青より青く

白夜

文字の大きさ
上 下
1 / 60

1話 青より青く

しおりを挟む
青より青く 




何よりも深い青を見た
どこまでも深く

澄んだ青は

とても綺麗で

残酷だった

空の青よりも
もっと青く

海の青よりも

もっと澄んでいて


藍色よりも

もっと悲しい


涙色



見たこともないような


心に刺さる深い青




この世で最も憂いを帯びた綺麗な青





それは君が残した

世界一美しい青だった

忘れることのできない
綺麗な青だった









惇希side



先日、俺久遠惇希くおんじゅんき28歳は、見事に失恋をした。


告白もしていないのに、失恋するなんて…。


俺が片思いを13年続けている相手、それは、同じダンス事務所の藤野透弥ふじのとうや


中学一年の時に通っていたダンススクールからオーディションを受けて、事務所に入った。そこにいたのが透弥。彼もまた、俺と同じ経緯で事務所に入った。

俺たちはプロのダンサーを目指し、一緒に切磋琢磨してここまでやって来た。

ダンサーなんて不確かな職業、途中でいなくなっていくヤツは山ほどいた。でも、俺と透弥はずっと一緒にやって来て、お前がいたから俺はここまでこれたと思ってる。


一緒にレッスンしたり、一緒に有名アーティストのバックダンサーのオーディション受けたり、一緒に落ちて慰めあった日や、悔しくてふたりで秘密の特訓をしたこともあった。


辛い時、透弥の笑顔はいつも俺に元気をくれた。そんな俺が、透弥を好きにならないわけがない!


そんな俺たちだから、余計に【好き】が言えなかった。

言ったら、イケナイ気がした


友達、戦友、親友…そんな、透弥のすぐ近くのポジションを失いたくなかった。

だから、告白なんて出来ないし、したくなかった。ふたりの関係を壊したくなかったから。



それなのに…俺は今、失意のどん底に居る。



それでも、俺は友達のポジションを維持できてて、お前の隣にずっといられるから!恋人なんて危ういポジションなんて要らない。

そう思う事で、俺は…自分を保っていた。


いつもは一緒に帰るレッスンの帰り道、隣に透弥がいないのは、新しく出来た恋人のゆきと一緒に帰っているから。

雪、こと蓮見雪はすみゆきもまた、同じ事務所でプロのダンサーで俺たちよりも5つも若い。瞳の大きな愛らしい男の子。彼は事務所でも人気者で、その中でも俺とは気があってよく一緒にご飯を食べたり一緒に出掛けたりしている、可愛い後輩だった。


それが、先日雪は告白をして、無事透弥と付き合うことになり、俺の失恋が決定したというわけだ!


雪の恋が実ったことはすごく嬉しい、でも、その相手が透弥じゃなければ、どれほどよかっただろうか…



悲しみを抱え、ひとりで大通りを歩いていると

『ゴホッゴホッ…ゴホっ…う゛っ…』

すれ違った人が突然、花びらを吐いた。



『きゃーーーっ!!』



周囲はざわつき、花びらを吐いた女の子の周囲には朝顔の花びらが落ちていた。


周りの人々は、彼女を避ける様に遠巻きに見ていて、誰も助けようとしない。

俺は直ぐに駆け寄って、抱きかかえ

『大丈夫ですか?』と、声をかけた。



『…やっと、死ねます…。もう、苦しいんです…。ゴホっ…死なせて下さいっ…』

彼女が話すたびに、紫の朝顔の花びらが、はらはらと落ちていく、


まるで命を散らしているように…



誰かが呼んだ救急車が到着し、彼女を運んで行った。


救急車が去った後、人々は何事もなかった様に散って行った。


彼女が去った後には、紫の朝顔の花びらが寂しく残されていた。



最近増えている【苦恋花病】だ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】雨上がり、後悔を抱く

私雨
ライト文芸
 夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。  雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。  雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。  『信じる』彼と『信じない』彼女――  果たして、誰が正しいのだろうか……?  これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。

余命三ヶ月、君に一生分の恋をした

望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。 定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。 杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。 「どちらが先に死ぬかな」 そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。 「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。 けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。

奇病患者は綺麗に歌う

まこと
BL
ある街の郊外の大きな病院。 そこは、普通の患者ではない、 特定の患者だけが入院している病院だった。 そこに彼はいる。 そこで彼は歌うのだ___ 酷く綺麗な声で ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ BL作品です。 奇病患者とその担当医の話です。 シリアスや暗い場面があるので、苦手な方は注意してください。 ※占いツクールでも活動しているのですが、そこで私が書いている作品をのせているので、無断転載等ではありません。

色狂い×真面目×××

135
BL
色狂いと名高いイケメン×王太子と婚約を解消した真面目青年 ニコニコニコニコニコとしているお話です。むずかしいことは考えずどうぞ。

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

獣人ハ甘ヤカシ、甘ヤカサレル

希紫瑠音
BL
エメは街でパン屋を開いている。生地をこねる作業も、オーブンで焼いているときのにおいも大好きだ。 お客さんの笑顔を見るのも好きだ。おいしかったという言葉を聞くと幸せになる。 そんな彼には大切な人がいた。自分とは違う種族の年上の男性で、医者をしているライナーだ。 今だ番がいないのは自分のせいなのではないかと、彼から離れようとするが――。 エメがライナーのことでモダモダとしております。じれじれ・両想い・歳の差。 ※は性的描写あり。*は※よりゆるめ。 <登場人物> ◇エメ ・20歳。小さなパン屋の店主。見た目は秋田犬。面倒見がよく、ライナーことが放っておけない ◇ライナー ・32歳。医者。祖父と共に獣人の国へ。エメが生まれてくるときに立ち合っている。 <その他> ◆ジェラール…虎。エメの幼馴染。いい奴 ◆ニコラ…人の子。看護師さん ◆ギー…双子の兄 ◆ルネ…双子の弟

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...