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11話 初日から始まる
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11話 初日から始まる
惇希side
部屋に戻り、ああ言った手前ビジュをどうにかするしかなくて…
少し髪を弄ってみたものの…
あんまり変わらない!
メイクさんがいる訳でもない俺たちは、自分でどうにかするしかなくて、いつもテキトーにメイクしてた。
でも、最近は雪がメイクを教えてくれたり、メイクしたりしてたから、ほんとに助かってた。
雪の相手が、透弥じゃなかったら、きっとふたりで恋の話のひとつやふたつして、大いに盛り上がっていたんかもしれない。
でも、雪と恋バナをすることは…きっと、もうない。
鏡の前で格闘していると、
『じゅんくん?体調やっぱ悪いの?』
部屋に戻ってきた透弥が、また、心配そうな顔して鏡に映り込んできた。
『大丈夫だって!!お前、いつからそんなに心配性になったんだよ?』
『だって…じゅんくん…っ。……じゅんくんが心配だからに決まってるだろ!』
…やめてくれよ。
そんな顔して、俺を心配しないでくれって。
俺、勘違いしそうになるだろ。
友情と愛情をはき違えそうになる…。
『ほんとに大丈夫だからっ!!頑張ってツアー駆け抜けるぞっ!!念願のツアーだからな!折俺たち一回落ちてるしっ!やっと掴んだ夢の舞台だ!頑張るしかないっしょ?』
俺は大袈裟なくらいに、元気な声で言った。
…透弥は納得してない様子だったけど、
『ほら、リハ始まる時間になっちゃうから、行ここ!!』
そう言って、準備を始めさせた。
テキトーに髪をセットして、何とかそれなりのビジュアルを、確保した。
それから、リハに行き、リハも無事に終わって、本番まで少し時間が空いて、各々に時間を使っていた。
少し早い昼食を食べている人やダンスのフリを確認している人や、リラックスして音楽を聴いている人…各々に本番までの空き時間を、過ごしていた。
食いしん坊の透弥はもちろん、少し早い昼食を食べていて、その隣で食べている姿を、にこにことご機嫌で見ている雪がいた。
そんなふたりを見ていると、ズキンっ…あ、また…
こんなのずっと見てられない。
そんなふたりを見なくていいように、アリーナへ向かった。あと、一時間もすれば観客で埋め尽くされる会場に、想いを馳せた。
やっと、ここまで来た。
ずっと、来たかったこの場所へ。
透弥といたから、一緒にここまで来られた。
最後まで、透弥と一緒に踊りたい。
このツアーが終わるまで…俺は、ふたりを見ないようにしよう。
きっと、ふたりの姿を見ていたら、苦しくて…想いが、花びらとなって零れてしまうから。
北海道では、2泊…。あと、一泊すれば透弥と別の部屋になる。
それで、いい。
思い出なら、もう、十分持ってる。
後は、最高のツアーをして最後の想い出にふさわしいラストを迎えるまでだ!!
気合を入れて、会場を後にした。
そして、スタッフ、アーティスト、ダンサー…全ての関係者で円陣を組んで、
『最後まで駆け抜けるぞーっ!』
『おぉーーーーーっ!』
みんなで気合を入れた。
ライブが始まってしまえば、後はもう楽しむだけだ!
透弥と視線を交わしてからのターン、そしから、にこっと笑ってバクステまで一緒に駆け出す。
全身が曲を捕まえて、体が音と一緒に動き出して、最高に楽しそうにする透弥と踊るのが大好きだ!!
こうして、無事に初日を終えた。
最高!!
この何とも言えない充実感!最高っ!!
何度経験しても楽しいこの瞬間!
汗だくの透弥にタオルを投げて、
『お疲れっ!』って、言うと
『最高だったな!じゅんくんの体調も大丈夫そうだし!』
ステージの上でも俺を見てたのか?
『だから、言っただろ?大丈夫だって!!』
『…でも…苦しい時は言って。俺、じゅんくんの力になりたいんだ。俺には何でも話して欲しい』
『大丈夫だって』
強がるのは得意だからさ。
そんなの全然大丈夫!
13年の片思い歴をなめんなよ!
友達のフリしてずっと好きを隠して来たんだぞ?
今更、隠し事の一つやふたつ増えたからって、どおってこと無い!!
それから、二回目の公演も終えて、心地よい疲れの中、ホテルへ戻った。
雪と透弥はホテルの外へ食事に行き、俺は、簡単に食事を済ませて部屋でゆっくりしていた。
今頃、ふたりは楽しく夕食を食べているのだろうか。
多少お酒を呑んだりして、もしかしたら、今日は透弥は部屋に戻って来ないかもしれない…
なんて、考えたら、無性に寂しくなった…
う゛っ…
込み上げる吐き気を押さえきれなくて
『うぇっ…ゴホッ…ゴホゴホっ…』
青い薔薇の花びらが舞った
白いシーツの上に数枚の青い花びらが散って…何とも皮肉にも綺麗な光景を作り出していた。
白と青って…綺麗やな…
真っ白なシーツにはらはらと散る真っ青な薔薇の花びらが、酷く美しかった
残酷な程に綺麗だった
そんな白と青に見惚れてしまった。
しばらくすると、吐き気が落ち着いてきたので
悲しい程に深い青色の薔薇の花びらを両手で集めて…
見えないように、ゴミ箱の奥に捨てた。
ふと、手の平を見てみると…真っ青な花びらの模様がうっすらと浮かび上がっていた。
惇希side
部屋に戻り、ああ言った手前ビジュをどうにかするしかなくて…
少し髪を弄ってみたものの…
あんまり変わらない!
