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1話 青より青く
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青より青く
何よりも深い青を見た
どこまでも深く
澄んだ青は
とても綺麗で
残酷だった
空の青よりも
もっと青く
海の青よりも
もっと澄んでいて
藍色よりも
もっと悲しい
涙色
見たこともないような
心に刺さる深い青
この世で最も憂いを帯びた綺麗な青
それは君が残した
世界一美しい青だった
忘れることのできない
綺麗な青だった
惇希side
先日、俺久遠惇希28歳は、見事に失恋をした。
告白もしていないのに、失恋するなんて…。
俺が片思いを13年続けている相手、それは、同じダンス事務所の藤野透弥。
中学一年の時に通っていたダンススクールからオーディションを受けて、事務所に入った。そこにいたのが透弥。彼もまた、俺と同じ経緯で事務所に入った。
俺たちはプロのダンサーを目指し、一緒に切磋琢磨してここまでやって来た。
ダンサーなんて不確かな職業、途中でいなくなっていくヤツは山ほどいた。でも、俺と透弥はずっと一緒にやって来て、お前がいたから俺はここまでこれたと思ってる。
一緒にレッスンしたり、一緒に有名アーティストのバックダンサーのオーディション受けたり、一緒に落ちて慰めあった日や、悔しくてふたりで秘密の特訓をしたこともあった。
辛い時、透弥の笑顔はいつも俺に元気をくれた。そんな俺が、透弥を好きにならないわけがない!
そんな俺たちだから、余計に【好き】が言えなかった。
言ったら、イケナイ気がした
友達、戦友、親友…そんな、透弥のすぐ近くのポジションを失いたくなかった。
だから、告白なんて出来ないし、したくなかった。ふたりの関係を壊したくなかったから。
それなのに…俺は今、失意のどん底に居る。
それでも、俺は友達のポジションを維持できてて、お前の隣にずっといられるから!恋人なんて危ういポジションなんて要らない。
そう思う事で、俺は…自分を保っていた。
いつもは一緒に帰るレッスンの帰り道、隣に透弥がいないのは、新しく出来た恋人の雪と一緒に帰っているから。
雪、こと蓮見雪もまた、同じ事務所でプロのダンサーで俺たちよりも5つも若い。瞳の大きな愛らしい男の子。彼は事務所でも人気者で、その中でも俺とは気があってよく一緒にご飯を食べたり一緒に出掛けたりしている、可愛い後輩だった。
それが、先日雪は告白をして、無事透弥と付き合うことになり、俺の失恋が決定したというわけだ!
雪の恋が実ったことはすごく嬉しい、でも、その相手が透弥じゃなければ、どれほどよかっただろうか…
悲しみを抱え、ひとりで大通りを歩いていると
『ゴホッゴホッ…ゴホっ…う゛っ…』
すれ違った人が突然、花びらを吐いた。
『きゃーーーっ!!』
周囲はざわつき、花びらを吐いた女の子の周囲には朝顔の花びらが落ちていた。
周りの人々は、彼女を避ける様に遠巻きに見ていて、誰も助けようとしない。
俺は直ぐに駆け寄って、抱きかかえ
『大丈夫ですか?』と、声をかけた。
『…やっと、死ねます…。もう、苦しいんです…。ゴホっ…死なせて下さいっ…』
彼女が話すたびに、紫の朝顔の花びらが、はらはらと落ちていく、
まるで命を散らしているように…
誰かが呼んだ救急車が到着し、彼女を運んで行った。
救急車が去った後、人々は何事もなかった様に散って行った。
彼女が去った後には、紫の朝顔の花びらが寂しく残されていた。
最近増えている【苦恋花病】だ。
何よりも深い青を見た
どこまでも深く
澄んだ青は
とても綺麗で
残酷だった
空の青よりも
もっと青く
海の青よりも
もっと澄んでいて
藍色よりも
もっと悲しい
涙色
見たこともないような
心に刺さる深い青
この世で最も憂いを帯びた綺麗な青
それは君が残した
世界一美しい青だった
忘れることのできない
綺麗な青だった
惇希side
先日、俺久遠惇希28歳は、見事に失恋をした。
告白もしていないのに、失恋するなんて…。
俺が片思いを13年続けている相手、それは、同じダンス事務所の藤野透弥。
中学一年の時に通っていたダンススクールからオーディションを受けて、事務所に入った。そこにいたのが透弥。彼もまた、俺と同じ経緯で事務所に入った。
俺たちはプロのダンサーを目指し、一緒に切磋琢磨してここまでやって来た。
ダンサーなんて不確かな職業、途中でいなくなっていくヤツは山ほどいた。でも、俺と透弥はずっと一緒にやって来て、お前がいたから俺はここまでこれたと思ってる。
一緒にレッスンしたり、一緒に有名アーティストのバックダンサーのオーディション受けたり、一緒に落ちて慰めあった日や、悔しくてふたりで秘密の特訓をしたこともあった。
辛い時、透弥の笑顔はいつも俺に元気をくれた。そんな俺が、透弥を好きにならないわけがない!
そんな俺たちだから、余計に【好き】が言えなかった。
言ったら、イケナイ気がした
友達、戦友、親友…そんな、透弥のすぐ近くのポジションを失いたくなかった。
だから、告白なんて出来ないし、したくなかった。ふたりの関係を壊したくなかったから。
それなのに…俺は今、失意のどん底に居る。
それでも、俺は友達のポジションを維持できてて、お前の隣にずっといられるから!恋人なんて危ういポジションなんて要らない。
そう思う事で、俺は…自分を保っていた。
いつもは一緒に帰るレッスンの帰り道、隣に透弥がいないのは、新しく出来た恋人の雪と一緒に帰っているから。
雪、こと蓮見雪もまた、同じ事務所でプロのダンサーで俺たちよりも5つも若い。瞳の大きな愛らしい男の子。彼は事務所でも人気者で、その中でも俺とは気があってよく一緒にご飯を食べたり一緒に出掛けたりしている、可愛い後輩だった。
それが、先日雪は告白をして、無事透弥と付き合うことになり、俺の失恋が決定したというわけだ!
雪の恋が実ったことはすごく嬉しい、でも、その相手が透弥じゃなければ、どれほどよかっただろうか…
悲しみを抱え、ひとりで大通りを歩いていると
『ゴホッゴホッ…ゴホっ…う゛っ…』
すれ違った人が突然、花びらを吐いた。
『きゃーーーっ!!』
周囲はざわつき、花びらを吐いた女の子の周囲には朝顔の花びらが落ちていた。
周りの人々は、彼女を避ける様に遠巻きに見ていて、誰も助けようとしない。
俺は直ぐに駆け寄って、抱きかかえ
『大丈夫ですか?』と、声をかけた。
『…やっと、死ねます…。もう、苦しいんです…。ゴホっ…死なせて下さいっ…』
彼女が話すたびに、紫の朝顔の花びらが、はらはらと落ちていく、
まるで命を散らしているように…
誰かが呼んだ救急車が到着し、彼女を運んで行った。
救急車が去った後、人々は何事もなかった様に散って行った。
彼女が去った後には、紫の朝顔の花びらが寂しく残されていた。
最近増えている【苦恋花病】だ。
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