4 / 60
4話 トイレの秘密
しおりを挟む
4話 トイレの秘密
惇希side
レッスン場で透弥と雪のイチャイチャを見ていたら…
『うっ、う゛っ…』
あ…やばい、この感じ…
俺は慌てて、口元を押さえてトイレに駆け込んだ。
『ゴホっゴホっ…う゛っ…ウェっ…』
こみ上げてくるものを抑えきれなくて、口から零れ出す青い薔薇の花びらを、必死で阻止しようとした。
しばらくして、吐き気が治まると、手の平には沢山の青い薔薇の花びらが、ちいさな山を作っていた。
それは、先日見たよりも、もっと深い青で、その青さは深みを増しているようだった。
バタンっ。
トイレのドアが開く音がして、直ぐにトントンって、ノックされて
『じゅんくん?大丈夫?…体調悪いの?』
トイレに入って来たのは、透弥だった
俺は慌てて、花びらをポケットに突っ込んだ。
『大丈夫…なんでもない…』
『でも、顔色悪かったけど?無理しないで…病院行こうか?俺、一緒に居くよ』
透弥の声が俺を心配している。その声のトーンで、ほんとに俺を心配していることがわかった。
優しい透弥らしい、声掛けに涙が溢れそうになる。
苦しい…でも、こんな事…透弥に知られるわけにはいかない。
優しい透弥をきっと困らせてしまうから。
『ほんとに…なんでも、ないから…大丈夫』
『でも…声、震えてるけど?』
自分でも気が付かなかった些細な事を、長年一緒に居るこいつには気が付かれてしまったようだ。
『…体調悪いようなら、病院行こう…。』
しつこいくらいに優しくて
『でも、ほんとに、大丈夫だって!!』
『でも…』
こういう時、なかなか引き下がらないのがこいつ透弥!
このままじゃ、どこまで行ってもこの会話の繰り返しで…
仕方なく、呼吸を整えて…トイレのドアを開けると、心配そうに俺を見つめる透弥がいた。
『やっぱ、顔色悪いよ…』
俺の背中に、手を回す透弥の手は温かかった。
すぅーっと、気持ち悪いのが引いて行って、
背中を擦られるだけで、胸の痛みや吐き気が落ち着いていった。
『ごめん…じゃあ、もう少しだけ、背中…擦っててくれる?』
『おう、もちろん全然いいよ』
にっこりと笑う、透弥の笑顔を見るだけでも、気持ちが楽になった。
そっかぁ、やっぱり俺、苦恋花病なんだ。
透弥が俺に触れるだけで、こんなに楽になる…。
しばらく、透弥に背中を擦られて
『だいぶ、顔色良くなったね。でも、病院いこか?俺が連れてってあげるから』
透弥がそう言うと直ぐに、トイレのドアが開いて雪が入って来た。
『どうしたの?もう、レッスン始まるけど?』
雪は、そう言って俺と透弥を交互に見て
『え?なにふたり?なんか…あやしい!』って、嫉妬心を露わにした。
『っち、違うよ。俺、気分悪くて…そしたら、コイツが背中擦ってくれてた…それだけ。』
『そっかぁ。なんだ。じゅんくん大丈夫なの?』
雪はにこっと表情を変えた
『あぁ、もう、だいぶいい。レッスン初日から穴開ける訳にいかないから、さぁ、行こう!!』
俺は、雪の手を取ってトイレを後にした。
それから、しばらくして透弥もトイレから出て来て、レッスンが始まった。
思いのほか体調は良くて、吐く前より逆に調子がいいくらいだった。
やっぱ、あれか…?
透弥に触れてもらったからか?