メイクさんがいる訳でもない俺たちは、自分でどうにかするしかなくて、いつもテキトーにメイクしてた。
でも、最近は雪がメイクを教えてくれたり、メイクしたりしてたから、ほんとに助かってた。
雪の相手が、透弥じゃなかったら、きっとふたりで恋の話のひとつやふたつして、大いに盛り上がっていたんかもしれない。
でも、雪と恋バナをすることは…きっと、もうない。
鏡の前で格闘していると、
『じゅんくん?体調やっぱ悪いの?』
部屋に戻ってきた透弥が、また、心配そうな顔して鏡に映り込んできた。
『大丈夫だって!!お前、いつからそんなに心配性になったんだよ?』
『だって…じゅんくん…っ。……じゅんくんが心配だからに決まってるだろ!』
…やめてくれよ。
そんな顔して、俺を心配しないでくれって。
俺、勘違いしそうになるだろ。
友情と愛情をはき違えそうになる…。
『ほんとに大丈夫だからっ!!頑張ってツアー駆け抜けるぞっ!!念願のツアーだからな!折俺たち一回落ちてるしっ!やっと掴んだ夢の舞台だ!頑張るしかないっしょ?』
俺は大袈裟なくらいに、元気な声で言った。
…透弥は納得してない様子だったけど、
『ほら、リハ始まる時間になっちゃうから、行ここ!!』
そう言って、準備を始めさせた。
テキトーに髪をセットして、何とかそれなりのビジュアルを、確保した。
それから、リハに行き、リハも無事に終わって、本番まで少し時間が空いて、各々に時間を使っていた。
少し早い昼食を食べている人やダンスのフリを確認している人や、リラックスして音楽を聴いている人…各々に本番までの空き時間を、過ごしていた。
食いしん坊の透弥はもちろん、少し早い昼食を食べていて、その隣で食べている姿を、にこにことご機嫌で見ている雪がいた。
そんなふたりを見ていると、ズキンっ…あ、また…
こんなのずっと見てられない。
そんなふたりを見なくていいように、アリーナへ向かった。あと、一時間もすれば観客で埋め尽くされる会場に、想いを馳せた。
やっと、ここまで来た。
ずっと、来たかったこの場所へ。
透弥といたから、一緒にここまで来られた。
最後まで、透弥と一緒に踊りたい。
このツアーが終わるまで…俺は、ふたりを見ないようにしよう。
きっと、ふたりの姿を見ていたら、苦しくて…想いが、花びらとなって零れてしまうから。
北海道では、2泊…。あと、一泊すれば透弥と別の部屋になる。
それで、いい。
思い出なら、もう、十分持ってる。
後は、最高のツアーをして最後の想い出にふさわしいラストを迎えるまでだ!!
気合を入れて、会場を後にした。
そして、スタッフ、アーティスト、ダンサー…全ての関係者で円陣を組んで、
『最後まで駆け抜けるぞーっ!』
『おぉーーーーーっ!』
みんなで気合を入れた。
ライブが始まってしまえば、後はもう楽しむだけだ!
透弥と視線を交わしてからのターン、そしから、にこっと笑ってバクステまで一緒に駆け出す。
全身が曲を捕まえて、体が音と一緒に動き出して、最高に楽しそうにする透弥と踊るのが大好きだ!!
こうして、無事に初日を終えた。
最高!!
この何とも言えない充実感!最高っ!!
何度経験しても楽しいこの瞬間!
汗だくの透弥にタオルを投げて、
『お疲れっ!』って、言うと
『最高だったな!じゅんくんの体調も大丈夫そうだし!』
ステージの上でも俺を見てたのか?
『だから、言っただろ?大丈夫だって!!』
『…でも…苦しい時は言って。俺、じゅんくんの力になりたいんだ。俺には何でも話して欲しい』
『大丈夫だって』
強がるのは得意だからさ。
そんなの全然大丈夫!
13年の片思い歴をなめんなよ!
友達のフリしてずっと好きを隠して来たんだぞ?
今更、隠し事の一つやふたつ増えたからって、どおってこと無い!!
それから、二回目の公演も終えて、心地よい疲れの中、ホテルへ戻った。
雪と透弥はホテルの外へ食事に行き、俺は、簡単に食事を済ませて部屋でゆっくりしていた。
今頃、ふたりは楽しく夕食を食べているのだろうか。
多少お酒を呑んだりして、もしかしたら、今日は透弥は部屋に戻って来ないかもしれない…
なんて、考えたら、無性に寂しくなった…
う゛っ…
込み上げる吐き気を押さえきれなくて
『うぇっ…ゴホッ…ゴホゴホっ…』
青い薔薇の花びらが舞った
白いシーツの上に数枚の青い花びらが散って…何とも皮肉にも綺麗な光景を作り出していた。
白と青って…綺麗やな…
真っ白なシーツにはらはらと散る真っ青な薔薇の花びらが、酷く美しかった
残酷な程に綺麗だった
そんな白と青に見惚れてしまった。
しばらくすると、吐き気が落ち着いてきたので
悲しい程に深い青色の薔薇の花びらを両手で集めて…
見えないように、ゴミ箱の奥に捨てた。
ふと、手の平を見てみると…真っ青な花びらの模様がうっすらと浮かび上がっていた。
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