなんだ。
できれば、透弥に気が付かれずに死んでしまいたい。
ツアーが終わって、数日会わなかったら死んでたって筋書きを俺は望んでる。
俺が最後に咲かせる青い薔薇を、誰にも見られることなく…
ひとりで死のうと決めた。
たったひとりで、だれにも知られることなく、苦恋花病に蝕まれて、死んでいく。
それが、一番いい。
ソレが俺の望んだ未来だ。
この綺麗な青い薔薇を誰にも見せることが無いのは少し残念な気もしたが…
こんなもの、見せるものじゃない
こんなに苦しい綺麗な青…誰も知らなくていい
…まぁ、大輝に見られてしまったのは、予想外だったけど…
雪と透弥が幸せになれるように…
みんなの事が大好きだから、みんなが幸せになれるように…
それを、願ってる。
それから、シャワーを浴びて、他にも苦恋花病の症状が出ていないか体中を確認した。
体にも花の模様が出る花斑(かはん)が現われるらしいが、まだ、体にはそれらしき模様はでていなかったので、ホッと胸をなでおろした。
そのまま、透弥を待つことなく…
ベッドに入って、眠りに就いた。
どれくらい、眠ったのだろか…
ガタン、と音がして意識は目覚めるが、瞳を開けることなく、眠ったフリをした。
透弥は小さな声で『ただいまぁ、じゅんくん寝てる?』って言って、ぺたぺたと足音を消して、寝ている俺の目の前までやって来たみたいだった。
気配だけなので、実際どこまで近づいていたのかはわからないが、
『やっぱ、あんまり体調よくないのかな?』って、ぼそぼそと独り言を言っていた。
一瞬お酒の匂いがしたけど、すぐに消えて透弥の気配も遠ざかっていった。
それから、荷物をガサゴソと触る音がして、すぐにシャワーの音が聞こえ始めた。俺はうっすらと瞳を開けて時間を確認すると、23時だった。
どうやら、少し呑んで帰って来たみたいだ。
ガタン、バタンっ…ドタドタ、透弥はしばらくいろんな音をさせてた。俺は寝たフリをしながら、音を頼りに透弥の行動を推察してた。
だいたいの行動パターンを知っているから、ペチペチと音がすれば全身に化粧水付けてるところだろうなとか、うっふぅ~と声が聞こえてきたら、今はストレッチタイムで、ごしゅごしゅと歯磨きの音が聞こえたら、そろそろ寝るころだって透弥の行動を音でおってた。
何度かあくびする声が聞こえたかと思うと、気配が近づいて来て…俺の布団がめくられて、俺にぴったりとくっつくように透弥が俺の布団に入って来た。
え?
ええっ?
なにっ?どういう事?
これ、どういう状況!!
おいっ!間違えてるって!!
お前のベッド向こうだろっ!!
なにしてんだよっ!!
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