認めたくないけど、すこぶる体調がいい。
レッスン中、透弥は俺の体調を心配してか、鏡越しに俺をチラチラと見ていた。
俺は、全然大丈夫っていつもより張り切って、踊った。
顔を見るだけで
【大丈夫なの?】
【全然大丈夫!】
【ほんとに?】
【大丈夫って言ってるだろ?】
【ほんとに辛い時は言って】
【おうっ】って、視線で会話してた。
そんな俺たちを、雪が目を細めて見ていた事を、俺はこの時、気がついていなかった。
惇希side
レッスン場で透弥と雪のイチャイチャを見ていたら…
『うっ、う゛っ…』
あ…やばい、この感じ…
俺は慌てて、口元を押さえてトイレに駆け込んだ。
『ゴホっゴホっ…う゛っ…ウェっ…』
こみ上げてくるものを抑えきれなくて、口から零れ出す青い薔薇の花びらを、必死で阻止しようとした。
しばらくして、吐き気が治まると、手の平には沢山の青い薔薇の花びらが、ちいさな山を作っていた。
それは、先日見たよりも、もっと深い青で、その青さは深みを増しているようだった。
バタンっ。
トイレのドアが開く音がして、直ぐにトントンって、ノックされて
『じゅんくん?大丈夫?…体調悪いの?』
トイレに入って来たのは、透弥だった
俺は慌てて、花びらをポケットに突っ込んだ。
『大丈夫…なんでもない…』
『でも、顔色悪かったけど?無理しないで…病院行こうか?俺、一緒に居くよ』
透弥の声が俺を心配している。その声のトーンで、ほんとに俺を心配していることがわかった。
優しい透弥らしい、声掛けに涙が溢れそうになる。
苦しい…でも、こんな事…透弥に知られるわけにはいかない。
優しい透弥をきっと困らせてしまうから。
『ほんとに…なんでも、ないから…大丈夫』
『でも…声、震えてるけど?』
自分でも気が付かなかった些細な事を、長年一緒に居るこいつには気が付かれてしまったようだ。
『…体調悪いようなら、病院行こう…。』
しつこいくらいに優しくて
『でも、ほんとに、大丈夫だって!!』
『でも…』
こういう時、なかなか引き下がらないのがこいつ透弥!
このままじゃ、どこまで行ってもこの会話の繰り返しで…
仕方なく、呼吸を整えて…トイレのドアを開けると、心配そうに俺を見つめる透弥がいた。
『やっぱ、顔色悪いよ…』
俺の背中に、手を回す透弥の手は温かかった。
すぅーっと、気持ち悪いのが引いて行って、
背中を擦られるだけで、胸の痛みや吐き気が落ち着いていった。
『ごめん…じゃあ、もう少しだけ、背中…擦っててくれる?』
『おう、もちろん全然いいよ』
にっこりと笑う、透弥の笑顔を見るだけでも、気持ちが楽になった。
そっかぁ、やっぱり俺、苦恋花病なんだ。
透弥が俺に触れるだけで、こんなに楽になる…。
しばらく、透弥に背中を擦られて
『だいぶ、顔色良くなったね。でも、病院いこか?俺が連れてってあげるから』
透弥がそう言うと直ぐに、トイレのドアが開いて雪が入って来た。
『どうしたの?もう、レッスン始まるけど?』
雪は、そう言って俺と透弥を交互に見て
『え?なにふたり?なんか…あやしい!』って、嫉妬心を露わにした。
『っち、違うよ。俺、気分悪くて…そしたら、コイツが背中擦ってくれてた…それだけ。』
『そっかぁ。なんだ。じゅんくん大丈夫なの?』
雪はにこっと表情を変えた
『あぁ、もう、だいぶいい。レッスン初日から穴開ける訳にいかないから、さぁ、行こう!!』
俺は、雪の手を取ってトイレを後にした。
それから、しばらくして透弥もトイレから出て来て、レッスンが始まった。
思いのほか体調は良くて、吐く前より逆に調子がいいくらいだった。
やっぱ、あれか…?
透弥に触れてもらったからか?
認めたくないけど、すこぶる体調がいい。
レッスン中、透弥は俺の体調を心配してか、鏡越しに俺をチラチラと見ていた。
俺は、全然大丈夫っていつもより張り切って、踊った。
顔を見るだけで
【大丈夫なの?】
【全然大丈夫!】
【ほんとに?】
【大丈夫って言ってるだろ?】
【ほんとに辛い時は言って】
【おうっ】って、視線で会話してた。
そんな俺たちを、雪が目を細めて見ていた事を、俺はこの時、気がついていなかった。
33
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】雨上がり、後悔を抱く
私雨
ライト文芸
夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。
雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。
雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。
『信じる』彼と『信じない』彼女――
果たして、誰が正しいのだろうか……?
これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
奇病患者は綺麗に歌う
まこと
BL
ある街の郊外の大きな病院。
そこは、普通の患者ではない、
特定の患者だけが入院している病院だった。
そこに彼はいる。
そこで彼は歌うのだ___
酷く綺麗な声で
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
BL作品です。
奇病患者とその担当医の話です。
シリアスや暗い場面があるので、苦手な方は注意してください。
※占いツクールでも活動しているのですが、そこで私が書いている作品をのせているので、無断転載等ではありません。
余命三ヶ月、君に一生分の恋をした
望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。
定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。
杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。
「どちらが先に死ぬかな」
そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。
「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。
けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる